900文字で完結する美しい彼女との出会い
学校の制服を着ている事と見た目からして高校生だと思うが、非常に容姿端麗な女の子を見かけた。
どこを見ても整ったパーツだから『可愛らしく綺麗』という言葉が似合い過ぎて、それ以上に適切な表現が思いつかないくらいの女性だ。
それに若々しさより僅かな幼さが残っているから、これから先はもっと綺麗な大人の女性へ成長を続けるのだろうなんて想像の余地がある。
でも、その子についてはそれだけだ。
たまたま街中で見かけただけであるし、俺が知らないだけで事務所に所属している有名アイドルとかの可能性は充分にある。
むしろ現代日本の都会において、如何にも愛嬌があって将来有望そうな子が放っておかれているわけがない。
そう思って数日後、また偶然にも同じ場所で制服姿の彼女を見かけた。
あまりの美貌っぷりに感動すら覚えていたから、妙に俺の中で印象に残っている。
「さて、どうしたものかな」
やはり男として、これほど本能的に好みだと感じた異性を見かけたら一度は声をかけてみたいものだ。
ただあれだけ綺麗であれば彼氏が居るだろうし、俺みたいな奴に声をかけられるとか日常茶飯事だと考えたら気が引ける。
何より厄介者だと思われるのが嫌なわけだが、下手に注視する方が不審だからと結局は思いきってしまっていた。
「あの、すみません!好きです!少しお付き合いしてくれませんか!」
今の一言は俺が咄嗟に発したものだ。
もう馬鹿過ぎて最悪だ。
初対面における順序だとかを無視する変人に声をかけられても、相手からしたら酷い迷惑でしかない。
なんなら恐怖を覚えてしまうだろう。
そう思っていたら相手は一瞬驚いた後ではあるものの、しばらく俺の姿を眺めてから予想外の反応で応え始めた。
「あー、えっと…少しのお付き合いですか。これからなら、ぷちのイチゴ三つでどうですか?」
「苺三つ?」
「場所代は別で」
「は、はぁ……?」
「うぅん………あの、もしかしてですが意味が違いましたか…?」
「いえいえ、そんなこと無いですよ!苺三つで良いんですか!じゃあお願いします!」
こうして俺は晴れて彼女と仲良くデートできたわけだ。
人間、やっぱり勇気ときっかけが大事だと俺は数時間後まで能天気に思い込むのだった。