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2話「市場」Moonlight

「はい。これが現品よ」

 日焼けした男が袋を開ける。

「確かに。間違いない」

 ローザは土産の葉巻を取り出す。男にもすすめる。男は受け取りかけ、やめる。

「医者に止められててな……。アンタが羨ましい」

 微笑を漏らし、葉巻を置く。

 ヴィクトリア朝を思わせるワンピースが、小さく衣擦れの音を立てる。

 二人の間にローテーブル。照らす照明はLEDに変わった。

「不健康なことしかしていない自覚はあるのだけれど……。80にもなると死神も手抜きを始めるみたいね」

 男はため息で返す。

「死神ですら手抜きができるのに。俺はいつまでも手も気も抜けない」

「いいことよ。年寄りがぐうたらを覚えたら、取り戻すには寿命が足りない。若者の愚行をたしなめる役は必要よ」

 男は大きくため息を吐く。

「まったくだ。最近の若造は市場の意味を取り違えてやがる。ネットでコカインの買い手をつのる? それはいい。手軽に買えるものが売れる。パン屋で取り寄せ品の小麦粉に偽装して売る? それはいい。袋一杯の粉を買って帰っても怪しまれない。だが」

「何も知らないパン屋を仲介にするのは、なってない」

「そうだ。コカインはどこでも市場がある。だからこそ、どこでも市場にするもんじゃあねえ。パン屋の親父がつまみ食いしてパンを焼いちまったらどうする? 「食中毒だ!」病院に担ぎ込まれる。それでおじゃんだ」

 ローザはウィスキーの瓶を取る。

「あなたは昔から変わらないわね。どうしても、「仁義にもとる」と率直に言えない」

「アンタこそ昔から変わらんな。「麻薬カルテル」なんて文字列が肩書きに入るヤツに、仁義なんてモンはありゃしねえ」

 グラスを手でふさぐ。

「俺は変わった。酒も医者に止められちまったよ」

 代わりに自分のグラスに継ぎ足す。

「地獄への一本道ですもの。長いに超したことはないわ」


 おしごと おしごと 奥様はおしごと

 メイドちゃんはちっちゃいから もうねんね



 2020/05/26


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