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無属性の僕はダークヒーロー  作者: 荒波 瑞稀
飲み込む闇
9/10

ヴァルハート・クロア


-クロア城 城内-


城に入ってすぐ目の前。

金と赤で豪華に彩られた広い空間。


玉座の間と呼ばれる、王に謁見する広間である。


からからな冷たい空気が、頬を撫でる。


王の椅子の前に並ぶ6人の団長たち。

そして、時雨の後ろで緊張気味の玲央。


それもそのはず、今ここにいるのは

この国のトップ達である。


各隊を指揮している団長たちのオーラに、

押しつぶされそうだ。




約束の時刻を過ぎたが、

まだ王様の姿は見えない。


「遅いですねぇ、いつものように」

「まだ寝てんじゃねーのか?」

「おい!ルーナ起こして来いよ!」

「自分でいったらどうですか?」


団長たちの自由さに唖然とする玲央。


「ちょっと時雨さん!王様の前でこんな感じでいいんですか!?」

「大丈夫なんですか?」


「いつものことだから大丈夫だよ」

「うちんとこは、かわってるから」


王様の椅子の前で騒いでいる、その異様な光景に、

ちょっと不安な玲央。


その時、後ろの扉がガコンと開く。


「みんなゴメーン!ちょっと寝すぎたぁ!!」


ばたばたと走って椅子に座る王。

ぼさぼさの髪に、パジャマ姿にただマントを羽織っただけの

なんとも情けない姿の王に、固まる玲央。


「あれがここの主だよ、面白いでしょ?」


かなり下手な王の姿に、さすがの玲央も開いた口がふさがらない。

王の威厳とはなんなのだろうか。

少し疑問に思った。




ヴァルハート・クロア 

クロア王国 4代目の王。


とぼけた性格をしているが、皆に好かれる優しい君主。

本当は強いと自慢げに語るらしいが、その実力は誰も見たことがないという。



朝がとてつもなく弱い。







「いやいや、ごめんね」

「4度寝しちゃってさ」



「寝すぎだっつーの」


時雨が呆れた顔でつぶやく。


「じゃあ、本題に入ろうか」

(はじめ)くん。よろしく」


王国騎士団団長 五十嵐(いがらし) (はじめ)


鋼の鎧を輝かせ、黒くつんつんととがった髪がなんとも勇ましい。

太い眉に鋭い目。いかにも強そうな風格である。


「はい。先日襲撃に遭いましたタソス村ですが」

「昨日、壊滅を確認。未だ生存者は見つかっておりません」

「なお、調査隊の報告によると、邪悪な魔力の痕跡が残っていたとのことです」


「なるほど…、ここからもそう遠くはないな」

「また被害が出るかもしれない。」

「周辺の村や街に、各団の隊を送ってくれ」


Jawohl(ヤヴォール)


各団長が声を揃える。

数分前の出来事が、嘘のような緊張感。

張りつめた空気がチクリと肌を刺す。




村の襲撃…邪悪な魔力…。

いったい何が起こっているのだろう。

それに、タソス村というと、

ドーア村から東に3キロほどの場所にある隣村だ。

もしかしたらドーア村にも…


不安が募る。





近日続いているというこの襲撃、おそらく悪魔族であろう。


最近では悪魔族が急激な進化を遂げ、

強力な力をつけ始めたという。


各地の村が襲撃されたが、

その村に人々の死体は無く、

悪魔族にさらわれたと考えられている。


今まではこのようなことはなかったのだが、

何か企んでいることは明確だ。



近々、大規模な戦いがおこるだろう。

そう告げた王だった。


「十分に注意して、周辺住民の警護にあたってくれ」

「ところで、時雨くん。後ろの彼が噂の坊やかい?」


「はい。玲央といいます」

「王様にお伺いしたいことがあって連れてきました」


「うむ、どうしたんだい?」


『玲央、自分でいいな』


「あ、はい!」

「お、お初にお目にかかります…王様」


クスクスとわらう団長達。


「こらこら!みんなやめないか!これが普通なんだぞー?」

「会えてうれしいよ玲央」


「実は、この刀の事についてお伺いしたいのですが」


腰に差していた水無月を掲げた。


手に取ろうとした王だったが、その手が寸前で止まる。


「なんとも禍々(まがまが)しい魔力だねぇ」


「水無月といいます。」


数名の団長が反応したのを玲央は感じた。


「なるほど…十二ノ秀器だねぇ」


遊撃兵団団長 リアン・マルティネスが口を開く。


「その中でもかなりの問題児だよ」

「なんでも、所有者の魂を吸い取るとか」


「うむ、私も知っているよ」

「それは本当なのかい?」


時雨が口を開く。


「はい、この刀を抜いたものは、急にもがき苦しみ」

「やがて、息を引き取ります。」

「憲兵の囚人を使い実験しました。申し訳ありません」


「かまわないよ。致し方ないことだ」

「しかし、玲央くんは大丈夫なのかい?」


「原因はまだわかりませんが、彼にだけこの刀が使えるようです」


「なるほど…」




それから玲央は、自分と水無月のことについて1から話した。

この刀と共に川に流されていた事。

母からの手紙の事。


色あせた母からの手紙を王へと渡す。


「レオン…………」

「アランくん、他に何かわかることはあるかい?」



アランは武器マニアであり、全ての武器を使うことができる。

知識も街随一だ。


「そうだねぇ。十二ノ秀器 六を与えられた長刀」

「魂を宿すとか言われてるけど、この武器自体が生命体かもって噂もあるね」


さらにアランは続けた。


もともと十二ノ秀器は、この世界の物質で作られておらず、

どの学者も発見することができなかったという。

悪魔族の住む魔界、もしくは我々のまだ知らない、

別世界で作られた武器なのかもしれない。


そして、



十二ノ秀器。

その全ての武器は()()する。


覚醒した武器は、加護を受け、

さらなる力を授かるという。




意味が分からない。

そのような話は一切聞いたことがなかった。

そもそも武器は戦いの道具であり、生命体であるわけがないのだ。

しかし、これらが現世界の物質ではないことからするに、

否定はできない。


「一くん。君はどう思うかい?」


「にわかに信じがたい話ではありますが、事実だとするならば」

「悪魔族に対抗する、大きな兵力になり()ると考えます」

「悪党の手に渡る前に、我々で回収、保護すべきです」


「そうだね、どっちにしろ無視できる事態じゃないからね」

「各団、十二ノ秀器について何かわかったら、私に知らせるように」


Jawohl(ヤヴォール)


「それと玲央くん、後で私の部屋にきてくれないかな」


「えっ?あ、はい!」


それぞれの団長は自分の持ち場へと戻り、

各小隊を周辺の警護に向かわせた。


時雨率いるRain は、ドーア村周辺の警戒、警護を担当。


玲央はそのまま王のあとに続き、王の部屋へと案内された。


「適当にすわっててよ」


この国の王と2人で話なんて、気を失ってしまいそうだ。

今にも吐きそうで自分の胸をさする。



それにしても王のいる城だと言うのに、警備が薄い。

王の部屋の前にも誰もいない。


まだ昼過ぎだというのに、王の周りには誰もいないのである。



「警備が薄い気がするんですが、大丈夫なのですか?」



「あぁ、問題ないよ。心配してくれてありがとう」



「あった、あったこれだ」


テーブルの上から、書類と、豪華な札のようなものを玲央に渡した。


「君には()()()()に入ってもらおうと思う」





国家組織 クロノス


国から許可された実力者だけが入ることの出来る

、特別な部隊である。


国には、たくさんの仕事の依頼が来るのだが、

王国兵士だけでは人手が足りない。


そこで、クロノスに所属する者達が、

代わりに依頼を受けるのだ。


基本的に行動は自由であるが、

国からの召集は必ず参加しなければならない。

たとえそれが命を懸けた(いくさ)であってもだ。


主な仕事は、材料の調達、魔獣の討伐、街の警備などである。


クロノス内での階級もあり、高階級の者は国からの報酬も高くなるという。

それに加え、特別な仕事も任されるようになるらしい。


階級は上から

M,S,A,B,C,D,E


であり、最も高階級はマスター階級と呼ばれているが、

クロノスに所属している2000人の内、1人も到達していないという。


昇級するためには、任務への積極度、貢献度のほかに、

団長の推薦が必要である。

そして、クロア王の承認を経て、昇級することができるのだ。




「クロノス!?僕がですか!?」


「君の実力だと申し分ないと思うがね?」

「私からの特別推薦だよ」


そう言うと

クロノスの推薦状と、王令の証である王札を玲央に渡した。


「今からこれを持って、街の南にあるクロノス本部へ行ってくれるかい?」


王の頼みを断るわけにはいかなかった。


「…わかりました」


しぶしぶながら、了承した。


城を出た玲央。すぐに波念をとばす。


『時雨さん!時雨さん!』


『お、何の話だった?』


『クロノスに所属することになりましたよ!』

『今から本部に行って手続きしてきなさいって!』


『クロノス!?すごいじゃん!』


『入る気はなかったんですけど…』

『母の手がかりを見つけに、外へ出ようとおもってたのに』


『クロノスに入ってたほうが外に出やすいとおもうぜ?』

『他国への通行所とかも手配してくれるし』


『そうなんですか?』



クロノスに所属している者は、任務に必要なものなどを

申請することで、国より援助してもらうことができるという。


『今から試験受けにいくのか?』


『推薦状と王札を頂きましたけど…』


『試験免除!?すげえじゃねえか!』


どうやらクロノスに所属するための試験は、免除してくれるらしい。




城から歩いて30分。

クロノス本部へと足を踏み入れる玲央。


入ってすぐの受付で推薦状と王札を見せた。


受付の女性が慌てている。

しばらくお待ちくださいと言い、ぐっと眉間にシワを寄せている。



波念でもおくっているのだろう。


しばらく待っていると、奥からとても綺麗な目をした

紳士が近づいてきた。


「おまたせいたしました」

「玲央様。こちらへどうぞ」


そのまま奥へ奥へと紳士の後を続いた。








ーーーーーーーー



ークロア城 王の部屋ー


閉ざされた部屋。

窓辺で空を眺めるヴァルハートの姿。


ふと視線を、机の写真立てへと向ける。



男2人が肩を組み、満面の笑みを浮かべている。


若い頃ヴァルハートのようだ、隣に映るのは親友だろうか。





「もしかしたら君の子なのかい?ジレン…」

「君の息子は生きていたよ」




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