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無属性の僕はダークヒーロー  作者: 荒波 瑞稀
飲み込む闇
8/10

僕にできること


山の間から赤い光が指す。

ようやく、街も明るくなってきた。


「さてと、今日も頑張りますかね!」


ゴゴゴッ


鉄の扉をゆっくりと開ける。


「姉御ー!玲央くんは起こしますかい?」


「あいつはもう起きてるよ」

「ったく、朝っぱらから元気な奴だよ」


クロア城 特兵団 訓練所。

そこに、玲央の姿があった。


クロア街に来てから2週間。毎朝通い、特訓している。


「ありがとうございました!」


「こちらこそだ!いい朝練になってるよ」


特兵団の団員である、黒羽 (あきら)は、最近よく

玲央の特訓に付き合い、稽古をつけてくれている。

とても愛想が良く、陽気な性格である。


アキラは槍の名手で、団員内でも優秀な兵士だ。


2人の実力はほぼ互角。

魔法なしでの戦いで、ここまで強い兵士はなかなかいないだろう。


「今日は招集日だから、団長様にそう伝えておいてくれ!」


アキラはそういうと、城の中へと戻って行った。


「そろそろ帰らないとな」

「また時雨さんに怒られちゃうや」


せかせかと身支度をし、速足で訓練所を後にする。

城を出て、まだ人気(ひとけ)のない街を駆けた。




「ただ今戻りました!」


「おそい!先に食うとこだったぞ!!」


朝食は、そろって食べるようになった。


今までは、朝食を食べないときもしばしばあったそうなのだが、

玲央が来てからというもの、毎日食べるようになったという。


玲央のことをかなり気に入っているようだ。




「あ、そうだ。」

「アキラさんが、今日は召集日だから忘れないでくださいって言ってましたよ」


「げっ、今日かよ…、めんどくさーーい!」


可愛らしく駄々をこねる。

玲央は、ちょっと可愛いと思った。





玲央がここにきて2週間、鍛冶屋の手伝いをしながら

クロア街を散策していた。


刀のこともそうだが、

自分と関係のありそうな過去の事件などを、くまなく調べた。


しかし、これといった情報もなく、ただ日時だけが過ぎていった。


「玲央、今日の招集、ついてきな」


「え?あ、はい」

「何の招集なんですか?」

「なーに、ただ各団長と王様との会合だよ」


飲んでいたお茶を吹きそうになる玲央。


「そんなところに僕がお邪魔していいんですか!?」


「あぁ、どうせならみんなに紹介しとこうと思ってな」

「それに、その水無月のことも」

「なんか情報があるかもしれないだろ?」



少し戸惑ったが、今まで少しの情報も無かった手前、

手がかりがつかめるならと、しぶしぶついていくことにした。


「あ、それと新しい服を用意しておいたから」

「それに着替えといて!!」

「断然動きやすいとおもうぞ」


時雨の指差す先には、黒く塗られた光沢のある木箱。

開けてみると、そこには絹素材でできた立派な羽織。

少し(いびつ)な形をしているが、問題はなさそうだ。


その下には、忍者の服の様な、麻でできた(ころも)

白く輝く脚絆(きゃはん)が何とも美しい。



「あたしからのプレゼントだよ!」


新しい衣装に胸が弾む。

なんて軽さだろうか。以前よりも数倍、身軽になった。


それに、ただの服じゃないことがすぐに分かった。

微量だが、服から魔力を感じる。


「ほう?魔力に気づいた?」

「知り合いの魔術師につくってもらったんよ」


得意げに語る時雨。上機嫌のようだ。


魔力によって、軽さ、丈夫さが格段と上がり、

強い魔法耐性を持っているようだ。


まさしく玲央専用衣装である。


腰に差した水無月を優しく()で、

軽くなった足先をじっとり眺める。


早く戦いたい。動き回りたい。

周りから見ても、そう思っているだろうと感じさせるはしゃぎぶりだ。


時雨は今にも吹き出しそうなのを我慢している。


「あの…散歩してきてもいいですか?」


目を見開き、かわいい顔でお願いする。



か、かわいいーーっ…



時雨たちは心の中で悶絶する。


「に、2時間後にはもう出発するから、それまでにね!」


「はい!」


勢いよく飛び出していく玲央。

時雨は鉄、司と顔を見合わせふふっと笑った。




◇◇◇◇


-クロア街 商店街通り-




「見つけたぞ!あいつだァ」

「こんどこそぶっ殺してやる…」


暗い路地の隙間、赤いマントをかぶった男が2人。

この間のティンバーウルフの一味だ。

街道を歩く玲央を目で追い、後をつけた。


2人は玲央の10mほど後ろをぴったりとついてくる。


やがて、玲央は街を抜け、建物1つない平原へと出た。

そして足を止める。


「ここでいいですか?盗賊さん」



玲央は初めから、2人の気配に気づいていたのだ。

アキラとの特訓により、気や魔力を感知できるようになっていた。


別に特別なことではないが、

会得するには、かなりの集中力と精神力が必要である。


玲央や村正のような侍は、独自の呼吸法により、

もともとそれらを兼ね備えている。


よって、相手の気配、殺気を感知するのは得意だ。




「へヘヘッ、今度こそお前の刀貰ってくぞ!」


炎使いの男は、懐から短剣を取りだし、逆手に構える。

後ろのガタイのいい男は、マントを投げ両の拳を地につける。


烈岩拳(れつがんけん)


地につけた拳を岩が覆っていく。

玲央の腕を砕いた、あの拳だ。


そのまま雄叫びを上げながら、

玲央に向かって突進する。


右の拳を振り上げ、玲央へ向かって降ろされる。


玲央は左足を下げ木刀を抜いた。

握られた木刀はゆっくりと頭上へ。



いいか玲央。これが上段の構えだ。

速さはないが、物凄い破壊力を持つ。

お前が使うことはないと思うがな。


村正の言葉が脳裏をよぎった。


ふっ、あったよ。村正。



頭上より振り下ろされる木刀。

物凄い爆発音と共に、岩の拳を粉砕した。


「ばっ、バカな!?」


玲央はそのまま体を捻りながら飛び上がり、

間髪入れず、2撃目を頭に振り下ろす。


思わずガードした左の手も、そのまま弾け飛んだ。


「てめぇ!」


体制を崩すも、すぐに立て直すガタイのいい男。

だがその時にはもう、次の一撃を構える玲央の姿。



右手の木刀は腰の左に構え、ずっしりと腰を落とす。

頭は下を向き、目を閉じている。


居合の構えである。しかし、相手との距離は約6m。

居合にしては少し距離がある。


「へへっ、馬鹿め!」


【烈岩拳】


先程より、大きな拳を作りだし

胸の前へ突き出す。


⠀【粉砕弾】


砕かれた岩石が、玲央に向かって飛び散る。

避けられそうにもない。


「ヘッ、死ねやクソガキ!!!」






1度は諦めかけていた。


確かに僕は、時雨さんや彼らのように

属性魔法は使えない。


だけど、僕には僕なりの戦い方がある…!!

使えるものは使うだけだ!!





「まぁ、まだ1回しか使えないけどね」


小さくつぶやいた。






これが僕の魔法。





(せん)




シュッ…


一瞬の出来事だった。

悲鳴ひとつあげることなく、ガタイの良い男は膝から崩れ落ちていた。



「ば、馬鹿な…」



炎使いの男は、横ではっきりと見ていた。

玲央が木刀を抜きながら、右足を少し浮かせたその瞬間。


消えた。


確かに玲央の姿が消えたのだ。そして、気が付いた時には、

飛んでくる岩石をすり抜けたかのように、男の脇へ。

そして、そのまま男を切っていた。




おいおい、なんなんだよ今の!

あんな一瞬でどうやって…!?

超スピードかぁ??

しかしそれだと、あの岩石を避けれるはずがねぇ!!


まさか…瞬間移動したのか!?

あんなガキが…


「チィ、調子乗りやがってぇ!!」


火炎!(フレア)


右の手のひらから炎が放射される。


「二度もやられませんよ?」


軽く炎をかわす玲央。余裕の表情を見せる。


「やっぱ動きやすいなコレ」


幾度も飛んでくる炎を全てかわしながらも、

少しずつ近づく。



「くそ!くそ!くそっ!」


短剣をふりまわすも、玲央は紙一重で避ける。

目はしっかりの刃の先を見据えていた。


「ちょっと寝ててね」


振り回す短剣がぴたりと止まり、右手から落ちる。

玲央の左の掌底が、炎使いのみぞおちへと入っていた。


「あがッ…」


腹を抱え込むように、前に倒れ込む炎使い。

しばらくは動けないだろう。


「悪いことしちゃダメだよ?」

「次は憲兵団のとこ連れてっちゃうからね!」


木刀を帯へと戻し、背を向け立ち去る玲央。

その声が、2人に聞こえていたのかは分からない。



「うまく使えたけど、もう魔力がないや」



先ほど玲央が使った魔法。閃


簡単に言うと瞬間移動(テレポーテーション)である。

無属性魔法の中でも最高難易度の魔法であり、

世界でも5人ほどしか使えないと言われている。



この魔法、一般的には【瞬間移動(テレポート)】とよばれており、

好きな場所に瞬時に移動できるが、その分膨大な魔力がひつようである。

魔力量によって、移動できる距離も長くなる。


玲央の閃も名が違うだけで、同様の魔法である。


大魔導士クラスの者でなければ、使うのは非常に困難だろう。


今の玲央の魔力量では、10mの距離を1回飛ぶだけで、魔力を使い切ってしまう。

かなりのリスクを負った魔法である。



『玲央!そろそろ出発するからもどっといで』


時雨からの波念だ。


『すぐ戻ります!』


近道しちゃえ!


路地へ入った玲央は、壁を器用に駆け上がり、

屋根伝いにHeavy Rainへと向かった。






----------






「…橘 玲央」



路地の壁に寄りかかるフード姿の影。

左手に握りしめる短刀が、怪しげに光る。


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