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無属性の僕はダークヒーロー  作者: 荒波 瑞稀
飲み込む闇
7/10

月に選ばれし子(2)

--十二ノ秀器(じゅうにのしゅうぎ)--


今から200年程前に作られたとされる、12の武器であり、

それぞれ異なる形をしている。刀や剣、槍など様々だ。


ガッツェ・ブラフ。これらの武器を作ったとされる鍛冶師である。

彼は世界でも名の知れた鍛冶師であった。


だが、200年前、彼が32歳の時、突然姿を消した。

彼の家の明かりはつけっぱなしで、人さらいにあったのではと噂されていた。


しかし2年経ったある日、再び姿を現し、これらの武器を持っていたという。


そして、彼は一枚のメモを握り、弟子達にこう告げたという。


「俺の最後の作品だ。」

「いつか必要になる時が来るだろう」

「これで、世界を守ってくれ」


翌日、彼は息を引き取ったそうだ。


彼の握っていたメモには、


[十二ノ秀器]

[俺の作ったこいつらは、そこらへんの武器とは比べもんにならねぇ]

[何が起こるかわからんが、世界を守るために使ってほしい]

[()()()()()()()()()()()()()()]

[()()()使()()()()()()()()()()()()()]


そして、それぞれの武器の名が記されていた。


睦月、如月、弥生、卯月、

皐月、水無月、文月、葉月、

長月、神無月、霜月、師走。



かつての大和(やまと)という小国の言葉のようだ。


かなり謎の多い武器だ。

しかし、その一つ"水無月"を玲央は持っているのである。


----








「妖刀?どういうことですか?」


玲央は、時雨に尋ねた。


「水無月…噂で聞いただけなんだけどな」

「この刀は所有者の魂を食らうらしい…」


「そんな、馬鹿馬鹿しいですよ」


思わず吹き出して笑ってしまった。


「いや、この町でも4人がその刀の犠牲になったって聞いた」

「そのうちの1人は、あたしの知り合いや…」

「そんときに見たんやな、その刀」


頭の中で、その時の光景が蘇る。


「じゃあ、どうして僕はまだ生きてるんですか?」


皮肉交じりに時雨に質問する。


「だったらためしてやろうか?」


横目で睨む時雨。玲央の腕を引っ張り家を飛び出す。

街灯で照らされた暖かな道。

その正面には大きなお城。クロア城である。


目の前には門番が2人。

「待て!こんな遅くに何の用だ貴様ら!」


門番の1人が槍を構える。

ムッとする時雨。何かを言い返そうとしたその時。


「馬鹿野郎!この方はRainの団長、時雨様だ!」

「失礼いたしました。お通りください」


怯えた声でもう1人が頭を下げた。

ふんと鼻を鳴らし、ズカズカと歩く時雨。


へぇ…やっぱ時雨さんはすごい人なんだなぁ…


時雨に引っ張られながら玲央は思った。

そして2人は地下へ。連れてこられたのは監獄。

罪を犯した罪人たちが捕えられていた。


その中で、処刑が決まっている罪人の檻の前へ。


「よぉ信貴(のぶたか)

「げんきしてっかぁ」


「てめぇ、何しにきやがった!!!」


ものすごい剣幕で威嚇している。


「お前、死刑だってなぁ」


「それをいいにきたのか?コラァ!」


「取り消してやってもいいぞ」

「そしてここから出してやる」


「どういうことだよ」


「この刀預かっといてくれ」


玲央から刀を奪い、檻の中へと入れる。


「時雨さん!ちょっと!」


「ヘヘッ、簡単じゃねぇか!!いつまで預かってりゃいいんだ?」


「あたしがもう一度ここに来るまでだ」


そういうと時雨は憲兵団にこそこそと話し、その場を後にした。

そして、クロア城の中、特兵団の部屋へ。


しばらく使われていない自分の部屋へと、玲央を連れて行く時雨。

そして先ほどの話の続きを始めた。


「いいか?もし本当にあの刀が水無月だったとしたら」

「玲央。お前は特別な人間なのかもしれねぇ」


「特別…?」


時雨の話では、十二ノ秀器にはいろいろな噂があるらしく、

弥生、水無月、長月は、妖刀だと伝えられてきたらしい。

魂を食らうだとか、自分の意思を持つだとか、血を飲み込むだとか。


中でも水無月は、魂を宿す妖刀として恐れられていたらしい。


なぜ、母は水無月を僕に託したのだろうか…

それになぜ持っていたのだろうか…


謎は深まるばかりであった。


「僕はいったい誰なのでしょうか…」


ふと手紙を手に取り、思いにふける。

時雨はただ玲央を横目でみていた。



ダダダダッ


突然荒々しい足音が外から聞こえた。

勢いよく開いた扉。


そこには、憲兵団の服を着た看守の姿。


「時雨様!男が急に暴れだしました!!」


「なに!?思ったよりはやいな…」


囚人のもとへと走る玲央と時雨。

その最中(さなか)、玲央は驚愕する。

瞬く間に、2人の差が大幅にひらいたのだ。



速い…!?



圧倒的な速度に、必死でついていこうとするも

すでに、時雨の姿は視界から消えていた。


絶望した。


魔法で戦えない玲央は、剣術及び身体能力を磨いてきた。


誰よりも速く、誰よりもしなやかに。


だが現実を目の当たりにして、なんだかもどかしくなる。

なんだか苦しい。玲央の拳はぐっとにぎられていた。



「これは…」


時雨が見たもの。それは、

刀を両手で握りしめ、地べたでもがき苦しむ囚人の姿。

白目をむき、口から泡を吹いて(うな)っている。


「これは、呪いの剣だな…」




「時雨さん!」


そこに玲央が駆けつける。

もがき苦しむ囚人を見て、目を見開く。

思わず固まってしまっている。


「時間は?」


「はい。約1時間ほどです」


看守によると、初めは地面に刀を置いていたそうだ。

しかし、しばらくして刀を手に取り、

刀を抜いた瞬間、急に暴れだしたという。


やがて男は、ぴたりと動きが止まり、そのまま息を引き取った。


「…あとは頼んだ」


そう看守に告げ、牢を後にする時雨。

立ちすくむ玲央だったが、

時雨に肘を引っ張られ、我に返る。






「姉御、お茶が入りやした」


「ありがとう」


Heavy Rainへと戻った2人。

時雨は煙草をふかし、水無月のページを眺めていた。


「んー、やはり載ってねぇなぁ」

「玲央にしか使えない刀、ねぇ」




自分の刀を見つめる。


カチャッ


(つば)(さや)の間から輝く、

しろがね色の刃。とても美しい。


心配そうに玲央を横目で見る時雨。


「僕は本当にこの刀を使ってもいいのでしょうか」

「いつか皆さんのことを、傷つけてしまうんじゃないかって」

「そう考えてしまうんです」


「玲央…」


「もちろん、両親のことも探したいですし」

「もっと強くなりたいですけど」




「自信がないです」


一筋の涙が頬を伝う。


「あははははは!」


カッカッカと大笑い、し玲央の背中をバシバシと叩く。


「あ、姉御!」


なだめようとする鉄と司。額に汗が流れる。


「お前は化けるよ。玲央。」


「え?」


「確かに魔法がつかえねぇかもしれないけど」

「戦い方はいろいろある」

「まだ若いんだ、これから見つけれはいいんじゃねぇか?」


玲央の髪を荒くなでる。


「それに、その刀」

「どうやらお前にしか使えないみたいだ。つまり」


()()()()()()()()()()()


「時雨さん…」


「まぁ、村っちが惚れ込んだ男だからな!」


恥ずかしそうに笑う時雨につられて、

ついついにやける玲央。


「あたしも気に入ってるし」

「いろいろ援助してやるからまかしときな!」



玲央は決心した。


もう折れない。自分のやり方で強くなってみせる。

そして、まだ知らぬ自分の名を見つけると。


玲央の中のモヤモヤが、

サッと溶けて流れていく気がした。





















ーーーーーーーー



ーーHeavy Rainーー


立て掛けられた巨大なハンマーの先。


玲央らの会話を聞く人影。

月明かりに照らされ、赤い目が怪しく光る。


「…見つけた」



そう呟くとサッと姿を消した。




今回は、ごちゃごちゃしててすみません。

年末年始で期間が空いて、時間がかかりました…



また手直しする予定であります!


次回をおまちくださいm(*_ _)m

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