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無属性の僕はダークヒーロー  作者: 荒波 瑞稀
飲み込む闇
6/10

月に選ばれし子(1)



「どっかで見たんだけどなぁ…」


自分のキズを回復している玲央の横で、時雨は机に置かれた玲央の刀を見つめる。



「業物の1つかもしれないねぇ」


そう言うと、ハシゴを登り、2階にある本棚を(あさ)る。


「司!飯はまだなのか!」


「へい!もう少々おまちくだされ!」


厨房で司が大量の料理を作る。見ているだけで手際がいいのが分かる。


鉄は食器を並べ、綺麗に整えている。

時々、こっそりつまみ食いをしている。

がっちりとしたガタイの割に、可愛いところもあるようだ。




業物か…この刀が何か分かれば母への手がかりも…




玲央はそのまま、左足の手当を続ける。


「玲央〜!落とすぞ〜!」


上から分厚い本が3冊落とされる。


「えっ!?」


咄嗟(とっさ)の出来事だったが、

気づいた時にはしっかりと3冊、胸の中に抱えていた。



「あっはは!よくとったね」


見下ろしながらゲラゲラと笑う時雨。

滑るようにハシゴを降りる。




ー世界の名刀ー


なんと分厚い本であろうか。

握った拳よりも幅がありそうだ。



そのような本が3冊。さすがにこれなら見つけられるだろう。





椅子の上であぐらをかき、豪快に飯を頬張る時雨。

左手で本をパラパラとめくる。


目の前に並ぶご馳走様に少し緊張している玲央。


「司さん!とってもおいしいです」


「腕には自信ありやすぜ」



眩い歯をみせ右の親指を立てる。


僕もこんなに食べたら2人みたいにムキムキになるのだろうか…

ついついにやけてしまう。

本よりも、目の前の宝石に夢中だ。






「ぬわぁぁああああ!!」


お化けでも見たかのように声を荒らげ、

椅子ごと後ろに転げ落ちる時雨。


「あ、あ、あった!これこれ!!」


慌てて起き上がり広げた本の右のページ指さす。



そんなにびっくりすることか?と思いつつ本を覗き込む。

挿絵に写る刀は玲央のものと非常に似ている。


漆黒に輝く柄に、うっすらと覗く緑色の模様。

そして長い刀身。つばの形も瓜二つだ。


だが問題はそこではなかった。


その場にいる皆の視線はただ一点。




ーー十二ノ秀器(じゅうにのしゅうぎ) 水無月(みなづき)ーー



「じゅうにの…しゅうぎ?」

「本に載ってるってことはやっぱり業物なんでしょうか?」


玲央の問いに誰も答えない。

不思議そうな顔で皆を見る。


沈黙を破ったのは鉄だった。


「あ、姉御…」


「あ?あぁ、すまない」

「なぁ、玲央。この刀ってどうした」


「えっ」


急な問いに戸惑いを見せる。


「詳しくは分かりませんが、最初から持っていたみたいです」


「最初から?」


「はい。捨てられていた僕がずっと握っていたと聞いています」


ただならぬ雰囲気に、悪寒が走る。

ただただ広いこの部屋に、大時計の針の音だけが鳴り響く。

その音が普段よりもゆっくりと感じた。


「業物どころじゃねぇよコレ」

「妖刀かもしれねぇ」


そう告げた時雨の声は、

嬉しみか、哀れみか。

はたまた恐怖からくるものか。


小刻みに震えていた。

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