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ふたり
雲一つない立夏の青空の下。
荒野にころがる無数の岩石。
轟音と砂煙の中、クレイゴーレムを両断し、刀を払う少年がいた。
「ちょっとやりすぎたかな?まぁいいや」
橘 玲央 《たちばな れお》
青黒い髪をなびかせ、笑みを見せた。
琥珀色に輝く瞳に、左目を隠すように伸ばした前髪。
優しい声にどこか温かみを感じる。
刃こぼれひとつしていない少し長めの刀を鞘に納め、辺りを見渡す。
「ユイ。ノルマ達成できてる?」
「…23個…多い」
ユイと呼ばれる少女は岩陰からヒョイと顔を出す。
肩まで伸びた髪は茜色に揺れ、腰には短刀を差し忍のような姿をしている。
物静かそうな彼女は小さな歩幅でせっせとクレイ岩石を集め始めた。
「…はいっ」
服についた砂埃を払う玲央の足元に、ユイは集めたクレイ岩石を転がす。
「ありがとう、ユイ。」
そういいながら、右の手のひらを山積みになったクレイ岩石へとむける玲央。
【漆黒の渦】
気づくと二人の前には押しつぶされた草しか残っていなかった。
「兄、かえろっ…」
そうつぶやくユイに、玲央は"うん"と頷き優しく微笑んだ。
二人の影が半分沈んだ太陽へと沈んでいく。