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日本国破産?そして再生へ  作者: 黄昏人
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2024年世界情勢

読んで頂いてありがとうございます。

 このように、阿山を継いだ三嶋首相の下で“令和の所得倍増計画”は着々と進行していたが、2024年の同計画の開始以来5年、第1期5カ年計画で先述の通り予定通りの結果を得られた。


 この間、日本においては実質2.5%、名目5%の成長を遂げたわけであるので、経済状態は極めて良好であったと言えるだろう。また、世界全体としては、実質2%程度の成長を遂げたが、中国を押さえ込むという目的に向かって積極的に世界にコミットしていったアメリカと、その流れにとり残された中国とその同盟国とで大きな差がついた5年間でもあった。


 中国を押さえ込むということは、アメリカの国是となっていたので、そこにおいて共和党、民主党の壁はなかった。その場合の手段は、3つあり、1つは経済においてこれ以上の膨張を許さないこと、2つ目は技術開発に係わる情報を遮断すること、3つ目は国際関係における影響力を削ぐことであった。


 経済において中国の膨張を防ぐ手段として有効と考えられたのはTPPであり、再選を目指したスペードを破って大統領になったジミー・ジラソンは当選後、公約通りすぐにTPPに加盟した。この場合の狙いは、世界の工場と化した中国をその座から引きずり落とすことであった。


 そのための有力な手段は、環太平洋のTPP諸国に生産チェーンを作ることである。このためには、まずは当然において当該国の生産工場はもちろん、交通網、エネルギー、通信などのインフラ整備が必要になる。そして、その建設には大きな投資がなされ、それは人々の就業機会を大幅に増加させ、GDPの成長と失業率の改善につながった。


 もちろん工場が稼働を始めて、生産を開始すれば当然それもGDPの増加につながった。運搬手段として、やはり船舶による手法が圧倒的にコストの低い点は、現在もまったく変わっておらずその点で陸上交通の移動の線が短い環太平洋諸国には大きな優位性がある。


 TPPにはオーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、 日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー,シンガポール,ベトナムなど当初からの11か国に加え、アメリカがフィリピン、インドネシア、タイ、インド、イギリスなどを引き連れて加わった。


 この中には、GDP世界1位のアメリカ、3位の日本が加わり、インド、インドネシアなどの大人口国も加わっており、さらにはオーストラリア・カナダなどの資源国も加わって、これらの国々が協力することは経済的に大きなメリットがある。


 インド・イギリスがTPPに加わることは聊か無理があるが、これが対中国包囲網という意味合いがあることからすれば、不自然とも言えない。イギリスの場合にはピトケアン諸島を未だ領土に持ち、オーストラリア・ニュージーランド・カナダなどの英連邦諸国があることからすればそれほど不自然とは言えない。


 さらにイギリスはEU離脱を強行したが、貿易の半分がEU諸国とのものであったために、経済の低迷に苦しんでいたという事情もある。TPP参加ついては、日本からの誘いもあって検討はしていたが、GDP圧倒的世界一でかつ最も強固な同盟国であるアメリカの誘いもあって、積極的に加わったものだ。


 TPP諸国へのインフラ投資は、アメリカと日本が中心になってその資金を提供したが、とりわけ開発途上の国々、インド、ベトナム、フィリピン、インドネシア、タイなどにおいて、その経済効果は著しかった。日本、アメリカ、カナダなどの先進国もその経済同盟域内の活気はメリットとなっており、日本におけるGDP成長の一つの原因はTPP圏内の活気とも言われている。


 このように、過去5年の世界経済の成長の多くは、TPP諸国の経済成長によってなされたと分析されている。このような事態になると、中国は当然において苦境に立つようになった。すでに、その急速な経済発展によって増長して傲慢な振る舞いをしてきた結果、多くの国々で嫌われるようになった中国は、その異様な国の形態と危険性が多くの国々から認識されるようになった。


 この点は、先進的な技術を握る先進諸国においての共通認識となって、これら諸国はアメリカが編み出して実行している様々な技術に関わる保安手段を共同で実施を始めた。その効果は顕著なものであったが、中国がほぼ自由に技術を盗めた時期の蓄積は大きく、数年の間において中国の技術進歩はさほど西側諸国に劣ることはなかった。


 しかし、世界的なチェーンから露骨に排除されるようになった影響は大きく、新機種の先進性においては歴然と世界水準に劣るようになってきたので、2024年以降は加速的にその格差は広がっていくものと考えられる。


 結局、「中国製造2025年」は中国の製造業を、ITを駆使した世界最先端にする野心的なものであったが、2024年の時点で当初の思惑とは相当に離れた、世界水準からすれば遅れたものになることは確実である。


 但し、一方で2018年時点の時点において国民のそれぞれにカードを持つことを強制し、それと街角のいたるところに仕掛けられたカメラとセンサーによって国民の動きを監視するというシステムは、すでに完成の域にある。この点で、中国共産政府は全国で巻き起こっている動乱を押さえ込むことには成功していると言える。


 だから、一定の経済成長がないと人民の反乱によって政体が滅ぶという、中国の数千年の宿痾はITの活用によって解消したと言えるだろう。ただ、それは世界が最も嫌うディストピアの世界そのものなった結果であるが。


 ちなみに、香港の人々を本土と同様に事実上共産党の管理化に置き、さらには容疑者を本土へ送るという香港のディストピア化は、激烈な反対運動を巻き起こした。そして、それに対する治安部隊の発砲による580人余の死が世界に放映された。このように、ドローンによって動画が撮られ世界に向けて放映されたために、1989年の天安門事件のように、数千人を殺戮して300百人余と世界をごまかしたわけにはいかなかった。


 非武装のデモ隊を、完全武装の軍が機銃掃射するその映像は、世界中から強烈な非難を呼んで、アメリカ世論をして空母部隊の香港沖への派遣することになった。それに対しては、中国政府は空母殺しと呼ばれる中距離ミサイルを空母へ発射するとして脅した。

 しかし、万が一それが実行された場合には、その結果に対してはG7による中国貿易の停止するとの宣言が行われるに至り、中国政府は香港に対する措置を白紙に戻さざるをえなかった。


 この騒ぎは、中国政府の異質さをより世界にアピールする結果になり、技術と政治・経済の中国圏の世界からの切り離しが加速することになった。この状況の中で、中国の経済が順調であるわけはないが、彼らは5%程度の成長を謳っていた。


 しかし、ビッグデータの活用が進んできた状況の中で、貿易高のほぼ正確な把握、さらには中国内の断片的なデータから、2019年以降からの成長率は-0.5〜+0.5%と推測された。さらにその推測から類推される過去のデータも極めて怪しく、中国における現実的なGDPは2024年で10〜12兆USドル(1000から1200兆円、1ドルは大体100円)と推定されている。


 従って、中国政府は強く否定して非難しているが、中国政府のGDPや成長率は『中国政府によると』と『アメリカ政府推計では』の2つの数値があり、後者が正しいと受け止められている。2018年頃でも中国政府の発表をうのみにするエコノミストはいないと言われていたので、世の中が彼らの常識に追いついてきたのだろう。


 韓国は、ラオス、カンボジア、パキスタンと共に、その中華経済圏に属しており、その中では圧倒的に大きな存在である。とは言っても、2024年のGDPは1.6兆USドルで過去5年間はほとんど横ばいであり、インフレは2%から3%で進んでいるので実質の成長率はマイナスを続けている。


 韓国は、中華経済圏に属すのみならず軍事的に実質的に中国の従属国になっており、すでにその政府には中国の顧問官が配置されていて、その政策は中南海の意向に沿っている。北が中国の1つの省になったとのは対象的であるが、2019年でGDPで12位になって世界においてそれなりに存在感があるこの国は独立国の体裁を保つべきと、中南海が考えたらしい。


 この状況を作り上げた大統領は白であったが、統一したいと思っていた北を中国に制圧され、共同のものにしたいと思っていた核も同様に中国に破壊または接収された。その上に、自分が主導した結果として米軍に去られて、自分が任命した無能な幹部に率いられた軍が、多くの犠牲を生んだ北によるミサイル攻撃を許した。


 それに加えて、複数の中国軍機が韓国本土を往復で縦断して首都で低空飛行で人々を脅しあげるという無様なことになったのだ。これらの一連の事態を生んだのは、まさに白の作為、無作為の結果である。だから、彼は流石に辞任をすることを宣言したが、宣言の直後に乗り込んできた中国の使節によってその座に留まることを強制された。


 その時点では、大統領府の周りには50万人という大デモ隊が、白の辞任を求めて取り囲んでいた。しかし、それに対して、中国は京福宮の裏山に一発の弾道弾を打ち込んだ。これはいわゆる空母殺しと言われるもので、軌道高度まで上がってマッハ10近い速度で降ってくるものであるため、迎撃は極めて困難であり、当然韓国軍に迎撃の術はない。


 その火柱と轟音は、夜間ロウソクを持って行進をしていたデモ隊からははっきり感じられて、混乱が広がっていった。しかし、それにとどまらず火柱は5分置いてまた上がり、さらに5分ごとに5発のミサイルが殆ど同じ位置に着弾した。それは、ミサイルを放ったものがその気になれば、どこでも好きなところに打ち込めることを意味でしている。


 そして、そのような真似をするのは一国しかない。長く中国の支配の元に生きてきた韓国人にとって、そのメッセージは明らかであった。デモ隊はその眼に絶望を宿し、肩を落としてそれぞれに自分の家に帰って行った。

 このように、韓国人は中国の支配下に入らざるを得ないことを心の底では納得した。その後は、名目上の支配者の白には大いに苦情を言いながら、中国の支配を受け入れていった。


 このように、経済的にも政治的にも中国の属国になった韓国にとっては、軍事的にも同様であった。経済がぼろぼろの北に対してさえ分が悪いと言われていた軍が中国に敵するわけもなく、従属的な立場になってその核の傘に入ることになった。日本と敵対し、アメリカから見放され、活用を目論んだ北の核も破壊され、取り上げられた以上は中国の核の傘に入るしかなったのだ。


 もっとも、中国の核の傘に入ることに意味があるかどうかは極めて疑わしい。北に核がなく、中国の従属化にある以上、韓国が自らに他国への侵略等を行わない限り、アメリカ等の先進国がそれを使う可能性はなく、可能性があるのは自ら侵略的性向があるロシアのみである。


 そうした結果によって、中国という負けつつある存在の従属者になって、唯一の誇りの源泉であったその経済もジリ貧状態が続くと、国民の白に対する目は際めて厳しいものになった。中国も白に対する批判は、特にとがめだてはしなかったので、白の2022年までの任期は極めて厳しいものになった。


 何しろ世界一悪口が豊富と言われる朝鮮語だから、彼は毎日様々な罵り言葉であざけられ非難された。当然本人は何度も辞任を申し出たが、これ以上はいないスケープゴートを中国が手放す訳もなかった。


 韓国の産業について言えば、DRAMなどIT部品や製品の最先端の製造は、アメリカの『戦略物資は作らせない』という方針のもとに、必要な材料を韓国へ輸入させないという制度の下で、すでにできなくなっている。


 無論、韓国としてもそれなりの予算を投じて、必要な様々な材料を自作すべく努力はしたが、材料を買って組み立てに特化した製造業とその人材は、一つ作るにも無数のノウハウのある様々な部材を作るのに向いていなかった。

 ノーベル賞に値するような研究が出てこないのは、コツコツ積み上げるような研究に韓国人は向いていないのだと言われるがその言葉は正しいかったということだ。


 彼らが5年の試行錯誤の末にできたことは、何度も出来たと称する部材や必要材料を使って試験して、結果必要な結果を得られなかったのが大部分である。一部については、思い切って実製品に使った結果生じたクレームと返品の山に絶望してしまった。結局、当初の壮大な計画に比べると1割程度のそれも日本製品には劣るものが成果となってしまった。


 結局、韓国は自分で開発した材料の使った低信頼性の製品や、日本から部品を買って組み立てる信頼性の高い様々な民生品をそれなりに製造しており、これらは値段が安いので中国を中心に売れている。この場合の韓国の強みは、中国から積極的に使うことを推奨された北の人々の極端に低い人件費である。


 もちろん中国もそのようなものを値段が安いというアドバンテージだけで、TPPの圏外の国々に売っているが、韓国製品はやや中国製品より質が高いと見做されている。


 ところで、このような韓国の状況に不満な人は大部分であり、とりわけ白の治政に不満であった半数余りの人々は不満が強かった。しかし、不満はあっても社会の空気に逆らって改革しようという人々は少ないのが韓国社会で、こうした人々は海外へと散っていったのだ。

 支配者たる中国は、このように不満分子が海外へ脱出することは妨げず、2024年までの5年間に海外に脱出した韓国人は300万人を超えるという。


 日本との関係は、輸出管理が結局アメリカの意向で重要部品の禁輸に繋がり、工場が止まることによる失業者が発生し始めるころから極めて悪化した。韓国における日本人への暴行、日本における反日韓国人による婦人の殺人をきっかけにビザが復活して、それも反日運動の激化の要因になった結果、韓国からの日本への渡航は極めて難しくなった。だから、韓国からの日本への脱出は数が少ない。


 このように2024年の世界情勢は、繁栄するTPP諸国とそれに反目して緩やかに衰退している中国圏がある。さらに、TPP諸国に秋波を送り始めているヨーロッパ、中東、西アジアとアフリカ、中南米、つまり中国圏以外の諸国という構図である。


 この中で、近年クローズアップされてきたのが、水問題と食料問題である。これらの遠因は気候変動であるがアフリカと南米及びバングラディッシュで餓死者が生じ始めており、断水は世界の各地で頻発し、そのために赤痢などの疫病が蔓延し始めている。


 日本にとって深刻であるのは、穀物の大供給地であるアメリカにおいて、遂に中西部の地下水に枯渇の兆候が見えてきたことである。この状況で北米、南米のような大生産地が気候変動によって凶作であると、日本においても深刻な事態になりかねない。


 ちなみに、日本は2024年のこのような世界情勢の中で、その立ち位置はそれほど変わっていない。しかし、ICT技術の生産における応用において今や世界をリードしつつあり、その技術の世界への伝播によって存在感を増しつつある。また、RIDPの名の元に先進国の中では突出した成長率を達成しつつある点は大いに注目されており、このシステムは真似る国も出てきている。


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