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武神憑依バトルロマンス  作者: 北のシロクマ
序章:武神使い
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ダンジョン突入!

 本来ダンジョンとは、いつ誰が入ったかを逐一記録されるので、戻って来ない者がいたらすぐに判明する仕組みになっている。

 特に未成年者は緊急連絡先が必至であり、記録されていたのが高遠先生のスマホだったわけだ。


「なるほど。だからうちの学校の生徒だと分かったんですね」

「まぁね。コネクトアーミーからは本人にも連絡がいってるはずなんだけど、いまだ応答がないらしい。魔物を相手にしててそれどころじゃないっていうならマシだけど、最悪は……」


 もし救助に間に合わなければ遺体確認になる可能性もある。

 今回は二人で潜ったらしいが、不運な事に同時間帯に他の武神使いが入った記録はない。

 状況としてはかなりマズイな……。


「この工場は1階と2階、それに地下1階の合わせて3つのフロアがある。あたしは2階から探すから、キミは地下から探してくれ」

「了解っす!」


 1階で音信不通とは考えにくいって事で、それぞれ端から探す事に。

 入口付近の階段から地下へと駆け下り、よく分からない機材を横目に奥へ奥へと進んでいく。


「チュチュ!」

「チュチュチュチュ!」


 っと、機材の隙間からネズミが出てきやがった。猫と同等のサイズで目も赤いことから、魔物で間違いないだろう。


『ジャンクラットだ。一匹が戦闘を始めると、周囲のヤツも寄ってくる習性がある。手早く片付けろ』

「おぅ!」


 だがここでの火魔法は厳禁だ。機材に燃え移ると厄介だしな。

 そうなると肉弾戦しかないってことで――


「くらえ――ブラストバーーーン!」


 ドゴゴゴォォォン!


「「「ヂュ……」」」


 1匹のジャンクラットを起点として周囲の奴らにも爆風が襲い、すでに集まりかけてた10匹程度がまとめて破裂した。


「生き残りは――よし、いないな」


 神力を消費して周囲を探るが、ネズミは全滅したらしい。

 だが再び湧いてくる可能性が高いし、早いとこ先へ進もう。


 ヒュゥ……


「……ん?」

『どうした? 何か見つけたのか?』

「ん……いや、ちょっとな」


 風が顔に当たった気がしたんだが……気のせいか?


『風っつっても、入口から入ってきたやつじゃないのか?』


 それはない。さっきのは明らかに正面からのものだった。

 気にはなるが構ってる余裕はないし、今は先を急ぐ。

 そして10分ほど走り回ったところで……


「ん? 行き止まり?」

『――の、ようだな』


 地下は隅々まで探した。血痕も無かったし、こっちはハズレか。

 しゃーない。一度地上に戻って――


 ヒュゥ……


「!?」

 

 まただ、(きびす)を返したら背中に風が当たった!

 どうも気になるな。どこかに抜け穴みたいなのがあるんじゃないか?


『抜け穴?』

「ああ。例えばだが、隠された地下2階が有ったりとか」 

『ゲームじゃあるまいし、そんなもん有るわけ――』

「あ、コレか!?」


 床を調べてたら1ヶ所だけタイルがズレているのがあった。

 手に取ってみたら案の定、更に下へと続く梯子(はしご)が掛けられてやがる。


『よく見つけたな。この下が怪しいぜ』

「俺もそう思う」


 はやる気持ちを抑え、慎重に梯子を降りていく。

 地下2階もコンクリートで覆われてるが、細長い通路の横には鉄格子で仕切られた小部屋がいくつも並んでいた。

 何か特殊な実験でも行われてたのか? しかもいまだに電気が通ってるとか、どうなってやがる?


『多分だけど、ここに巣くう魔物が魔力を使って点灯させてるんじゃないか? 上位の魔物なら知力もあるし、そのくらいなら容易いぞ?』


 上位の魔物か。だったら尚更早く――って


「太郎、アレ!」

『アレって……うわっ! スケルトン!?』


 表現としちゃ正しいが、俺たちが見たのは人間の白骨死体だ。

 ボロボロになった衣服も残ってて魔物としての反応もない。少なくともアンデッドではないな。


『武神使いかな? ダンジョンとして管理されてからは一般人は入れないし』

「だと思うが、なんだって鉄格子の中に――」

「ねぇ、そこに誰かいるの?」

「!」


 女の子の声だ。もしかして帰還してない武神使いか!?


「ここか!」


 声の聴こえた鉄格子までやって来ると、俺の学校と同じ制服を着たツインテールの女子が、泣きべそをかいた顔で見上げてきた。

 隣には腕から血を流して倒れている男子もいるな。出血そのものは大した事なさそうだし、気絶してるだけか。

 ちなみに女子の方はサックスを背負ってるようだが……サックスの武神か?

 まぁ後で聞いてみよう。


「お前らが未帰還の武神使いだな?」

「そうよ、早くここから出して! じゃないとアイツが戻って来ちゃう!」 

「アイツ?」

「名前は知らないけれど、泥人間みたいなヤツがいるのよ!」


 人形(ひとがた)の魔物か。

 このダンジョンにそんな魔物が出るとは聞いてない。これはキチンと報告する必要があるな。


「分かった、鉄格子を壊すから後ろに下がってろ」

「え!? ちょ、ちょっと無茶よそんなの。壊せるならとっくに脱出してるわ。それより鍵を探して――」

「いや、急ぐんだから壊した方が早いだろ。いいから下がってろって」

「わ、分かったわよ……。でも無理だと思うわよ? 何度も試したけれど、この鉄格子ビクともしな――」


 バキバキバキィィ!


「ほら、早かっただろ?」

「」


 普通にへし折っただけなんだが、どうやら刺激が強すぎたらしい。


「……お~い、大丈夫か~?」

「え、え~と……出て大丈夫なのよね?」

「当たり前だろ。そっちの気絶してるヤツを担いで先に戻れ」

「うん、分かった!」


 よし、あとは泥人間とやらを捕まえればミッションコンプリートだな。

 多分通路の先に居るんだろう。


「――って、ちょっと待ったぁ! まさかアンタ、あの泥人間と戦うつもり!?」

「そりゃそうだろ。後ろから襲われたらどうする?」

「だからって、自分から挑むとかバカげてるわ。よく考えて行動しなさい」

「いや、腰に手を当てて当然のように言われてもなぁ。どうせ未知の2階を見つけて「キャーー大発見よーーっ!」とか言いながらワクワクしつつ探索してたんだろ?」

「う……」


 はいビンゴ。


「ま、お前らが先に戻れば問題ないだろ? そうすりゃこの場所が明るみに出るんだから、この時点で泥人間とやらは詰んでるんだよ」

「だったら一緒に脱出すればいいじゃない。何も危険な目に合わなくたって――」

「その間に逃げられるかもしれないだろ? だから今ここで倒しておくのさ」

「……はぁ、分かった。それなら(ひかる)も付いていくわ。これは恩人であるアンタを見捨てたら目覚めが悪いだけであって、決して他意は無いんだからね?」


 腕組みをしてソッポを向いてるところはツンデレっぽいな。

 それによく見りゃ可愛い方――


『お~い、アホな事考えてねぇで、さっさと倒しに行くぞ』


 ――っと、そうだな。

 だが自己紹介くらいはしとくか。


「俺は幅滝成だ、お前は?」

和光(なごみひかる)よ」

「……わこうさん?」



 ドスッ!


「いってぇ! おま、なにも腹パンしなくたって……」

「それ、昔から言われてるから慣れてるけれど、久々に言われてムカついたわ。今度言ったらキンタマ蹴るからね?」

『今のは(じょう)が悪いな』

「へいへい、分かってるよ」


 さて、ふざけるのはここまでにして、泥人間とやらを拝んでやりますか。



 ヒチャ……ヒチャ……ヒチャ……


 ん……気味の悪い足音が聴こえるな?


「い、居るわ……間違いなく近くに。(ひかる)は風魔法が得意なんだけど、あの泥人間には通用しなかったのよ」


 ああ、なるほど。

 上にいた時に風を感じたのは、コイツが風魔法を放ったせいか。


 ヒュッ―――ヌチャチャチャ!


「うげっ、なんだこれ!?」


 足元めがけて泥が飛んできたぞ!?

 辛うじて回避したが、靴を汚して帰ったら姉ちゃんの頭に角が生えるぜ。


「ヤツよ! この泥で思うように動けなくなって、捕まった挙げ句に閉じ込められたのよ!」


 なるほど。このいかにも粘着力のありそうな泥なら並の連中は手こずるだろうな。

 そう考えてるうちに、通路の奥から元凶である泥人間が現れた。


「ゲヒヒヒヒ! また新たな獲物が現れたか。今日は大量じゃあ、ゲヒヒヒヒ!」

「ウゲッ、コイツ人間の言葉喋ってやがる」

「理性のある魔物は会話ができるらしいわよ? コイツと話すのはゴメンだけど」


 泥人間という名に相応(ふさわ)しく、石油をドロッドロにした感じの人形(ひとがた)魔物だ。

 上にいたネズミよりは強そうだし、少しは楽しめそうだな。


「言葉が通じるなら聞きたいんだが、鉄格子の中にあった白骨死体はお前がやったのか?」

「ゲヒヒヒ、そうとも。だが肉を食い散らかしたりという野蛮な真似はしてないぞ? 何日もかけてじっくりと腐らせ、最後には溶けて無くなるのだ。その時の腐臭は格別の香りだ、ゲッヒゲッヒゲッヒィ!」


 どうやら脳ミソが腐ってるようだ。

 なぜここに居るのかは不明だが、早めに消した方が良さげだな。


「は、早く逃げましょうよ、コイツに魔法は効かないもの」

「ゲッヒゲッヒ、そうとも。並の魔法など、この体には通用せぬ。さぁ、おとなしく糧となるのだ!」


 ヌチャチャチャ!


「うわっ、バッチィなくそったれ!」


 靴どころか服にもかかったじゃねぇか!

 こりゃ姉ちゃんのカミナリは回避できそうにねぇな……。


「こんのぉ……ふざけんなよテメェ! 生け捕りにしようと思ったが気が変わった。この場で消し飛ばしてやらぁ!」


 掌を泥人間に向け炎を強くイメージする。

 小規模だが力強く炎が燃え盛る感じにな!


「バ、バカな、なぜ動ける!?」

「その台詞、今朝も聞いたぜクソ野郎! そんなテメェにはコイツをくれてやらぁ! 燃え尽きろ――フレイムボム!」


 ボォォォン!


「ゲーーーーーーッヒ! 消える、消える、このままでは消えてしまうぅぅぅ! ――この体は魔法を通さぬはず、なぜなのだぁぁぁ!」

「なぜかって? そんなに知りたきゃ――」


 ボォォォン!


「ギャァァァァァァ……」

「地獄で一生考えな!」


 追加のフレイムボムにより泥人間は完全に消滅した。

 相手の動きを封じるだけで大した脅威じゃなかったな。


「う、うそ……光たちが全力を出しても勝てなかったのに、こんな簡単に……」

「まぁ気を落とすな。多分相性が悪かったんだろ」

「そ、そうよね。これでも生徒会なんだから、相性が悪かったくらいで気落ちする必要はないわよね、うん」


 ん? 今、生徒会って聴こえたような……


「な、なぁ(なごみ)。もしかして生徒会のメンバーだったりするのか?」

「そうだけど?」


 おぅなんてこったい、まさか自分から生徒会に関わっちまうとは……。


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