1-1 目覚めと出会い
本編入りまーす!
温かな日差しを感じる。
もう二度と感じることが出来ないと思っていた五感の感覚が覚醒していく。
「んっ‥」
ゆっくりと目を開ける。
辺りを見回すと、俺は大木の根本で横になっているようだ。
体に力を込める。
死ぬ間際とは違い、俺の意思に応えた体に安堵し、ゆっくりと起き上がらせる。
そこに広がっていたのは広大な森林地帯だった。
俺は小高い丘の上に居たようで、そこから見える範囲は殆どが木々に埋め尽くされている。
所々に遺跡らしき建造物が見えるが、何かの文明が滅びたあとで森林に呑み込まれたのだろうか。
空を見上げると鳥の他にファンタジー物ではお馴染みのグリフォンも飛んでいる。
こうして見ると、本当に異世界に来たんだなと実感する。
あ、グリフォンがドラゴンに食べられた。
「そういや、俺はこれから何処に向かえば良いんだ?」
あの女神様には世界を救ってくれと言われたが、そもそもの原因がわかっていないらしい。
原因がわからないのでは、何処を目指していいのかもはっきりしない。
尤も、俺が今何処に居るのかもよくわかっていないのだが‥
「どうすりゃいいんだよ、女神様よぉ‥」
「まずは‥動く‥」
「え?」
俺は声のした方を見る。
そこには20cmぐらいの身長に長い銀髪。背中には透明な羽を付けたファンタジーでよく見るような妖精さんがフワフワと浮きながら俺のことをじっと見ていた。
「じっとしてても‥変わらない‥だから‥動く‥」
「その話し方、もしかして女神様?」
「えへん‥」
いや、えへんとか言われても‥
確かに俺が会った女神様をデフォルメしたらこんな感じだろうなと思うけど。
「名前‥教えてなかった‥私は‥女神ガイア‥今は‥精霊イア‥」
ガイアって確か元の世界だと地母神の名前だったろうか?
同一人物なのかわからないけど。
「俺は水無月 慧太郎。えーっと、ガイアとイア、どっちの名前で呼んだらいいんだ?」
「この姿の時は‥イアで‥」
「わかった。改めてよろしくな、イア」
「よろしく‥ケータロ‥」
そう言って俺たちは人差し指と両手で握手をする。
「それで、イアは何で妖精の姿なんだ?」
「それは‥」
話を要約すると、元々この世界は女神ガイアを信仰していたのだが、長い年月の間に信仰が薄れてしまったらしい。
そのため、こちらの世界に干渉する力も弱まってしまい本来の姿では顕現できないとのこと。
しかし、この世界を司る精霊としてなら顕現できたらしく、俺のサポートとして付いてきてくれるようだ。
「そっか、ありがとうな」
「いい‥お願いしたの‥こっち‥でも‥あまり役に‥立てないかも‥」
え、そうなの?
「世界の仕組みは‥教えられる‥でも‥歴史や情勢は‥わからない‥」
基本的に女神の仕事は担当世界の観測であり、世界の淀みを感知したときのみ干渉出来るルールだとか。だから、どういった理由で国が出来たのかとか今の国の情勢などはわからないのだそうだ。
「その辺は現地の人に聞きながらだな。まずは人の居るところを目指そう。」
「それなら‥地図を‥出す‥」
そう言うとイアは目の前の何も無い空間に向かって手を伸ばす。
するとそこにはこの世界の地図らしき映像が投影された。
「今‥私たちがここ‥西に向かえば‥町がある‥」
「歩いて何日かかりそうなんだ?」
「ケータロなら‥三日ぐらい‥」
「なら、まずはそこを目指そう。途中、食糧や水なんかも確保しないとな」
「この森‥食べ物が豊富‥生で食べられるのも‥多い‥」
「よし、そうと決まったら動きますか!まずは西へ!」
「おー‥」
こうして、俺の異世界の人生が始まったのである。