2-2 事情説明
「それで、何があったのかはなしてくれないか?」
「え、えーとですね‥」
隊長さんに詰め寄られたエリアが困った顔をしている。
それはそうだ。神力について黙っていてくれって言ったの俺だもの。
思わず使ったとはいえ、強すぎる力は身を滅ぼすし、この力を手に入れようとしてくるやつが出てくるかもしれない。
そういったことも含めてクーリたちには口止めをしてもらっていたのだ。
「ど、どうしましょう‥」
「兄貴の力は秘密にするって約束しちまったしなぁ‥だけど領主に嘘ついても後が大変だろうし‥」
「どうするの?‥ケータロ‥」
3人が俺を見る。
確かに力については黙っておきたいが、そのせいで友達が困るのは俺としても嫌なんだよな。
ここはとりあえず‥
「すみません、隊長さん。その力の原因は自分なんです」
俺はエリアの肩を軽く叩いたあと、彼女の前に出てそう言った。
「ちょ、ちょっとケータロ!」
エリアが驚いた顔で俺を見てくる。まぁ、任せてくれたまへ。
「ほう、君がかね。詳しく聞かせてもらっても?」
「はい。自分はケータロと言いまして、ずっと森の奥で師匠と暮らしてました。最近になって師匠が亡くなったので、相棒の精霊と町を目指していたんです。そうしたら塔があったので珍しくて登っていったらボスと戦っていた彼らと出会ったんです」
実は冒頭の設定は、昨晩の見張りの時にイアと相談して決めていた。
この世界について疎いのも森の奥に引っ込んでいたからというせいにしようと考えたものだった。
「一緒に戦ってる最中に彼らが倒れてしまいました。そんな彼らを守るために感情が高まったと同時に霊力と魔力の制御が外れて暴走してしまったんです。きっとその力を感じたみたいですね。」
「だが、あれは霊力・魔力共に尋常なものではなかったぞ?」
「師匠は『お前には特殊な素質がある。だから常に冷静でいなさい』と言っていたのですが、結局それを教えられる前になくなってしまいました。今にして思うと今回のことを言っていたのかもしれません。そのおかげでボスは倒せたのですが、どうやら皆さんにご迷惑をお掛けしてしまったみたいですね。ごめんなさい」
そう言って俺は深く頭を下げた。
大筋嘘は言ってないし、まさか自分の力が原因でこんなに人が来るなんて思わなかったしね。
すると‥
「ふーむ、にわかには信じ難い話ではあるが嘘を言ってるようにもなぁ‥ケータロと言ったかな?その時の力はまた使えるのかい?」
「それが‥先程も言いましたがその時は無我夢中で使った力なので。同じことが出来るかと言うと難しいですね」
実際、神力が使えないのは本当だったりする。
あのあと何度か試してみたが、神力を使えるほど霊力も魔力も練られなかったのだ。あの時は極限状態だったし、もう何度かああいう体験をすればコツは掴める気がするんだけどなぁ。
「仕方ない。ならまず君達は冒険者ギルドに行ってギルドマスターへの報告を済ませてくれ。申し訳ないがそのあと領主様への報告も頼む」
「あの、私たちがいきなり行っても領主様はお話を聞いてくださるでしょうか」
確かに、いきなり冒険者が事の顛末話に来ましたなんて言っても会えるかわからないよな。
「それもそうだな。副隊長!」
「はい!ここに!」
そう言って隊から現れたのは20代前半に見える女性だ。
見た目細身な彼女だが、副隊長を任されているのなら腕は確かなのだろう。
「すまんが、彼らに同行して領主様への報告を頼む。我々は一応、塔の確認へと向かう」
「了解しました!」
右手を握り胸に添える姿勢を取った副隊長さん。あれがこの国の敬礼なのかな?
「自己紹介がまだでしたね。テルメア・シュトレーゲルです。以後、お見知りおきを」
何気に初の家名持ちさんだ。
俺たちは兵隊さん達を見送り、副隊長さん、もといテルメアさんを加えて街を目指して歩き始めた。