2-1 朝御飯
「ふわぁ‥いい朝だな。さて、クーリと交代して朝飯でも作るか」
「‥zzz‥」
俺は水無月 慧太郎。
前世で誘拐された娘を助けたまでは良かったが、犯人に刺されて死んでしまったところを異世界の女神ガイアに呼ばれて、彼女が管理する世界へと転生した。
種族はハイヒューマンと呼ばれるかつてこの地にも居たという霊力と魔力の両方の扱いに長けた種族だ。
そして隣で寝てるのは、俺をこの世界に呼び寄せた女神ガイアこと精霊のイア。
女神だか精霊だかわからないよな。
彼女は本来この世界の管理者であり、この世界の人達からは崇拝されていたはずだった。しかし、いつの間にか彼女への信仰心が薄れて力を失ってしまった。
さらにこのままでは世界が滅びてしまうと感じ、残りの力を使って俺を呼び寄せたのだとか。
まぁ、なぜ滅びに向かってるのかは今の彼女では分からないらしい。
俺のサポート役として一緒に地上に降りては来たものの、顕現する力も殆ど残っていなかったので精霊として顕現するのが精一杯だったようだ。
そういえば、精霊って寝る必要が無いって言ってたはずなのに何でこんな熟睡してるんだ?
俺はテントを出る。
そこには焚き火を囲んだ人影が二つあり、話をしながら見張りをしていた。
「あ、兄貴!おはようございます!」
元気に挨拶してきたのは虎族の獣人で、名前はクーリ。
昨日、俺とイアが訪れた塔で出会った冒険者の一人だ。
一緒にボスを倒してから俺のことを兄貴と呼んで慕ってきている。
「お、おはよう、ケータロ。よく眠れた?」
彼女はエリア。冒険者の一人で彼女は天使族だ。今は翼が小さくなって見えないが、戦闘になると現れるのだとか。
彼女はクーリとは逆で、ボスを倒したあとは若干よそよそしい。
俺は二人に軽く挨拶したあと、昨日の夜に打ち合わせた通りに朝飯の用意を始める。
前世ではアウトドアに詳しい友人が居たので、簡単な料理なら作ることができる。
それから少ししていい香りが辺りを漂い始めた頃‥
「んー、いい匂いです♪あ、おはようございます!」
のそのそともう一つのテントから出てきたのはエルフ族のソフィア。
彼女は唯一ボス戦後も態度が変わらなかったので俺としてはありがたい。
朝飯の匂いに上機嫌な彼女の横からは、小さな黒い生き物が顔を出している。
「今朝は焼いたベーコンに野草のスープ、あとは日保ちパンか!早よ食べよ!」
こいつは黒クマのノアと言って俺たちが戦ったボスだったやつだ。
戦ってた最中は力の暴走で意識が無かったらしいが、力を使いきったことで正常に戻り今はソフィアの使い魔となっている。
俺はテントで寝ていたイアを起こしに行き、全員揃ったので朝食が始まる。
「いやぁ、兄貴の作った飯は最高っすね!」
「そんな凝ったもの作ったつもりないんだけど‥」
「本当に美味しいわ。スープも体の芯から温まって」
「「おかわり!」」
「‥私も‥」
そんなこんなで朝食も終わり、俺たちは街へと向かって歩き出した。
道中では時々モンスターも出てきたが、人数も多いこともあってか簡単に倒すこともできた。
お昼を食べしばらくした頃、前方から鎧を来た集団が列を作って歩いてくるのが見えた。
「あれは?」
「あの鎧は領主の兵ですね。何かあったのでしょうか?」
「聞いてみましょう。兵が出てきたと言うことはこの近くで何か問題が起きたのかも」
エリアが先行して列の先頭に居た隊長らしき兵に声をかける。
「すみません。皆様は領主様の兵の方々とお見受けするのですが、何かあったのですか?」
「君は?」
「申し遅れました。私は彼らと冒険者のパーティー組んでいるエリアと申します。右から順にクーリ、ソフィア、ケータロ、イア、ネロです」
紹介された俺たちは軽く会釈をする。すると隊長さんは驚いた様子でこちらを見た。
「待て、君はエリアと言ったか?それにクーリとソフィア。君たちは最近発見された塔の依頼に出向いた者達で合っているか?」
「はい。私たちはギルドの依頼で塔の調査に行って、その帰りです」
「実は我々は君たちの捜索で遣わされたのだ。先日、霊力と魔力の高反応が観測されてな。その中心と思われる塔へ調査へ行った君たちのな。そして、その原因究明の命も受けている」
エリアが申し訳なさそうな顔で俺の方を見る。
俺も、というか兵隊さんたち以外はその原因に気づいている。
間違いなく俺の使った神力だよね、それ。
「領主様は新種のモンスターではないかと危惧されているが、君達は何か知らないかね?」
さーて、どうしよう‥