表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄(ヒーロー)は異世界に現れる  作者: 月猫 りんご
11/88

1-8 絶望からの希望

すっかり暖かく‥いや、暑いわ!

ご近所さんの手伝いで書き物が進まず、この時間に。

「霊術よりも魔術に弱い‥というわけではなさそうだな‥」


あれからソフィアとイアの合成魔術+俺とエリアの魔術付加をした武器での攻撃を繰り返したが黒クマへのダメージはあまり蓄積されていなかった。


「はぁ‥はぁ‥向こうよりもこっちが先に参っちまうぜ‥」

「私たちも限界が近いわね‥」

「魔法を使う精神力も限界だよ~‥」

「保って‥数発‥」


クーリたちの疲労が目に見えて増えている。

それもそうだろう。

霊術は生命力を、魔術は精神力を消費する。

戦闘しながらならその消耗も激しいのは当然なのだ。


「てか、あんたは何でそんなに元気なんだよ‥」

「霊術も魔術も私たちより使ってるわよね?」

「まるでおとぎ話に出てくるハイヒューマンですね」

「‥‥‥」


ハイヒューマンは既に絶滅した種族と言うことなので、俺はとりあえず笑って誤魔化しておく。

イアに至っては目を逸らしてるし。


「とりあえずケータロさんのことは置いておくとして、この後のことを相談しましょう」


ソフィアが目の前の問題に話を戻してくれたのでとりあえず一安心。いや、終わったら追求されるなこれ‥

よし!気持ちを切り替えて目の前の問題解決に全力を尽くそう!


現在わかっているのは、黒クマに対して武器そのものの攻撃及び霊術・魔術による攻撃はほぼ効いておらず、風と炎の合成魔術で多少のダメージが与えられることぐらいだが‥あ、そういえば。


「まだ試してないけど、霊術と魔術の同時攻撃ってどうなんだ?」

「そういえば、まだ試してなかったわね」

「お互いの攻撃が当たらないようにタイミングずらしてたからな。なら、ケータロはやつの後ろに回って魔術付加をした剣で攻撃してくれ。俺は正面からタイミングを合わせて『霊打』を叩き込む!」

「私たちは?」

「エリアたちは後方で精神力を少しでも回復させてくれ。これからは長期戦になるかもしれないからな」

「わかりました!二人ともお気を付けて!」


そう言って女性陣は後方に下がっていく。

武器を構え直した俺とクーリはそれぞれ『魔刃』と『霊打』を付与して黒クマへと突っ込む。

依然、黒クマは反撃をしてくる気配はない。

俺たちの攻撃が同時に奴の脇腹へと当たると・・


「グワォォォォ!!!!」


効いた!

さっきまではどれだけ叩いても切りつけても傷ひとつ負わなかった黒クマだが、今は攻撃の当たったところから血が流れ出している。


「霊術と魔術の同時攻撃。これが奴の攻略法だったんだな」


攻略法さえ判れば後は攻撃あるのみだ。

俺とクーリが再び黒クマに突撃しようとした時に変化が起きた。

今まで攻撃して来なかった黒クマから、強烈な殺気が放たれたのだ。

その殺気に一瞬この場に居た全員が凍りついた。

次の瞬間、黒クマが消えた。

俺が周囲を探ろうとクーリに目を向けた時、奴は俺とクーリの真横に居てその大きな腕を俺たちに向かって振り抜いていた。

響き渡る轟音と衝撃。

気がつくと俺とクーリは部屋の壁に叩きつけられていた。

攻撃される瞬間、俺は練っていた霊力を全て防御に回したおかげで多少の痛みだけで済んでいるが、壁に叩きつけられたクーリは意識が無いのかピクリとも動かない。

俺はふと、顔を上げた。

霊力を使える俺とクーリがこの様なのだ。

魔術主体の三人が同じ攻撃を喰らえばもっと大変なことになる。

顔を上げた先では、先程まで二足歩行だった黒クマが四足でその体を支え、口を大きく開けていた。

口の先では光が集束していく。

感じるのは魔力だが、その密度が半端な量ではない。

まさか!


「やめろーーー!」


そう叫んだ想いは届かず、集束された魔力が大きな光線となってイア達に襲いかかった。

先程叩きつけられた時とは比べ物にならない程の爆音と衝撃が周囲に響き渡る。

今の攻撃で部屋の壁は破壊され、攻撃が通りすぎた痕はポッカリと穴が開いて外が見えている。

土煙が晴れてきた。

俺は彼女たちの無惨な姿を想像していたが、彼女たちが居た場所から青白い光が見える。


「三人とも、無事だったか!」


そこには五体満足の彼女たちが居た。

イアとソフィアがそれぞれ両手を前に出し、エリアは二人の背を支える姿勢だった。

どうやらイアとソフィアで防御魔術を発動し、エリアが魔力を二人に供給していたようだ。

無事だと安心したのも束の間。

三人は全力で魔術を行使した為か、精神力を使い果たしたようでその場に倒れてしまった。

俺は黒クマを警戒しながら、彼女たちの元へ駆け寄る。


「大丈夫か!」

「流石に‥もう限界ね‥」

「精神力を使いすぎて、意識を保ってられないよ~‥」


やはり、あの光線を防ぐのにかなり無茶をしたようだ。

エリアとソフィアは立ち上がる気力も無い。

俺はぐったりしているイアを抱き抱え声をかける。


「大丈夫か、イア」

「私も‥力使いすぎた‥ケータロだけでも‥逃げて‥」


そう言ってイアは気を失ってしまった。

せっかく黒クマを倒せる可能性が見えてきたのに!

ここに来て、俺以外の全員がやられてしまった。

奴は光線を放った反動なのかこちらを警戒したまま動かない今のうちに考えるんだ!


イアは逃げろと言ったが、イアはもちろんのこと、クーリ、エリア、ソフィアの三人を置いていくなんてことはしたくない。

そもそも、あんなスピードで来られては逃げるだなんて不可能だし、遠くに逃げてもあの光線に呑まれれば即死は免れない‥


いや、待てよ?

何であいつは急に目で追えないぐらい速くなって、あんな強力な光線を放ってきたんだ?

霊術と魔術を無効化されるとはいえ、最初から使った方が楽だったろうに。

もしかして、使えなかった?

なぜ?

あれだけ強力な身体能力と光線の源って‥まさか!


俺は右手に握る剣に『霊刃』を付与して黒クマに切りかかる。

先程と同じく霊力は分解されるが、俺が見たかったのはそのあと。霊力の行方だ。


「やっぱり‥」


俺は距離を取り、今見たことを思い返す。

分解された霊力は黒クマの体内への流れていった。

というこは‥


「あいつは霊術も魔術も無効化してた訳じゃない。分解して吸収してたんだ」


そう。黒クマは俺たちの攻撃を吸収していた。

だから吸収した霊力で身体能力を大幅強化したり、吸収した魔力で光線を放ったり出来たと言うわけだ。

イアとソフィアの合成魔術が少しだけ効いていたのは、吸収しきれなかった分がダメージとして与えられていたからだったのだろう。


奴のカラクリは判ったが、どちらにしても奴に通じるのは霊術と魔術の同時攻撃のみ。

今は俺以外の戦力が居ないので、霊術と魔術での付加を同時発動させるしかないか‥

俺は右手の剣に『霊刃』を、左手にエリアが持っていた槍を掴んで『魔刃』を発動させるが‥


「くっ‥霊力と魔力を同時に生成することは出来るけど、流石に霊術と魔術の同時発動まではまだ難しいか‥」


霊力と魔力の生成はボス部屋に来るまでに練習していたのでまだいいが、付加霊術・付加魔術に関してはついさっきぶっつけ本番でやったのだ。

そもそも、左右で付加する行程が違うので、今の俺では処理が難しい。


「左右同時が難しいなら、一つの武器に両方付加するか」


試してみたが、(まだら)模様のように一部が『霊刃』で、一部が『魔刃』という中途半端な状態になってしまった。

これではまた奴に吸収されて強化してしまう。

何か、何か無いのか!

霊力と魔力が一つになるような‥


あれ?そういえばそんな話を何処かでしたよな?

確か、昨日の夜‥


「ハイヒューマンは‥魔力も‥霊力も‥多い人族‥私たちに近い」

「俺はどっちも魔族や霊族並みに力が使えるってことなのかな?というか、神様に近いんだ‥」

「肉体を作るのに‥私の一部‥使ったから‥それに‥魔力と霊力‥混ぜ合わせると‥神力が使える‥」


これだ!

神力という力なら二つの特性を兼ね備えているはず!

俺は早速霊力と魔力を練り、混ぜ合わせる‥が、


「これじゃあさっきと変わらないじゃないか!」


二つの力を混ぜ合わせてみたが、マーブル状にしかならず、これが神力ではないことはすぐにわかる。

考えろ!

まだ足りない何かがあるはずだ。

神力は神様とハイヒューマンにしか使えないのなら、その理由は‥


「霊力と魔力の質か!」


ハイヒューマンは霊力は霊族並みに、魔力は魔族並みに扱える種族だ。

なら、神力はその特性を最大限に活かすことが出来れば使えるはずだ!

さて、決着をつけようか!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ