1-7 冒険者達との共闘
前回のタイトルに番号ふり忘れてました。
「まずは俺たち二人で攻めよう」
俺は剣を構えながらクーリに同意を求める。
「それはいいけど、あんた『霊刃』は使えるのか?」
「『霊刃』?」
「おいおい、『霊刃』も使えないのによくここまで上がってこれたな」
うわ、ものすごい呆れた顔された。
『霊刃』ってクーリが使ってた『霊打』の剣バージョンだろう。
俺は霊力を練って右手に持つ剣に霊力を流す。しかし‥
「それじゃあ『霊打』じゃねぇか。もっと、霊力を鋭利にするんだよ。そうそう。それが『霊刃』だから今の感覚忘れるなよ?」
感覚的には剣の周りに一回り大きな霊力の刃がある感じだ。
軽さは変わらないが、集中していないと形が乱れるので戦闘しながら維持するのはコツがいるかもしれない。
俺とクーリは左右に別れ、同時に攻撃を叩き込む。だが、黒クマは俺たちの攻撃を両腕で受け止めたばかりか、簡単に押し返されてしまった。俺たちの攻撃が当たった所には傷ひとつ付いてはいない。
だけど何だろう?攻撃が当たった瞬間に違和感を感じたのだが‥
「次は私たちが!」
「ん‥全力でいく‥」
ソフィアとイアが後方から魔術を飛ばす。
ソフィアは『ファイヤーボール』を、イアは『ウィンドボール』のようだ。
二つの攻撃は相乗効果で威力を増し、大きな火球となって黒クマを襲う。
しかし‥
「あれでもちょっと焦げただけか‥」
「普通ならあれで一発なんだけどな。マジでどうなってんだよ、あいつ」
クーリも苦い顔をしている。
そりゃあ、あんなの喰らって平然としてるの見せられたらそうなるわ。
「駄目ね。やっぱり私の『ウィンドエッジ』も手応えなし。それとさっきは気がつかなかったけど、攻撃が当たった瞬間、当たった場所だけ『ウィンドエッジ』が解除されたみたい」
爆炎に紛れてエリアが『ウィンドエッジ』を纏った槍で攻撃していたらしい。
彼女の攻撃も効いてはいなかったようだが、さっき感じたの違和感の正体は理解できた。
「てことは、俺たちの『霊刃』や『霊刃』も同じように解除されてたのか」
そう。俺が攻撃したときの違和感はこれだったのだ。
しかも魔術も殆ど無効化されている。
ということは‥
「これ、勝てるのか?」
「いえ、諦めるのはまだ早いわ。今のところソフィアとイアちゃんの魔術なら多少でもダメージは与えられている。ということは無効化するにも限界があるのよ。」
「霊術より魔術への耐性が弱いことも考えられますね。ほら、二人掛かりの付与霊術でも効いていませんでしたし」
確かに、今ある情報ではそれが一番信憑性が高いかもしれない。
だが、俺の中では何かが引っ掛かっていた。
「なら、俺たちは牽制だな。少しでもあいつの気を引くからガンガンやってくれ!」
「せめて、もう一人付与魔術使えたら私も楽なんだけどね。あまり魔力込めすぎると武器がイカれちゃうし‥」
どうやら武器への魔力付与には限界があるらしい。
たぶん霊力も同じなんだろうな。
まてよ?
「エリア。武器への付与魔術の術式ってどんなのなんだ?」
「どんなのって、私の使ってる『ウィンドエッジ』はこうだけど‥」
そう言って槍の穂先を使って床に術式を描いてくれる。
どうやら付与魔術の行程は「属性変換」「付与」の二つ。
それなら「属性変換」をせずに「付与」だけをすれば‥
「よし!出来た!」
「ケータロって実践レベルの魔術も使えるの?!」
エリアが驚いているのも無理はない。
この世界では大抵魔術か霊術どちらかに特化させていて、俺のように両方を戦闘で使うのは珍しいとイアが言っていた。
俺がやったのは『霊刃』の魔術版で、『魔刃』とでも呼ぼうか。
単純に魔力を武器に纏わせて攻撃力を上げただけのものだ。
これならエリアと一緒に攻撃できる。
「クーリ!出来るだけ奴の気を引いて!その隙に私とケータロ、ソフィアとイアちゃんで攻撃を叩き込むから!」
「おうよ!任せろ!」
「どんどんいきます!」
「いいとこ見せる‥」
全員、少し勝機が見えた為か声に活気が出てきた。
だが何故だろう。言い表せられないような不安を先程から感じている。
俺が参戦してから黒クマは攻撃らしい攻撃をしていないからだろうか。
そんな不安を胸の奥に仕舞い込み、俺は黒クマへと走り出した。