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マリア先生

「う~……」


 ロンファンに今日も一緒に夕食をご一緒したい連中がいると話すと、唸り始めた。昨日の事もあり、さすがに今日も師匠のお願いを断りづらいのだろう。さらに言えば、兜を被って顔が見えないクレアに、判断が付かないようだ。ロンファン的にはマリアとミサキは幼く見えセーフなのだろうが、あの殺戮騎士のような風貌のクレアに、何度も視線を送り確認している。兜を脱げよクレア!


「どうする? 嫌なら断ってもいいんだぞ?」

「う~……」


 ロンファンにとっては悩みどころなのだろう。俺としてもここでロンファンが駄目だと言えば、クレア達もそうだがキリア達にも断らなければならない。それをロンファンに伝えてしまったため、なかなか嫌だとは言えないようだ。


「別に無理しなくてもいいんだぞ? あいつらとはシェオールに戻ればいつでも飯食えるんだからさ?」

「う~……でも~……」


 嫌だけど俺にも迷惑を掛けられない。そんな感情が伝わる。ロンファンは純粋で本当に良い子だ。


「でも?」

「…………」


 唇を強く結び、困ったように横目でクレア達を見るロンファンが、可哀想になって来た。クレア達には悪いが、ここは俺から駄目だと言ってあげるしかない。


「分かった。今日は無理だって言ってくる」

「えっ! でも~……」

「もともと今日はロンファン達と一緒にご飯を食べるつもりだったし、ロンファン達も約束はしてないけど、そのつもりでギルドに来たんだろ?」

「そうですけど~……」


 珍しくロンファンは言葉を濁らせた。

 嫌なものは嫌。好きなものは好き。好き嫌いがはっきりしているロンファンがここまで悩む事はなかなか無い。


「アドラもそれでいいだろ?」

「え? 俺は別にどっちでもいい」


 少し眠たそうな目で言うアドラにとっては、どうでもいい話らしい。


「そうか。じゃあ言ってくるから、もうちょっと待っててくれ。俺、まだ着替えもしてないから」

「師匠、次からは着替えてから来てくれよ。がっかりすんだろ」

「わりぃわりぃ。すぐに行ってくるから、もうちょっとだけ待っててくれ」

「は~い」


 クレア達もそうだが、これ以上キリア達も待たせるわけにはいかない。そう思い、早速お断りの報告に向かう事にした。すると、そんな俺を見てロンファンが呼び止めた。


「師匠~」

「ん? どうしたロンファン?」

「私~、今日は一緒に~食べてもいいですよ~……」


 全然声に覇気が無い。ロンファンにとっては断腸の思いなのだろう。


「無理しなくてもいいって。ロンファン嫌なんだろ?」

「はい~……」


 どうしたんだろうか、こんなロンファンは初めて見る。それともロンファンは、俺から離れた後色々と社会勉強をして、付き合いも大事だという事を学んだのかもしれない。何がロンファンをここまで悩ませるのか疑問になった。


「じゃあなんで一緒でもいいんだ? 嫌なんだろ?」

「はい~……でも~、師匠と一緒に~、師匠の町に行ったら~、町の人とも~、仲良くしなくちゃ~駄目ですから~……」


 おお! ロンファンが成長している! ロンファンは今後の事も考えて、今のうちに打ち解けておこうと考えている! ここは師匠として手助けしなければ!


「そうなのか! ロンファン、俺が勝手に勘違いして悪かったな」

「いえ~」


 弟子の成長に感激し、思わずロンファンの頭を撫でた。ロンファンは照れるように俯く。


「よし! じゃあ皆にはオッケーだって言ってくる!」

「はい~」

「どうでもいいけど、早く頼むよ師匠」

「分かってるよ。じゃあすぐ言ってくるわ」


 ロンファンの成長により俺の面子も保て、クレアの願いも叶い、キリア達にも待ってもらった甲斐があった! いや~弟子が成長するって、我が子が成長したと同じくらい嬉しい。俺子供いねぇけど……


 こうして全員で食事をすることが決まると早々と各自に報告し、俺の着替えを待ちマドカを目指して歩き始めた。ちなみに挨拶はマドカに着いてからでもいいと思い、そのままギルドを出た。


 道中クレアとミサキはあれほど会話をしていたがったのに、何を照れてるんだか声を掛けられずにいた。一方のキリアとアリアも、自分から一緒に食事をすると言っておいて、何故だか少し後ろに離れて輪に入れずにいた。ロンファンも一応気を使っているのか俺とは手を繋がず、肩を並べて歩いてくれる。

 唯一俺達の輪に入れたのはマリアだけだった。マリアに対してはロンファンも臆する様子も無く、マリアも緊張した様子を見せない。この面子の中ではマリアが一番堂々としている。


「ねぇ? アドラさんって、インペリアルなんですよね?」

「え? そうだけど?」


 アドラにも臆する事の無いマリアは、俺とアドラの間に入って普通に話し掛ける。アドラもマリアを気にする様子は無く、普通に答える。初対面でも仲良くなれるのはマリアの長所かもしれない。


「じゃあ、魔王とかに会った事あるの?」


 マリアはなんでアドラにそんな質問をしたのだろうか? インペリアルとどういう関係?


「いや。俺魔王とか知らねぇし」


 そりゃそうだよね。魔王が知り合いだったらこんなところにいないよね?


「じゃぁ、悪魔の友達とかっているの?」


 悪魔!? マリアはアドラを何だと思っているのだろうか? これって喧嘩売ってるわけじゃないよね?


「まぁ~友達ってわけじゃないけど、一応いる」


 いるの!? 悪魔の友達いるの!? あれでも、それって悪友って意味だよね? モノホンの悪魔の友達いたら、俺もうアドラと普通に話せる気がしない。


「そうなんだ! その人って強いの?」


 そりゃ強いよ! だって悪魔だよ!? 軍隊くらいはやっつけちゃう奴らだよ?


「う~ん……俺よりは弱いかな?」


 嘘つけ! 絶対悪友の事言ってるよね? アドラは確かに強いけど、悪魔には勝てないよ。


「町とか襲ったりするの?」

「ちょっと待って!」


 マリアがおかしな質問を続ける事にさすがに止めに入った。マリアがアドラをおちょくってるように聞こえ、アドラの機嫌が悪くなる前に止めようと思った。


「何?」

「何じゃないだろ。マリア、お前さっきからなんで変な質問ばっかするんだ? アドラは一応お前より年上なんだぞ?」

「え? ……ごめんなさい」


 初対面の相手でも臆する事の無い性格は悪くは無いが、年上にはそれなりに敬意を払うものだ。マリアなりの距離の縮め方なのだろうが、まだこういう社会常識には疎いようだ。


「いいよ、別に謝らなくても。ただ、なんでアドラにそんな事ばっかり聞くんだ?」


 見た目からアドラがそっち系に見えたから、からかったのかもしれない。それでも限度がある。


「だってインペリアルだって言うから……つい」


 ついって……しかしマリアはインペリアルに詳しいようで、だからあんな質問をしたのだろうと思うと、インペリアルについて聞いてみる事にした。


「なぁマリア」

「何?」

「マリアってインペリアルに詳しいのか?」

「まぁ、本に書いてあるくらいしか知らないけど」

「そうか」


 さすが文学少女。本当に色々と知っている。


「……なぁマリア?」

「何?」

「インペリアルについて教えてくれないか?」

「えっ?」


 マリアならと思ったが、インペリアルを知らない俺に驚いたように声を零した。やはりインペリアルは常識的に知ってきて当たり前の種族らしい。まさかこんな子供にまで驚かれるとは……


「い、いや~実はさ。俺、アドラって言うか、インペリアルって全然知らないんだよね……はははは……」


 これは俺でも分かる。恐らく俺の言っている事は恥ずかしい事なのだろう。しかしマリア相手ならそれほど恥ずかしくない! だってマリアはめっちゃ本読んでるもん! 俺に色々教えてくれるもん!


「そうなのか師匠! 師匠俺の事知らないのか!?」


 なんでアドラが驚いてんだよ! って言うかお前の事は知ってるよ!


「本当ですか~師匠~! アドラは~アドラ・メデクって言うんですよ~」


 それは知ってる! なんでロンファンまで驚いてんの!? 俺達どんだけ一緒にいたの!


「ち、違うよ! 俺が言ってるのはアドラの事じゃなくて、インペリアルの方! おめぇら昨日も一緒に飯食っただろ!」


 そう言うと、アドラはあっそうだった! みたいな顔をし、ロンファンは何かに驚いたような顔をした。意味分かんねぇこの二人。


「マリア、この二人の事は気にしなくて良いから、インペリアルについて教えて?」

「うん。インペリアルってね、簡単に言うと魔族なんだよ」

「魔族!?」


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