【第壱話】出会いと子供の山賊団
神『やっと書けたのね』
作るのがどうしても嫌でして………
神『明日も書くわよ?良いわね?』
分かってますよ。ま、ぼちぼち、……ね?
黎慈「一応中の人喋れたのな。んじゃ、始まり始まり~」
チャーオ☆どもども、オラ立神黎慈!……え?前とテンションがおかしい?まぁそんな事は無いさ。
それより、俺は神様に転生されて恋姫無双の世界にいるんだ。それで、俺が今いるところについてだが────
「…………ここ、森?」
森とは言っても、その葉の色は桃色で風が吹く度に舞い散っており、一種の風物詩のような風景。つまりこれは、森ではない。
つまるところ────
「へへへへへへっ」
「………ん?」
何やら近くで男の声が聞こえるな。しかも五、六人いる感じかな?しかもその内囲まれてる気配もある………。あ、一応異能の鍛練のお陰で周囲の気配とか分かるようになったんだよね。所謂~………周囲探知能力?的な?
まぁそれはそうと、この場合展開を知ってるわけだが………取り敢えずそっちの方に向かおう。
移動して近付いてみるが、どうやら山賊がボロいローブで覆った人を取り囲んでいるみたいだな。
男「ここは俺達の縄張りでなぁ………命が惜しかったら、金目のモンを置いていけ」
賊のリーダらしき男ははそう言って剣を見せびらかし、下卑た表情でローブ姿の人を脅す。
………おっと?あの右手には長い柄の先に湾曲した刃を取り付けた偃月刀。しかもその刃の部分には青龍を模した装飾が施されている。
────青龍偃月刀
関羽が愛用していたとされる武器で、その武器の質は普通の長刀だ。
それを持っているとすると…………
「全く、世も末だな」
そう考えてるうちに、ローブの下から少女の声が聞こえてきた。するとローブを勢い良く脱ぎ捨て、姿を現す。
黒髪がかなり美しく、その服装はまるでセーラー服のような、今時のような服装である。
盗賊達もその美しさに「おぉ~」と見惚れてしまう。まぁそこについてはどうでも良いか。
あ、何かチビの方が気付いたみたいだ……まぁ、簡単に言えばあの少女こそ関羽。
元々は、三国志に出てくる蜀という国の凄腕の将軍。英雄とも称えられているのだ。
まぁ、本当であればひげもじゃの大男なのだが………まぁこの話は後にしよう。丁度名乗りながら賊達を斬り伏せた所みたいだからな。
(………やっぱ強いなぁ。流石は関雲長。三国志でも屈指の強さを誇るな……)
そう俺は思いながら、その光景を後ろの木の上に上って眺めており、その戦闘ぶりを眺めていた。
「…………そろそろ降りてきたらどうだ?気配が漏れているぞ?」
おっと。そんなつもりはなかったが、…………まぁ丁度良い。俺は木から降りて着地し、関羽の近くによる。
黎慈「一応言っておきますが、俺は賊の仲間じゃないですよ?」
関羽「分かっております。殺気が出ていないのが証拠ですし、あの時不意打ちをしてこなかったのでそう判断しましたから」
関羽──もとい関羽さんはそう答える。何か原作より性格が柔らかくなってますなぁ。
黎慈「そうですかい?それはありがたい。あ、俺の名は立神黎慈。まぁ適当に呼んでくだせぇよ」
関羽「私は関羽、字名は雲長。旅をしている者でな………」
黎慈「ほほう。……あ、そうそう。【黒髪の山賊狩り】とは……?」
関羽「あ、あはは……自分で言ってる訳ではないのですが………いつの間にか、ね……」
顔を赤らめ、恥ずかしそうにしながら髪を弄くる。この反応は直で見てみると本当に可愛い。
だってエロゲーのヒロインだぜ?その娘が目の前出てれてるんだぜ?絶対萌えるってばよ……
これをずっと眺めてるのも良いが、関羽さんが「ゴホン!」と咳をついて仕切り直す。
関羽「そ、それで、……立神殿も旅を?」
黎慈「え?あ、まぁ………そっすね。俺も旅でもと………あっそうだ。この近くに村があるので、そこでゆっくり話します?」
関羽「そうですね。そうしましょう」
そうして、俺と関羽さんの二人は、村を目指して歩き始めたのであった。
………腹、減ったなぁ………
◆◇◆◇◆◇
そんなこんなで昼辺り、俺と関羽さんは村の近くまで来たわけだが、その道中、木の下の石に花が摘まれていた。
今通りかかってきた婆さんに聞いてみたところ、賊に襲われた人達の墓と言うことらしい。婆さんが去り際、「お役人様達が、もっとしっかりしていればこんなことにならずにすんだのにねぇ………」と、忌々しそうに言っていたな。
このご時世、役人でも手がつけられないほど賊が増えているのであろう。まぁ、三国志の世界だからこそ平民達の持つ賊への恐怖も一層深いのであろう。
そんなこんなで村の中へと入り、良い宿がないか探索を開始────しようとしたのだが、その時に1羽の鶏が俺の足をつついてきたのだ。
黎慈「いでっいででっ!?えっちょ何!?ちょっいでえっ!?」
関羽「立神殿!?「コケーッ!」うわっと……な、何だ……!?」
鶏が来た方を見てみると、とてつもないものが目に写り、二人は呆気にとられてしまう。
「どけどけどけーーーっ!!鈴々山賊団のお通りなのだーーーーっ!!!」
鶏達の後には、小豚に乗った「鈴」と書かれた赤い旗を持った赤毛の少女を筆頭に、五人の子供が卵を持ちながら笑って走ってきたのだから。
こちらに爆走してきた所で関羽は慌てて避けようとするが、後ろに尻餅をついてこけてしまう。黎慈は鶏につつかれて転けさせられるが、何とか受け身をとって頭の強打を回避する。
黎慈「いででで………」
関羽「だ、大丈夫ですか?」
関羽は心配そうにこちらに近づいて立たせようと手を伸ばす。一応土がついた手を服で拭って手をとり、立ち上がる。あー腰いてぇ………
黎慈「大丈夫ですよ……腰痛いけど」
関羽「全く………あの悪餓鬼共め……」
黎慈「くそっ………鶏共め………次会ったら丸焼きにして関羽さんに献上してやる」
関羽「そ、それは………あまり嬉しくは………」
俺の冗談に苦笑を浮かべずにはいられなかったようだ。………だがあの子、何処かで見たような……?
ま、良いか。取り敢えず食事ができる店でも探そう。
少年探索中………
ここはある店。俺と関羽さんはそこで昼飯の炒飯を食いながら、店主のおばちゃんに話しているところだ。
女将「はっはっは!そりゃあ災難だったねぇ」
関羽「笑い事ではない……」
黎慈「鶏だけは許さん」
店主「あんたのは割と本当に災難だと思うよ……」
黎慈「まぁそれはそうと……あの子供達は?…鈴々山賊団と名乗ってましたけど」
女将「その名の通り、鈴々って子が大将の悪ガキ集団さ。最も、やってることは、畑荒らしたり、牛に悪戯をするってのだけどね……。あっそうそう!この前庄屋様の塀の壁に、バカでっかい庄屋様の顔の落書きをしとったけど、あれは傑作だったねぇ!」
え、何それめちゃめちゃ気になるんすけど。俺知りたいんですけど。というか見てみたかったなぁ………。かなり似てたら恐らく感動してるかもな。
関羽「それにしても、親は何をしているのだ……。山賊気取りの悪餓鬼を放っておくなんて………」
そうぶつくさと愚痴りながら蓮華で掬った炒飯を口に運ぼうとする関羽。まぁそう言うなよ。俺としては元気で良いと思うぞ?……って、あれ?何か女将の顔が曇った……?
女将「───あの子の親は、居ないんだよ」
関羽「…………えっ?」
その言葉を聞いた瞬間、関羽は呆然としてしまう。………まぁ、気の毒だと思うな。割と真面目に。
女将は語る。鈴々の親は賊が押し入った時に殺されたと。そこで村の近くにある山小屋に住んでいた母方の爺さんに引き取られ、育てられていた。
だが、その爺さんも亡くなってしまい、今は独りぼっちだと。
女将「──あの子も根は良いんだよ?今は、羽目を外してるだけ。手下の子の親達も、大目にみてるんだよ………」
話を聞いた関羽は、何処か悲しげな、そして何か共感できるような複雑な表情で沈黙をしていた。
………これ、関羽さんも何かあった系?俺ばあちゃんが死んだときの悲しみなら分かるけど、肉親だからなぁ…………。
おっと、それはそうと………
黎慈「所で女将、少しお願いがあるんですよ……」
女将「え?」
関羽「あ、私もお願いが…………」
そう、これは重要なことである────
◆◇◆◇◆◇
場面は変わって、村の近くの山小屋。
夕方に照らされた山の岩場はとても荒々しく、その上に柵で覆われた山小屋が一軒。
中は随分と賑やかで、子供達の笑い声が聞こえてくる。
茶髪の少女「今日もだいせーこー!」
中は五、六人の子供達が集まって盗んだ卵や野菜を食べており、楽しそうに笑っていた。
やんちゃそうな男の子「そういや、この間描いた庄屋様の絵、消されちまったらしいぜ?」
少女「ケッサクだったのに、もったいないよねー」
幼女「ないよね~!」
「───良いのだ!」
庄屋様の落書きの話で、そんな言葉を発したのは、この山賊団の大将でもある、虎の飾りを着けた赤毛の少女───鈴々だ。
鈴々「今度はもっと、すぅんごいのを描いてやるから、良いのだーー!!」
太い男の子「さっすがおやびん!」
ツインテール少女「リンリンさんぞくだん、さいこー!」
子供達「さいこーーー!!」
子供達の笑い声が小屋の中に響き渡り、楽しい一時が流れる。
───だが、そんな一時こそ短いもの。
夕暮れ時の烏の鳴く声が聞こえ、一人の少女がそれに気づき、「帰らなきゃ」と言って立ち上がる。鈴々は小さく「え…」と呟くが、誰も聞こえてはいない。
そのまま鈴々以外の子達は元気に小屋を出ていき、鈴々に「またあしたー!」と挨拶をする。
鈴々「うむ!また明日、皆で山賊をやるのだー!!」
子供達「またあしたー!!」
子供達を笑顔で見送り、小屋へと戻る。
さっきまでの空間には賑かさも、あの笑顔もなく、真っ暗な空間一つしかない。その空間にただ一人、鈴々しかいない。
少女の表情は小屋の暗さと、夕方の角度でで全く分からない。
「……………明日になれば、また皆と会えるのだ………」
少女はポツリと、そう呟きながら片隅にある「鈴」の旗を取り、それを握りしめる。
「…………………また、明日になれば…………」
その声は、誰にも聞こえない。聞かれもしない。
ただただ、その虚空の中へと消えていった…………
◆◇◆◇◆◇
月が空に出ている中、私────関羽は小屋の中にいる。理由とすれば、昼食の時に食っていた店で暫く寝泊まりをするからだ。条件としては、“店で働く代償として、食事と寝床を用意してもらう”だ。それで、ここで寝泊まりする理由は───
黎慈「まさか、お願いが同じ内容だったとはねぇ………」
関羽「……あ、確かに、偶然とは言え、何だか気が合いそうですね」
──私に声をかけたのは、一緒に店で働くこととなった男───立神という男だ。
実は旅の途中、今日会ったばかりの御仁。どこから見てもただの一般人にしか見えないが、あの体から発せられる力が───
黎慈「俺の気のせいだと思いますが、………さっきから俺の顔、何故に見てるんですか?何か付いてます?」
関羽「───はっ!?あっ、いえっ!な、何でもありません!そっそれより朝も早いですし、寝ましょう!」
私はそう言って横になり、背を向けて目を瞑る。
───私としたことが、人の顔を無意識に凝視してしまった!いくら武人としての興味があるとは言え、人の顔を見てしまうとは………!
関雲長、一生の不覚………!!
私は頬の火照りを感じながら、眠りへとついた────
………
…………
………………
───……紗………愛紗………!───
兄様………?どうしたの?
────賊が襲ってきた……!お前は隠れてろ!
えっ………賊!?
─ここで声を出すな、絶対にだぞ!───
わ、わかった…………!!
(寝床の下に潜り込み、息を押し殺して気配を消す。部屋の外から聞こえる喧騒。そこに兄様の声も聞こえる……。私は必死に兄様の無事を祈り続けた───)
ドシャアッ
───だが、目の前に出たのは、血で濡れた兄様の顔だった────
「………………っ!!!」
私は目を見開き、真っ暗な天井を見て額を触る。汗で濡れているが、冷たく感じている。
─────夢、か………
嫌な夢を見てしまった。こんな夢を見るのは、まだ私があの過去をまだ引きずっているのだろう。
私は自然に右の方を見る。
黎慈「んががぁ~~………………」
花提灯を膨らませ、寝ている立神殿が目に写る。
私はそれを見て、呆れと共にどこから安心できた気がする。
気が軽くなったのだろう、とそう判断し、私は反対の方を向いて目をつむり、再び眠りについた────
黎慈「所で関羽さん。俺と一緒の寝床で良かったのか?」
関羽「ま、まぁ…………。あはは………そっそれより!今は次回予告ですよ!」
黎慈「え?あ、まぁそっすね。次回は鈴々と言う子と会うみたいだが、これが中々まさかの兵で………」
関羽「【第弐話】過去と契り」
黎慈「次回もよろしくな~」