無料(タダ)より高い物はない
勝手に騰蛇されているマーライオン。神罰覿面で神社から叩き出されるマーライオンの使途及び貴族の一部の方々。
お守りも評判で日々品切れが続いた。
太陽信仰の信者が多くなる一方で、マーライオンとの確執はどでかい溝を産んでいる。姉の勝ち誇った顔が脳裏にチラリと浮かぶが、打倒マーライオンなので知らんぷりしている。
そんで私と言えば、孤児院の子供を引き連れて物品回収をしているのであった。
「皆、今日も回収しに行で!ポイントで最近揉めてるみたいやけど、適正なポイントにするんやで!甘めにしたら付け上がるさかいな。相手がポイントで不用品回収を渋るようなら次に行って良いからな!お客は沢山おるさかい足元見られたらあかんで!ほな出発や!!」
子守り役のイザベラを置いて私達は貴族の館へ出発した。
回収は順調に進んだところで貴族風の男に声を掛けられた。
「もしや不用品回収をしているCremaの孤児院の子達かね?」
「はい、孤児院の責任者の留美生です。不用品回収の依頼でしょうか?」
紳士風貴族は
「回収して欲しいのは屋敷なんだが回収出来るだろうか?」
「それはどういう事でしょう?」
「申し訳ない、屋敷を処分したいのだが処分するにもお金が掛かるしね。是非、屋敷ごと回収して欲しいと思ったのだよ。」
でっかい仕事を持ってきた。
「回収後は屋敷全てが孤児院の所有物になりますが宜しいのでしょうか?」
「それで構わないよ。」
『姉ぇ、孤児院の回収で幽霊物件タダで貰えるって!!』
『マジか!?』
『うん、屋敷ごと処分したいって。処分後は屋敷は孤児院の所有物になるから契約交わして良えか?』
『良えで!でも屋敷を綺麗にするんはアンタ等でしや!』
『大人貸してなw』
『はいはい』
念話を切りニコーっと紳士風貴族に
「では見に行きましょか!あ、此方の書類にサインお願いします。」
書類をアイテムバックにしまい、紳士風の貴族の後を付いて行った。
oh…怨念立ち込めている貴族の館を前に
「これは酷いわぁ…」
孤児院の皆も絶句である。
目の前にある豪邸には怨嗟が蠢いて瘴気を撒き散らしていた。
「教会に頼めへんかったん?」
素朴な疑問を尋ねたら
「国家予算ばりに毟り取られるので、無料で手放した方が良いと思いましてね。」
良い笑顔で返された。タダより高い物はないって奴だね。
「スタンプは2個な。」
「えぇ!そこは5個は欲しい。」
「ダメ、不良物件過ぎる!!」
「でも何とかするんでしょ?」
「するけどな!スタンプ1個でも良えねんで!!?」
「ぐっ……3個!」
「ダメやっ!こんな不良債権にポイントは本来なら出えへんねんで!2個!それ以上ガタガタ言うなら1個にしたるで!?」
「……っ分かりました。2個でお願いします。」
ガッカリした顔をする紳士風貴族を無視して私はリサイクル物件を遠目に見て思案する。粗方私で片づけた後にイーリンとジャックに任せるか…でもなぁ…何でやろう、イーリンとジャックも前衛的ヒーラーになってるしなぁ。
スタンプとサインをしてポイントカードを返しといた。ついでにチョコ付きのチラシを渡し、紳士風貴族と解散した。
「おい、あの屋敷を本当にどうにかするのか?」
リオンの言葉に
「するよ、あんた等が住んでる孤児院の幽霊物件やったさかいなぁ。あれも色々と酷かったわぁ。まぁ、目の前の物件よりはマシやけど。」
「物件は一度うちの者で住めるようにはするさかい、リオンはチビ共を連れて室内の商品を見て回って値段付けてや。」
「分かった。」
「一度帰るかぁ~」
私はガキ共を引き連れて孤児院へと戻るのであった。




