ACT9 Welcome, to the new world!
宥子が玄関を開けたらサイエスだった。万が一のことを考えて私が先に玄関を出る。宥子が続いて玄関の扉を潜ってサイエスに来た。
やってきました。サイエス!しかも夜だ。
景色は長閑な街道だった。街だと思ってたのに残念だ。空気が美味いし、動物園の臭いがする。しんみりと私は
「本当に異世界なんだね。」
と言うと宥子が
「疑っていたんかい」
バシッと突っ込みが入った。
「本当に行けるとは思わなかったから」
本音を告げたら宥子にしょっぱい目をされた。解せぬ。まぁ宥子も私をティムしたまま異世界へ来れると思って無かっただろうけどね!
グルっと見回すと街が見えた。宥子に
「あっちに町があるけど、あそこで宿を取れば良いんじゃない?」
提案するも
「無理。セブールに行くと言って出発しているのに、戻ってどうするの。今日は野宿だよ。それに、今のあんたのステータスでは町に入れないと思うよ。明らかに別の国から来ましたって感じの名前だし、私にティムされてる状態だからレベル上げして隠蔽スキル取得しないと」
ガッカリするような答えが返ってきた。まぁ、それも一応想定していたから野宿に思考を切り替えた。
「確かに。アウトドア用品は追加で用意しておいたから、ちょっと街道を外れた場所を探して野宿しようよ。」
宥子がスキルと地図を併用して野宿向きの場所を探している中で私は携帯を開き地球のインターネットに繋がるか試してみた。私の予想通りネットが繋がったので小説の続きを読み漁った。
お気に入りの小説の最新まで読み終わって私は携帯をウエストポーチの中に仕舞った。
とてとてと歩くこと30分。少し開けた場所が見つかった。今日は、そこで野営をすると宥子に言われアイテムボックスでテントなどを出してもらう事にした。
「これ1人用?」
あまり良く分かってない宥子に私は
「3人用。1つは、トイレとして使う。簡易トイレも買ってあるから、それ設置して」
指示を出す。宥子は簡易トイレに目を輝かせウキウキとテント設置を始めた。まぁ、投げるだけなので設置も糞もないんだが……。
テントの周りに薬?を撒いている宥子に
「何してんの?」
と声を掛けると
「魔物や虫よけの薬をまいてるの。貴重な睡眠時間を削りたくない!」
心からの叫びとばかりに鬼の形相をして言い放った。睡眠は大事だよね。寝れる時に寝ないと体力持たないしさ。
「ポーション以外にも売っているんだね」
感心して言えば宥子は歯切れ悪そうに
「あ、うん……そうだね」
と言った。宥子よバレバレだ。どうせポーションと一緒に宥子が便利性を求めて作ったんだろう。まぁ、品質も見て売れそうならどんどん作らせて売っていこう。
アイテムボックスを整理していた宥子が
「ご飯はどうする? 前に渡された一週間の食事がアイテムボックスに残っているんだけど」
「じゃあ、作る必要がないね。じゃあ、それを食べる」
「何にする?」
アイテムボックスの食材項目をタップし、ずらりと並ぶお菓子やジュース、料理の数々。
「私はカレーにするわ。宥子は?」
「私は親子丼」
宥子はカレーと親子丼、サクラちゃんようのジャムパンをアイテムボックスから取出し、折り畳み机の上に乗せていく。
用意が出来たところで手を合わせ二人揃って
「「頂きます!」」
食事を始める。
私は自分のご飯より宥子の隣にいる、ジャムパンを一生懸命袋を溶かして食べるサクラがにメロメロしていた。
一通り食事を済ませ、食後のお茶を用意して今後についての話をすることにした。
「留美生をティムしたことで、サイエスとの時差が3時間になるのか検証する必要があるよね。予定とか大丈夫だったの?」
宥子の問いに
「うーん、特に重要な予定は入ってないから問題ないかな。明日は、狩りをするの?」
戦闘したい、エアガン試したいと表情に出てるのが分かったのか宥子が提案してきた。
「レベル上げる気なんでしょう?この辺りでどんなモンスターが出るか分からないから、無理せず命大事で戦闘するよ。取り敢えず、ステータスの名前、変えた方が良いね。町に入れないし。後、隠蔽も取れるくらいのポイントも稼がないと色々不味いでしょう」
「確かに。ティムされているから、経験値は分配されるのかな?」
「その辺りは要確認かな。今日は、早めに寝て明日に備えよう」
寝るには早すぎる気もするが、初めての異世界での野営。
床についても値付けないだろうと思っていたのだが、私の厳選した拘りマットがあまりにも寝心地が良くて直ぐに夢の中へと旅立った。