副社長はブラック企業にお勤め
私は副社長やのに、何でこんなに働かないとあかんの!?しかも一般社員より給料低いってどんなブラック企業や( ;∀;)
コフレの容器とサコッシュバック(付与としてマジックアイテム仕様)を頑張って作成しているで!
キッチンに立つ事が遠のいて完璧に缶詰になった私。ツラタン。
まぁ、それとは別に炊き出し組の女性メンバーの料理スキルとレパートリーが上がったのでトントンだと思いたい。
アトリエに籠ってたら鬼の形相をした姉が居た。私の首根っこを引っ掴みリビングへ連行していく。
無理やりソファーに座らされ仁王立ちの姉が問うた。
「留美生、私に何か言う事はないか?」
「いきなり何言い出すねん。何もないわ。てか、まだノルマ残ってんねんけど」
ノルマせんとアンタ文句言うやんけ!!グワっと言えば、姉の米神がピクリと動いた。何怒ってんねん??
姉は帳簿を見せて、ある数字をトントンと指で叩いた。
「あんな、この数字が何か分るよな? 白金貨4枚足りんねん。アンナと何度計算してもな。着服出来るのは、あんたしかおらん。もう一度聞くで、身に覚えはないんやな?」
ゲっ速攻バレた。ちょっとずつ返す予定だったから絶対にバレへんと思ってたらあっさりバレた。無念。
「……ちょっと入用で~」
「白金貨4枚いうたら日本円で4千万円相当や! 何がちょっと入用やねん!! 会社の金を私用で使うアホは要らん。ティム解除して日本に送り返すぞ」
私の返事に姉がブチ切れて、胸倉を掴んでギリギリと締め上げる。
「ちょっ…く、くる…し……」
ギブギブっと言うも
「はあ? 今すぐ金を返せ」
胸倉を掴んだままガクガクと前後に揺さぶる姉に、アンナが待ったを掛けた。
「それ以上したら留美生様が死にます。これからという時に、死なれたら企画が頓挫しますよ!」
アンナ、私よりも企画が大事なの!?という言葉は飲み込んだ。絶対にお銭々(おぜぜ)の企画の方が大事って言いそうだから…そしたら私の心はポキってポッキーのように折れちゃう。
アンナの指摘にパッと手を離すと姉。私は地べたに転がりゲホゲホと咽ていた。
「アンナに感謝せーよ。それで何に使ったんかキリキリ吐け!」
姉はドカッとソファーに腰を下ろし、蔑んだ目で私を見やる。
プルプルと震えながら、
「会社のお金勝手に使って済みませんでしたぁー。スラムで炊き出ししてた時に、ストリートチルドレンの集団を見つけてん。レアスキル持っとる子もおったし、リーダ格の子が私の下僕になったから、その勢いで囲いました!」
「ふーん。それで? 白金貨の行方はどうなったん?」
「衣食住提供する為にお屋敷買いました。勿論、曰く付きで叩き売りされたのを値切って買ったんやで。後は、彼らの食費や家具や雑費とかに消えた」
本当に良い人材を無料で手元に置けるって良いよね!
レアスキルは私にも欲しかったんだぁ。
「人間はペットじゃねーんだから無暗に拾ってくるな」
捨ててこいとは言わないまでも、それに近いニュアンスを持っていた。
「うっ……でも、でも! 花令だって後任の人材探してるやん。私だって後任を探してもええと思う!」
「探すのは自由や! で・も・な!! 勝手に会社の金使って良いとは言ってへん。お前がしたんは着服や。日本やったら犯罪で捕まるで」
「……ごめん」
だって給料だって平社員より低いし、花令だって相談せずに買い物してたりするのに!!と悔しさいっぱいで、しくしく泣きだす私。
「今回は青田買いで従業員を雇うための投資ってことで処理したる」
姉の言葉に、私の顔がぱぁ~って明るくなる。
「2度はないからな」
次したら私刑確定だと宣告されたけど、そこは誰かに身代わりになって貰う!!姉の弱みを握ってやるもん。
その後、姉が何を思ったのか、スラム街の土地を買い上げて立て直し作業を行うことになった。
スラム一角が姉の下僕と化し、私が切っ掛けで太陽信仰が急速な勢いで広がっていったらしい。
姉は、知らず知らずの内に一個師団の軍団を得ることになった。




