市場調査で白蛇を拾う
私はイーリンと一緒に市場調査に出かけた。
商品の平均価格は品物に対して高いと見受けられる。しかし、私達が出す商品は豪商、または貴族向けの値段になる。
並みでも庶民には手が出にくいだろう。
「イーリンは、ちょっとお金を出したら良い商品が手に入るけど、買いたい?」
私の疑問に
「レン様に拾って貰うまではそんな余裕はありませんし、低所得者は買えませんね。」
バッサリと言い捨てられた。
「そうだよねぇ、低所得者までは手が回らないしなぁ。」
商品の劣が出ると思うんだからいずれは低所得者もターゲットにしたいと思う。
「化粧品も粗悪で高いし、これなら売れると思うけど知名度が無いからねぇ。貴族層は噂レベルで知れ渡ってるらしいし、冒険者も同様。市民レベルではまだって感じなんだなぁ。」
「それもそうですね。お店の人に留美生印の化粧品って聞いても何それ?でしたし…」
名が売れてないって切ねぇーな。
「じゃあ、今から名前を売りに行くか!」
「名前を売りにですか??」
きょとんとしたイーリン可愛い♡と思いつつ
「そうや!名前を売らんとお客が集まらへん。富裕層なら大丈夫やけど中間になると宣伝せんと客は集まらへんやろう。せやからコレや!」
金箔で留美生印を押した油取り紙を見せた。
勿論、綺麗なパッケージで仕上げてあるで!
パッケージの裏側には●月×日◇◇時より場所△△にてグランドオープン!!と記載した名刺型の油取り紙である。
実はこれ、昔馴染みで同人グッツを作成している業者に頼んだ物である。一個の原価38円と格安で2万個作って貰った品物でもあった。
「これは何ですか!?」
イーリンの質問に
「これは油取り紙や!化粧してても化粧崩れせんで油っぽくなった顔を整えるやつや。一つあげるから使ってみい。」
ぽんと個包装を解いた油取り紙を手渡した。実践で私も油取り紙を使って、イーリンが真似をする。
「まぁ!これは凄いです、留美生様!化粧は取れずに油だけ取れるって素敵です!」
イーリンが目をキラキラさせて私を見てくる。
「これを実地でやりながら配るんやで!」
イーリンと私で2万個捌き切った留美生です。
カフェで一息付きながら
「興味持った客層はやっぱご婦人とイーリンぐらいのお姉さんが多かったなぁ。」
「でも配り切れるとは思いませんでした。このパッケージも綺麗ですし、捨てるのが勿体ないですよ。」
イーリンは油取り紙をほうっとした顔で見ている。
それが凄い安い値段であると言うのは憚れたのであった。
「まぁ、カードケースになるようにデザインしているからなぁ。うちは、自分の名刺……あぁ、これな。これを入れても良えと思うよ。」
自分の名刺をパッケージに入れてみた。
「それは良いですね。名刺って自分の情報を記載してあるんですね。これはどういう時に使うんですか?」
イーリンの疑問に
「これは仕事の時に使うんだよ。相手に簡単に自分の事を知って貰うためにね。イーリンも姉からイーリン用の名刺を作って貰えると思うよ。」
名刺の使い方などを教えた。
「ん?」
足元にスルスルと何かが巻き付いてきた。ツルツルした触感は親近感を覚えた。私はスカートの裾を上げて見てみると
「蛇?」
赤白よりも小ぶりな蛇が巻き付いていた。
イーリンも私の視線の先を見て
「蛇ですね。」
「蛇だねぇ。白いねぇ。」
私は取り敢えずこの小さい蛇を飼うことに決めた。
「お前は今日から白朱ちゃん、な。白蛇は珍しくて幸運を齎すんやで!」
シュルルと腕に巻き付く白朱ちゃんを見て
「そうなんですか?そういえば、赤白さんも紅白さんも白蛇でしたので珍しいとは思いませんでした。」
イーリンの言葉に私は苦笑いをした。
まぁ、白蛇二匹がアレやからなぁ。
「取り敢えず家に帰るかぁ~」
白朱ちゃんを連れて家に帰れば、姉の絶叫と頬ずり、それを嫌がる白朱ちゃんの阿鼻叫喚の図が出来るのであった。




