下僕ワウル爆誕
アンナさんにあげたアイテムボックス付きのウエストポーチが大層気に入ったようで、作れと喚く姉。しかも商品化するという無茶ぶり!
姉に無理難題を言われキレた私は城下町にいる。
外に出たいと煩いティムカルテットも一緒である。紅白と赤白は腕に巻き付いているし、サクラと楽白ちゃんは、フードの中で大人しくしている。
<今日は食べ歩き許したるで>
私に付き合えとばかりにティムカルテットを巻き込んだので食い放題やと言えば
<やったーでぇ!>
<食いまくったる!!>
<久々のお菓子ですのぉ~>
「シャコーシャッシャ」
ティムカルテットは元気に騒いでいる。
<やっぱり屋台の方が良えかなぁ?こっちはそこまで美味いのないし>
キッパリ言えば
<調味料がありますの~>
即座にサクラが突っ込む。
そうやね、お前は甘味が足りんって蜂蜜をぶっかけたもんな。丸々一瓶をサクラ一人で消費した悪夢。
<蜂蜜は出さへんよ。>
先手を打てば
<そのお菓子に合うので大丈夫ですのぉ~>
全くもって反省の色なしだった。
取り合えず私達は露店で美味しそうなのを買い物し、ブラブラと城下町を散策することにした。
手首からニョロっと首を出して私の食べ掛けをガツガツと食べる紅白と(せきはく)の二匹、私の食べる分が無くなるから止めれ。
フードの中でご飯の取り合いをするサクラと楽白ちゃんも大人しくせい。
<留美生、あっちから微弱やけど魔力感じんでぇ>
赤白がにゅうっと首を右に向け路地裏を指した。
<珍しい魔力ですのぉ~>
行く気が無かった私は、サクラの追撃で興味を持った。
<ちょっと探索しに行くか!?>
<<<行く(でぇ)>>>
「キシャー」
ティムカルテットの了承も得たことなので、買い食いしながら私は路地裏へ足を進めた。
路地裏を歩くとそこはスラム街だった。
ニヤニヤと笑う奴等を気を留めずに私はティムカルテットが示した魔力の方向へ歩いていく。
「お嬢ちゃん、此処は通行料がいるんだぜぇ。」
頭の悪い汚いおっさんに私は
「へぇ通行料ねぇ。いくら?」
ニヤァと笑い値段を聞いてみる。性格が悪いというなかれ、こういう相手は最初にボコボコにする事が肝心なのだ。舐められたら終わりの世界である。上下関係をしっかり身に染み込ませないと!!
「有り金全部だ!へっへっへ、良い服も置いていきな。」
下衆な笑みを浮かべるおっさんに
「あんたが私に勝てたらな。私が買ったらお前は私の舎弟になれ。勿論、お前が買ったら全部くれてやる。」
大きな餌をチラつかせた。
下品なおっさんは負ける気が無いのかOKしたので、速攻で急所を潰した。地べたに這いつくばるおっさんに止めを刺すために顔を蹴り上げて、無防備になった股間にスタンガンで止めを刺す。
ビクンビクンと泡吹いて白目を向いたおっさんを叩き起こすべく指輪に込めたウォターボールを起きるまでぶつけてやった!
「えー、起きろ屑野郎、起きなけりゃ去勢だぜヒャッハーっ!!」
村正包丁をクルクル回しウォーターボールとヘッポコヒールで起きろコールをしていたら
「去勢は嫌だーーーー!!」
がばっと起き上がったと同時に私の足の裏に激突して、また気絶しやがった。
「よし、去勢しよう。」
私はサッサとおっさんのズボンを引っこ抜き、パンツを引っこ抜いてる途中でおっさんが起きた。
「キャアアアアアアアアアアアアアアア」
野太いおっさんの悲鳴が辺りに響き渡る。女じゃねーくせにキャーは無いだろう。
「おら、去勢されちまえよ、ん!?」
村正包丁で顔をペチペチしてやったら
「すみません!姐さん!それ仕舞って下さい!!このワウルは姐さんの下僕になるので去勢だけは勘弁してください!!」
チンチラのおっさんは私の下僕として生きるらしい。
そうか、去勢出来なくて残念だ。
「ちっしゃーねぇな。ワウル、この辺で何か面白い出来事とかないのか?」
珍しい魔力の在りかを知っているかもしれないので聞いてみれば
「面白い話っすか?ん~闇市が開かれるぐらいじゃないっすかねぇ。」
「闇市?」
「うっす。奴隷市の事っすよ。その辺の借金持ちとか犯罪奴隷じゃない方の奴っすねぇ。」
「ふ~ん、違法な奴隷ってことか?」
「どうっすかねぇ、でも違法ではないっすよ。奴隷として扱われているんですし、値段が高いぐらいで。前回は、国外の王侯貴族の子息・子女が奴隷だったらしいっす!今回は超激レアなハイエルフっすよ!手に届かないけどチラ見はしたいわぁ~」
うふふ、あはは、と夢見るおっさんワウルにシラっとした目で見たら
「夢ぐらい見させて下さいよぉ…」
ガックリと肩を落とした。でも面白そうな話なので
「それいつ何処でやるん?」
「闇市っすかぁ?三日後の夜22時にマーキュリーホテルの地下です。今は商品準備とか管理で忙しいと思いますよ。」
「お前、良く知ってんなぁ。」
呆れた顔で言えば、気色悪く頬を染め
「姐さん褒めて下さいよ。俺、王都の情報はガッチリ握ってるんですよ!!まぁ、情報の半分はスキルですけどね!」
身体をクネクネさせて自慢しやがった。
「そのスキル面白いなぁ。ユニークスキルか?」
私も欲しいわぁ、と言えば
「そうですよ!まぁ、情報操作から派生したスキルなんで。」
ペラペラと喋ってくれた。キモイがこの男に価値がありそうなので、姉に飼って良いか?確認してダメなら捨てよう。
「ほな、行くで。」
「は?」
「は?やない。今から一緒に来て闇市のことを姉に説明すんのや!つべこべ言わず来い!」
私はワウルのおっさんを連れて宿に帰った。
宿に戻ると姉が怒髪天の勢いでワウルのおっさんに何重もCleaningをかけ風呂へ突っ込んだ。
おっさん汚かったもんな。
「あんな汚いもん連れて帰ってくるなんて!!元居た場所に捨てて来い!」
キーキー怒る姉に
「あのおっさん、とっても面白いスキル取得してるで!情報操作の上位スキルや!ユニークスキルらしいが、何かしらの条件クリアしたら、うち等でも取得できるかもしれへん。それに面白い情報も持っとった!三日後にハイエルフが奴隷として出品される闇市があるねん。うちな手伝いさんが欲しかったんよ。ハイエルフは魔力が多いさかい色々と便利に使えるやろ?」
奴隷が居れば作業も効率良くなるし、見目が良かったら売り子にも出来て一石二鳥や!と言い切れば、姉は渋々と私のいう事を聞いてくれた。
「おー姐さん、サッパリしたわ。」
ボッサボサのおっさんからわさび醤油顔の男が出てきた。これがキャーと乙女の悲鳴を上げてた男か…うん、見た目はそこそこイケてるのに中身は残念な仕上がりなんだな。
「あんた誰?」
不審者を見る眼付をした姉に
「あのワウルおっさんやで。」
と言ったらビックリした顔を姉とアンナさん。二人共酷いなぁ~。
「マジか!?」
「え、詐欺じゃないですか?」
こそこそと二人で話し合いをする二人を余所に私はワウルのおっさんに
「ばっちぃ服は捨てたで。それと予備でこの服あげるから着ろ。身だしなみには注意せえよ。鬼が二人おるからな。んで、今からあの二人に闇市の話とお前の知ってる情報をゲロって貰うからな。」
あの二人には逆らわないように注意を促しておいた。
「おーい、お二人さん。そろそろ良えか??」
現実逃避は止めてくれよと言えば
「あ、闇市の話ですよね。」
「ん、スキルの話もやな。」
二人揃って搾り取りたい最優先情報を提示してきた。
この二人の前にワウルのおっさんを生贄に差し出した私は悪くない。心行くまで情報を吐いて貰おう。
「そのおっさん、私の奴隷にするから逃がさんといてな!!」
「そんな!姐さんの下僕になるだけで、奴隷にはなるとは言ってないぞ!」
「あぁん、そのブラブラ切るぞ!?温情かけて性転換せいへんかっただけでも有難いやろ!?下僕=奴隷や!という事で、二人共絶対にコイツ逃がさんようにしてな。色々と使うんやから!」
ワウルのおっさん置いて、私はさっさと自分のアトリエに引っ込んだ。途中、ワウルのおっさんが抵抗したのか、ドゴっと鈍い音とウォーターボールの詠唱が聞こえたので、姉が水攻めをしているのだろうと思う。




