商売人アンナ
ドレスチーフとドレススーツ、パンプスをセットで各3000ずつ作る事になった。糞うぅ……アンナさんと姉は鬼や!!
ブーブー言いながら私は数日頑張って各3000ずつ作る事が出来た。それはそれは時間と精神力と労力が掛かったのだが、全部良品の結果なので高値で売って欲しいものだ。
私は手慰みとしてアンナさんのウェストポーチと二人分のポーチを作成する事にした。
「う~ん、ポーチは普通の収納で良えかな。アンナさんのウェストポーチは空間拡張魔法付与しておこうっと!アンナさん、あれで私物少ないからなぁ。物欲はあるみたいだけど、姉のお下がりを貰ってばっかりで新しい物が沢山入るようにしてあげたいし。」
いつまでも姉のお下がりは可哀そうである。私服と戦闘服を数着と頼まれてるポーチにアクセサリーとかも入れて置こう。
先ずは空間拡張魔法を施したウェストポーチやな!
アンナさんは綺麗系だからシンプル系多機能型の方が何かと良いと思う。きっと化粧品とかも実演したいって言ってたし、鞄の両脇と前ポケットを付けよう。バックの内側に空間魔法陣を刺繍で刻み込み作業をした。
折角、染色した綺麗な糸なのだ、存分に使ってやろうと思う。
ガガガと縫い始め、形が出来た頃には昼になっていた。
「うぅ~腹減った。」
アトリエから出ると、姉とアンナさんがご飯の用意をしてくれていた。ありがたや~
「今日は何??」
「ごぼうサラダと蟹の味噌汁に鰤の照り焼きです。」
うち等の世界の食に慣れたのか、アンナさんご飯の名前覚えてるのね。
「ティムカルテットにご飯先にあげるわ。」
姉に一言入れて私はティムカルテットの飯を用意した。
<おーい、紅白、赤白、サクラ、楽白ちゃん、ご飯やで!>
飯の一言にワラワラと出てくるティムカルテット。
それぞれの皿に乾パンとマウスを突っ込んでおいた。馬鹿二匹からブーイングがしたような気がするが無視である。
私と姉、アンナさんで食卓を囲み
「「「頂きます」」」
の合図でご飯争奪戦が勃発した。姉よ、食意地が張っているからと大皿で出すのは止めろよ!
「ちょ、そこの部分は私のやで!」
姉の箸を押しのけ鰤の一番美味しい部分を取ろうとするも
「此処が一番美味しいんや!私が食う!」
姉の箸が邪魔をする。その隙にアンナさんの箸が一番美味しい部分を抉り取った。
「「あぁああああああああ!!アンナ(さん)!!!」」
「食卓は戦争なんです。ムグムグ、美味しい。」
あんまりやーん。私も負け時と次に美味しい部分を掻っ攫い、ごぼうサラダも食べつくされる前に自分の分を確保した。
意外と食べるアンナさんに主従は似るっていうけど、食意地張ったとこまで似なくても良えのにと思ったわ。
ほぼアンナさんと姉に食べつくされた鰤の照り焼きとごぼうサラダ。
「もう少し量があっても良いですね。」
蟹の味噌汁を啜りながら量を増やせと要求。
「せやな。これだけやと小腹が空くさかい、デザート出すわ。」
図々しくもデザートを出そうとする姉に
「いやいや、滅茶苦茶食べてたやん。作り置きしてるんは三時のおやつ用やで!デザートは作ってません!」
三時になるまで待てやと言えば、二人して
「「何時食べるの!?今でしょ!」」
どこかの某塾講師の物真似をした。姉は兎も角、アンナさん現実世界に染まり過ぎじゃないか?
二人の食意地に負けた私は
「食べるならシャーベットな。ベリーとレモン、林檎があるから好きなん食べぇ。うちは腹一杯やからパスするわ。」
食べ物の販売について熱く語る二人を見て、げんなりとした。
これも商品の一つにするつもりなんやろうか?
私の趣味丸出しのウェストポーチと私服、戦闘服数着に簡単なアクセサリーを数点作った。
ティムカルテットもアトリエの隅で何かしてたけど、私にはアンナさんの私物を量産するという使命があるのだ。美人は着飾ってなんぼやからな!姉のポーチはついでに作っただけである。ちょっとだけデザインを変えただけで手抜き全快。文句言っても回収すると言えば黙って使うだろう。
「美人は何を着ても美人さんやからなぁ~」
ぬふふと笑う私にティムカルテットがビクゥっと身体を揺らした。失礼な奴等やな。私は不審者でもないんやで!!
ガツガツガツと作った作品を片手に、私はアンナさんと姉の所に戻った。
「二人共おる?」
部屋に戻ると二人共が携帯と睨めっこしていた。アンナさんは冷静に恋愛ゲーム。時々ブハっと笑いが出てる。姉は現実世界での注文数と在庫数などを確認していた。
姉よ、アンナさんに乙女ゲームを紹介するなんて、何て強者なんや!株でもやらせたら面白いのに……
「頼まれ物出来たでぇ!!」
私の声かけにアンナさんと姉の視線が突き刺さる。
反応早いですね。
「先ず花令のポーチな。」
蝶をモチーフにしたポーチに
「留美生、ありがとうな!大事に使うわ♪」
いそいそとポーチに物を詰め込んでいる姉。
「アンナさんはこれな。」
ウェストポーチを手渡し、腰に巻く手順などを教えた。
「ありがとうございます。あの、ポーチは?まだ出来てないのでしょうか?」
ちょっぴりションボリしたアンナさんに
「ウェストポーチの中を見てみぃ。ちゃんと必要そうなの一式揃えてみたで!」
えっへんとドヤ顔で言ったら、私のドヤ顔を無視してウェストポーチを弄り始めた。悲しい。アンナさんはキラキラと目を輝かせ
「このウェストポーチ、アイテムボックスになってますね!凄いです留美生様!!」
中に入れていた私服、戦闘服やアクセサリー一式も外に出し見分するアンナさん。
段々目がギラギラしてきて怖い……
「これ売れますよ!!アイテムボックスのウェストポーチもさることながら、このデザイン性と性能が高いお洒落服!絶対に流行しますって!是非、量産して売りましょう!アクセサリーも素敵です。匠の技って奴ですね。しかも一つ一つに付与魔法が施されてますよ。レン様、これ是非商品にしませんか?」
マシンガンで捲し立てるアンナさんの言葉を余所に
「狡いで!私には普通のウェストポーチやん!アンナだけアイテムボックスにするなんて酷い!てかどうやって作ったん!?」
ギャースと喚きだした姉。私はうんざりしながら
「アイテムボックスの理論は、メディションホールを取得する前に何度も魔法陣見てるからそれをウェストポーチの内側に刺繍して発動するようにしてあるん。魔力が無い人には使用できへんよ。」
「そんなんやったら、私のも最初から作ってぇーな!!」
ギャンギャンと喚きだした姉に
「いやいや、ウェストポーチ作った時ってこっちの世界に来て直ぐのことやん。その時点で私はアイテムボックス作るって理論は頭に無かったで!!こっちの世界に慣れるんで精一杯やったわ!!」
ブーブーと反論し、姉の頭をぶっ叩いた。痛いと呻く姉を余所に、アンナさんは販売の目途などの計算をしだしてカオスな状態になった。
私は一目散に姉を置いて、ティムカルテットを引っ掴みアトリエへ戻ってふて寝したのであった。
私の知らないところでアイテムボックスを作る事が決定されたのである。




