商談の後で
姉とアンナさんの商談は鬼だった。
生産は私なのに、勝手に卸す個数を決めて酷い!!帰り道にブチブチと文句を言ってもスルーされるだけだった。
「人気のお店とかでご飯食いたい。王都なんやからきっと美味しい物があるはずや!!」
あんな無茶ぶりされたら美味しい物でも食べんとやってられんわ!
「王都で人気のお店ですね。それでしたらカンテサンスは如何でしょう?王都でも屈指の人気のお店になります。」
アンナさんの言葉に姉が食い付いた!
「アンナは食べたことあるん?」
姉よ、アンナさんの舌で食事を嗅ぎ分けようとするなよ。
「いえ、私はありません。私は王都ではククルの食堂を利用してますので、安くて美味しいお店ですよ。」
「アンナさんが美味しいって言ったお勧めのお店でご飯食べたいわぁ。」
姉よ、アンナさんの舌を信じてるみたいだ。まぁ、その辺のお店に入ったとしても不味いもんな。
でもたまには自分で作ったご飯より、他人が作ったご飯が食べたいねん!調味料もバッチリあるし、料理に手を加えても良えと思うんや!
「そやね、早速そこに行こか!」
戸惑うアンナさんを急かして、私達はお勧めのお店に行くのであった。
レトロな雰囲気を醸し出すお店ククル食堂!個室もあるらしいので、私達は個室を頼んだ。料金は少し割高になるみたいだが、今後の事も話し合いをしたいからと姉が個室を選んだのである。
今後のことってドワーフの洞窟に行くんとちゃうの!?と思いつつ商品量産で立て籠もれって言われたら泣くで!?
心中複雑な中で各々席に着いた。店員さんに適当にアンナさんが人数分オーダーしたので、私のアイテムボックスよりペットボトルを四本取り出した。三本はお茶、一本はミネラルウォーターである。
「お茶好きなん選んで良えで。」
<ティムカルテットはこっちな。>
ティムカルテットの分はそれぞれのお皿にミネラルウォーターを入れた。
<ふわぁ~やっと一息吐けるわぁ。>
<せやせや、アンナと花令がタッグ組んだら怖いわぁ。あのおっさん涙目やで!>
<どこぞの追い剥ぎみたいでしたのぉ~>
「キシュッシャー」
紅白、赤白、サクラは言いたい放題である。三匹に同意するかのように謎の踊りをする楽白よ、可愛えが何を伝えたいのか分からんよ。
<あんた等の飯は無いで。>
私の私的に四匹はガーンとした顔をした。サクラと楽白は涙をボロボロと流している。
逆に紅白と赤白は
<そんな酷いわぁ!鬼やで!!>
<せや!折角お店に来たんやから何か食べさせてーな!>
ギャンギャンと猛抗議した。
<嫌や。あれだけ食い散らかしたんや。マウス食えるだけマシやと思え!>
食事抜いてもお前等死なんやん。むしろエコを目指して食事抜いたろか?と思った所にアンナさんが
「まぁまぁ、留美生様。王都に来たんですし、後に彼等にも沢山頑張って働いて貰う事になるのですから食事ぐらい大目にみましょう。」
ティムカルテットに助け船を出した。背後からの裏切りに姉を見ると、姉はそっと目を背けた。
絶対に何かあると思うけど怖くて聞けない。私は渋々アンナさんの言う通りにした。
「しゃーない、アンナさんが言うなら今日だけ飯食わしたる。明日からは乾パンとマウスやからな!!」
念の為、釘を刺すのは忘れない。
丁度良い所で食事が配膳されたので、取り皿に四匹分の料理を乗せ皆で
「「「頂きます」」」
「キシャッシャー♪」
<<<頂きます(ですの~)>>>
食事の挨拶を合図にガツガツと食事を開始した。
「ん、特別美味しいってわけじゃないけどセブールの食堂よりは美味いな。でも味が薄いから調味料掛けるわ。」
アイテムボックスから調味料を一式出せば、各々好き勝手に調味料を足していった。やっぱり味が物足りなかったんか。
「この調味料一つで味がこんなに変わるなんて素敵ですわ!絶対に商品化すれば売れますよ!」
商売根性逞しいなぁ(白目)
「あぁーアンナ、それな留美生のお手製やねん。量産するんはちょっと難しいと思うんや?」
せやで!頑張れ姉!
「調理レシピを売れば良いんですよ。他にも留美生様が作ってくれた料理のレシピもお金になりますよ!」
うふふ、と綺麗に笑うアンナさんにヒィっとドン引きする私。それとは逆に目をキラキラさせる姉。金と聞いてテンションが上がる姉よ、私の負担はお前よりも遥かに多いぞ!?
「いやぁ、それは無理があるんとちゃう?うちの手料理なんて底が知れてるって!」
「いえいえ、本当に美味しいですよ。此方は調味料も少ないですし、料理のレパートリーも多くありません。留美生様は小物をお作りになられますから、お皿など作って実演販売なども良いと思いますよ。ねぇ、レン様?」
目が金マークになっている姉は
「せやな。留美生、皿とか作り!その為にディゼニーランドとシーへ行ったんや!これは命令やで!!」
横暴な事を言いよった!
「そうですね、お皿とか実用品も作って頂けたらドワーフの洞窟での素材を多めに留美生様にお譲りするという条件はどうでしょう?」
アンナの提案にうぬぬと考えてしまう。現在姉に素材を取り上げられているし、自由になる素材があれば私も好きな物が作れる。揺れる気持ち。
「今、ストップしている素材を解放するのはどうでしょう、レン様?きっと良いアイディアの商品サンプルが出来ますよ?」
「新作のサンプルかぁ、それなら素材使っても良えわ。うちポーチが欲しいねん。化粧ポーチな!アンナは何が欲しい?」
「私も化粧ポーチが欲しいですね。あ、それとレン様の腰に着けてる鞄も欲しいです。色々と便利そうですし!」
「やって、素材通常通り使っても良えから作ってな。」
「宜しくお願いしますね。」
アンナさんと姉の怒涛の決定に私呆然。マジか?
「それ、うちの負担大きない?」
ボソっと文句言ったら
「「ん?」」
二人に良い笑顔で返されて沈黙した。
食堂を出た頃には私は精神的にボロボロだったのは言うまでも無かった。




