やって来ました王都!! 54
来たぜ、王都!
一旦、宿を取って姉とアンナさんはギルドへ報告してくると出て行った。私とティムカルテットはお留守番である。
姉とアンナさんの顔が般若だったので、ギルド職員よご愁傷様である。
「うち等はどうしよかなぁ。」
王都を探索しても良いが、ティムカルテットを連れて行くという選択肢は無くなるからなぁ。
<なぁ、留美生外に遊びに行こうなぁ。>
紅白の言葉に
<せやなぁ、商品を見に行くのも良えでぇ!>
赤白が便乗し
<そうですのぉ~見に行きたいですぅ~>
サクラがプルプルと身体を震わせ
「キッシャシャー」
触手を上下にフリフリして謎の踊りをする楽白ちゃん。
可愛いんだ!だが、食い漁った事は許してない!
<言っとくけど、食い物は買わへんよ!>
アンタ等がやらかした事まだ赦してないからね!!と釘を刺せば
<そんなん分かってるって!わし等も反省しとるってw>
<せやせや>
<ですのぉ~王都の新作の武器とか見てみたいですの!>
「シャッシュッシャー」
目的はあくまで新作を見に行きたいと主張するティムカルテット。
<でもなぁ、サクラと楽白ちゃんはフードの中でOKとして、馬鹿たれコンビは鞄から抜け出しそうやしなぁ。そしたら姉ちゃんに怒られるんは私やし、やっぱ姉を待つか!>
私の決断に不服申し立てをする馬鹿たれコンビ。
<<何でや!!?勝手にいなくならへん!!わし等は良い子にしてるやないかっ!>>
ブーブーと文句を言う馬鹿たれコンビに
<過去にお前等、脱走しとるやん。>
前科者め!と言えば
<仕方ないやん。急に環境が変わったんやで!?わし等も戸惑いもする!!>
<せや!色々と探検したかったんや!悪気はないで!>
言い訳の嵐。ちっとも反省しとらんな。
<あかんわ。お前等、興味のある物を見つけたら、まっしぐらになって言い付け守らんやろ。ダメダメ!>
ダメですブッブーとゼスチャーしたら
<<だったらわし等はゲージの中に入る!それやったら文句ないやろ!?>>
自らゲージの中に入る宣言をした。珍しい!!そんなに王都を散策したいんか!?いつもならゲージは狭いから嫌やって文句言い放題なのに!
<そこまで言うなら連れてってあげるわ。絶対にゲージから出さへんからね!>
文句言うなよ!?と釘を刺せば良えでぇ、と呑気な返事が返って来た。
「そうと決まれば王都散策や!!」
やっぱり王都!デカいの一言に尽きる。
街の広場には露店が並び、広場を過ぎると商店街になっているのか色々な物を売っている店が並んでいた。
先ずは露店で何か良いのが無いか見て回る事にした。
「おーい、嬢ちゃん一人かい!?良かったら見ていきな!」
店主のおっさんの呼びかけに私は店の品を覗いた。
「古書?」
「おう、色々な本を取り扱っているんだ。これなんかどうだ!?初心者の魔法入門!その恰好だ、お前さん冒険者だろう!?」
小さいのに頑張ってるんだなぁと言われ、これでも三十路のババアなんだが…と複雑な気分になりつつ
「初心者の魔法入門は要らないかなぁ。他のは無いの?魔法だって上級魔法使えるし(姉が)」
もっと良いの出せよと遠回しに言えば
「良いのねぇ、物語とかはどうだい?今、王都で人気の秘められた想いとかはどうだ!?王道のシンデレラストーリーだ!」
恋愛小説を進められた。私、恋愛小説読まないんだよね。ホラーとか推理とかアクション系とかが好きだ。
「読まないから。ん、これ売り物!?」
山積みにされた本とは別に埃を被った本が一冊だけ隅に置かれていた。
「あぁ、これは読める代物じゃないから処分品なんだ。見てみるか?」
ほら、と手渡された本を開くと日本語で書かれた本だった。しかも効率良くレベルを上げる裏ワザとか、取得しておくと便利なスキルなど色々とこの世界について書かれていた。
欲しい。目の前のおっさんには処分品だろうが、私には黄金の本だ!
「要らないなら頂戴。」
「嬢ちゃんは読めるのか?」
「いや、無理。でも解読したいじゃん。」
「何だ、てっきり読めるのかと思った。しかし解読は無理じゃねーか?俺も試してみたけど色々な文字が組み合わさっててサッパリだ。」
「だから燃えるんじゃん。これ頂戴。」
クレクレ攻撃におっさんは
「まぁ、ゴミだしな。銀貨1枚で良いよ。」
金を要求してきた。1000円ではあるが、所詮ゴミだった物だ。是非とも定価で手に入れたい。
「不用品だったんなら銅貨3枚!」
「不用品でも商品だ。銅貨9枚!」
「いやいや、此処で売れるチャンスが来たんだよ。私を逃したら買い手が絶対に現れないから!奮発して銅貨5枚!」
「むっ、銅貨8枚!これ以上はダメだ。」
「分かった。銅貨8枚で買ったぁ!」
私は銅貨8枚を出して本を購入した。おっさんは、値切られるとは思ってなかったらしく苦笑いで
「嬢ちゃん、交渉が上手いねぇ。おじさん、此処まで粘られたのは初めてだよ。」
あっはっはと笑ったのであった。しかし、私が相手だったからこそ銅貨8枚で済んだが、姉かアンナさんだったら、もっと値切られていただろうなぁ。
「アクセサリーとか安く売っている所ってある?」
私の問いにおっさんが
「アクセサリーなら広場の東、丁度パン屋があそこに見えるだろ。あのパン屋の斜め向かいにアクセサリーを売ってるお店があるぞ。」
丁寧に場所を教えてくれた。
私はおっさんの言った、パン屋の方角に足を進め他の店も見て回る事にしたのだった。
アクセサリーの露店に辿り着く前に何件か防具屋と武器屋を見たが、これと言って欲しい物は無かった。性能もティムカルテットを超えるような物もなく、私達が使っている武器以上の物は無いようだ。本格的な武器屋に後で寄ってみよう。魔法付与された防具や武器がみつかるかもしれない。
しかし王都であるだけ品揃えは豊富だったと言っておこう。
おっさんのお勧めのアクセサリー店はそこそこ人気だった。
「すみませーん、こっちのアクセサリーって何か付与されてたりしますか!?」
魔力を感じたので手に取って確認するも魔力が微弱過ぎて何の付与がされているのか、今一つ分からなかった。
売り子のお姉さんが
「あらぁ、付与魔法されているって分かるのね。珍しいわ。」
うふふと笑いながらこっちに来た。
「付与されてるのは、分かるんですけど…何の付与か分からないです。」
遠回しに付与の効果ねーなって言っているのだが
「このアクセサリーには神聖魔法のヒールを付与しているのよ。怪我をしたら少し回復してくれるの。お一つ如何?」
売り込みに来た。
<ヒールの付与魔法ぅ??>
サクラの疑問に
<付与魔法ちゃうやろ。少し回復ってサクラのヒール超えてから付与魔法って言えやww>
<フ・ヨ・マ・ホーwwwwwwww>
鬼畜な事を言う赤白と草を生やす紅白。
追撃とばかりに
<このぉ~モチーフはぁ、犬ですのぉ~??>
サクラが私が気にしていたデザインを指摘した。ブフっと吹きそうになるのを堪え、私は 売り子のお姉さんに
「モチーフは犬ですか?」
と聞いた。
売り子のお姉さんの笑顔が固まり
「モチーフは猫ですよ。犬に見えなくはないですね。」
引き攣った顔で訂正された。なんだこれ犬じゃなくて猫なのか…アクセサリーの技術が低すぎやしないか?
「他にも見てみますね。」
キョロキョロと見回すも何とも微妙なセンスのネックレスやバレッタ等のアクセサリーが置いてあった。
<微妙やな>
<アレで人気のお店って凄いわぁ>
<ルーちゃんの失敗作より酷いですぅ~>
「キシャー」
ティムカルテットにも不人気なアクセサリー。早々に見切りを付けて私は本格的な商店街に足を向けた。




