目指せ!王都!! 52
ここ三日、ティムカルテットが大人しい。いつもこのくらい大人しかったら良いのにと思った私は悪くない。
「なぁ、留美生。あいつらの食事、本当に乾パンとマウスなん?」
「せやで。それ以外はやらん」
「それにしても、随分大人しいと思うんやけど……。もっと泣くか、喚くかしとると思わん?」
「言われてみれば、せやな」
何か企んでるんやないやろうな!?とティムカルテットを見るも普段と特に変わりは無かった。お仕置きが効いたのだろうか?
「むぅ、気のせいかなぁ」
不服そうな姉に私は
「気のせいやろう。反省したそぶりでも見せてるんとちゃう? ま、そんなそぶり見せられても罰は受けて貰うけどな」
ケケケケッと笑ったら、姉は口を噤んだ。
「王都へ行ってセブールの冒険者ギルドの実態を説明しないとあかんし、ドワーフの洞窟はお預けやな」
「そうですね。怠慢と汚職が蔓延っていますから、一掃するにはいい機会ではないでしょうか」
「ええー!! ポーション作ったらドワーフの洞窟って言ったやん。先にドワーフの洞窟や」
私が行きたがったドワーフの洞窟を後回しにするって酷い!!嫌や!行きたいって散々駄々こねたけど二人に却下された!酷い!
「は? 報・連・相って言葉知らんのか!? あ? 今回は、うちらがおらんかったら洒落にならん事態に陥ってたんやで。中央がどれほどの権力を持っとるか知らんけど、先に報告しとかんとあの女の事やから良いように報告されて、うちらのやった事無かったことにされかねんで」
姉の言葉に私はグッと言葉に詰まりガクッと肩を落とした。
本当にドワーフの洞窟に行きたかったんや……だってドワーフは手先が器用やん。色々なアイディアを習得したいねん!技術とか技術とか技術とか!
「ドワーフの洞窟はいつでも行けるんやし、まずは王都でやることやってからでええんとちゃう?」
「う”-、行きたかった」
色々な鉱山と技術が私を呼んでいるんだ!ドワーフの洞窟は現実世界では秋葉と同じぐらいに聖地なんだよ!!!
「目的のメディションホールは取得済みなんだし、鉱物は後ででも採取出来るんだから良いじゃん」
「王都に行けば、珍しい物も手に入ると思いますよ? 物流はセブールの比ではありませんし」
私は、アンナさんの言葉で浮上した。
王都の珍しい物!それは是非手に入れたい。ドワーフの洞窟は残念だが、後で行けるって言ってたし、仕方ないよね!
「サイエスでの移動は、消音の電動スクーターが主になると思うから2つ追加で買おう。後、電池切れした時用に原付も2つ買おうよ」
「確かに、必用やね。原付は可愛いのがええなぁ」
ネットで原付の画像を検索している私に対し、アンナさんは困惑した表情を浮かべている。
そりゃそうか、異世界の産物だもんな。姉よ、私達の移動手段も教えてなかったんか、しかも見せてもいないっぽいな。
実際、アンナさんには一人で乗り熟して貰わないといけなくなる。
「アンナには、まずは自転車で慣れて貰おうと思う。それから、原付免許取得して貰う。後は、サイエスで乗り方のコツとか覚えて貰って王都へ移動やね」
「先程から言われている自転車や原付などは、こちらの世界の乗り物ですか?」
「そうやで。買い物行った時にも見たやろう。アンナは頭ええし、直ぐコツを覚えると思うで」
なんて楽観的な事を思った時期もありました。
アンナさんが超が付くほどの運動音痴だとは思わなかった。
自転車で躓いた。補助輪付けてもコケるって、ある意味天才かもしれない。
完璧な人は居らんって事なんやなぁ、と遠い目で見た。
「アンナは、私か留美生の後ろに乗って貰おう」
「……済みません」
「まあ、誰にでも得手・不得手があるから気にしなさんな」
ガッカリしているアンナさんにポンと肩に手を置いた。
「準備したらサイエスに行くぞぉ!」
ヤフーとばかりに姉の雄叫びにドン引きする私達。王都で手に入る品が楽しみである。




