ACT42 新しい仲間アンナさん
「あーぁ、久しぶりに飲んだわぁ~頭痛いぃ」
二日酔いの私と|契約《契約》カルテットを捕まえて、宥子は風魔法で防音結界を張って〆上げた。
「やめっ、止めて……。気持ち悪い。吐きそう……」
「吐くならビニール袋の中で吐け。さて、昨日は酒盛り楽しかったでしょう。私は、すっごく硬いベッドで寝てたんだけど。言い訳があるなら聞いてあげる。」
ギリギリと胸倉を掴んで上に持ち上げる宥子。私も成人女性。体重は48kgと重いはずなのに、こうして片手で持ち上げることが出来るゴリラに宥子は進化したらしい。
「ギブギブっ!!しし死ぬ。死ぬ」
ベシベシと腕を叩いても微動だにせず
「死ね」
一刀両断で切り捨てられた。
「ごめんなさい。済みません!!もう勝手に物を売り払ったりしません!」
絶叫するように謝る私に、フンッと鼻を鳴らし解放した宥子。鬼婆め!!
ドサッと床に落ちゲホゲホしている私に気遣いってもんを要求する!!
「で、昨日の念話について説明して貰いたいだけど」
「あー……、実は王都から来たAランカーの人らに絡まれたんだよね。いや、ほんとだよ!|契約《契約》カルテットが作った肉球斧を売って欲しいって言われてお前の許可が要るって断ったんだけど、しつこくて」
「それで、今日の昼に商談することに至ったと」
「はい」
「その斧見せてみ?」
私は、メディションホールから可愛らしい肉球の斧を出して宥子に渡した。
爺婆でも使える肉球の斧:攻撃力+25000/会心率+50%/麻痺・毒付与
「何このふざけたチートアイテムは」
「ですよね~。いやぁ、私が製作している時に|契約《契約》カルテットが勝手に作っててさ。ほら、ゴブリンリン襲撃の時に武器で蛇ちゃんズが投擲したの。私の手榴弾と地雷でゴブリンを全滅させたから、武器も壊れたと思っていたんだけど無傷でした。そのAランクパーティーの人が届けてくれたんだよ。」
微妙な顔をする宥子に、アイテム造りが好きなのは私に似たとしても、趣味の悪い造作やネーミングセンスは宥子に似たんだと思う。
色々と諦めた宥子は私と|契約《契約》カルテットを睨み付け
「ドロップアイテム半分渡す約束はなし。1/5に減らす!魔石も使わせない。」
世にも恐ろしい事を言いだした!!
「それだけは、堪忍してーや!そんなんしたら作りたい物が作れんくなるじゃん。」
嫌やーイヤーと泣きわめくも
「お前が、|契約《契約》カルテットの手綱をちゃんと握ってないのが悪い。それとも、化粧品セット(普)(良)(極)の入れ物をそれぞれ1000セットずつ作るか?どっちが良い?」
究極の選択を突き付けてきた。正直どっちも嫌だ。
「……1000セットでお願いします。」
「良し。じゃあ、この話はこれでお終い。それで、他には何に話したの?」
「女性陣には、化粧品とかポーチとか売った。パーティリーダーのおっさんに、装備売りつけた。」
「代金は貰ったんだよね?」
私は代金を貰ったか記憶を辿るが飲んで食べた記憶しか残って無かった。チロっと宥子の顔を見たら般若がおった!!
「はい、アウトォォオ!お前、10000セットな!!嫌なら素材カット&魔石使用禁止だから。|契約《契約》カルテットは、酒・菓子禁止。私が用意するものしか食べちゃダメ。食べたら地球で居残りさせる。」
宥子の宣言に私はガーンッとショックを受け、サクラは涙を流しながら高速ブルブルしてるし、楽白は丸まって動かない。
唯一宥子に抗議している蛇ちゃんズ2匹は、完全放置されていた。
「異論は受付ないからね!誰がご主人様か分かってないみたいだから、これを機にしっかり再認識しような。」
私は宥子とそんなプレイしたくない!!と主張すればボコられた。クスン…。
ちくせう、|契約《契約》カルテットと協力して宥子をギャッフンと言わせたるからなぁ!覚えとけよぉ。
「それでAランクのメンバーと昼食を取りながらの商談だって言ってるけどさ。待ち合わせ場所はどこよ?」
「昼に冒険者ギルドホール前で待ち合わせしてる。」
不機嫌でっせとばかりにブスくれても無視された。
「お前が帰って来なかったから言えなかったんだけど、商業ギルドのアンナさん。あんた、覚えてる?」
「金髪ナイスバディの美人さん?私と宥子を間違えてた人じゃん。何度も突っ込み入れたから、よく覚えてる。」
あの金髪姉ちゃん、絶対に目が悪いと思うわぁ。
「……その、アンナさんが商業ギルドに辞表出して私らに付いて行きたいって言ってるんだよね。アンナさんの仕事ぶりは信用してるけど、信頼はしてない。メリットは、コネクションが多い事と仕事が正確で誠実なところ。デメリットは、私らの事情がバレる事。どうしても一緒に行動するとなると、異世界人だって事は隠しきないし。容子はどうする?」
宥子よ、何故私に聞く?まぁ、私の意見としては
「私みたいに契約したら良いんちゃう?初見やけど、あの人は私らのこと他言せんと思うよ?仮に他言しても誰もそんなぶっ飛んだ話信じないって。」
冒険者ギルドのギルマスとかだったら速攻お断りだが、金髪美人なら良いと思うぞ。感だけど。
「分かった。アンナさんは、魔法で制約を誓って貰うことでパーティーに加える。恐らく、もうこの宿のどこかにいると思うから、ひと先ず会って自宅に来て貰おう。」
「りょ」
宥子は防音魔法を消し、1階の受付でアンナの泊っている部屋を聞いた。
私達を引きつれてアンナの部屋を訪ねると、待っていましたとばかりの歓待を受けた。
「アンナさん、お早う御座います。」
「ヒロコ様、マサコ様、お早う御座います。昨日のお返事でしょうか?」
「はい。マサコもアンナさんなら良いと返事を貰いました。」
「本当ですか!! ありがとう御座います。」
パァッと顔が明るくなる。
「ただし、条件があります。宣誓魔法で制約し誓って頂かないとお連れすることは出来ません。」
天国から地獄に叩き落す宥子に、またかとばかりに目を半眼となった。まぁ、乗り越えないとOK出ないから頑張って~と人事のように私は事の成り行きを見守る。
「え……」
「私達の秘密を口外されては困るんです。何故、最上級と言っても良いほどの胡椒などを期日に納品出来るのか。先日売り払った武器の製作者は誰かなど、様々な機密情報があります。私一人で行動するはずでしたが、成り行きで妹も行動を共にしています。制約の内容は『私達に関するあらゆる情報を漏らさない。裏切らない。絶対服従』です。アンナさんの殺生与奪をかけられるなら、パーティーに加えます。」
葛藤の末の沈黙ののちに、彼女の答えが決まったようだ。
「分かりました。その条件で良いです。」
「では、宣誓魔法を。天照大神よ、我、琴陵宥子はアンナを正式に仲間として迎えることを此処に誓います。彼女を迎えるに辺り3つの制約を天照大神の名の元に制約します。1つ、アンナが琴陵宥子・琴陵容子に関するあらゆる情報を漏らさないこと。1つ、いかなる状況であっても私達を裏切らないこと。1つ、アンナの殺生与奪は琴陵宥子が持ち、アンナが天照大神の意に背いた場合はその命をもってして償うこととする。」
宥子と私、アンナを丸ごと飲み込むくらいの大きな魔法陣が床一面に現れる。英語ではなく、漢字とカタカナ、平仮名が入り混じった陣だ。
宣誓したのが日本の神様だから、こうなったのだろうか?それとも単に宥子のセンスが悪かっただけなのだろうか?私は後者やなと結論付けた。
その光は収束し宥子と私は背中に太陽を思わせる跡が残った。
アンナは左胸を押さえていたので、恐らく丁度心臓の辺りに宣誓魔法の証が刻まれたのだと思う。
エッチする時、大変やろうなぁ。頑張れ姉ちゃん。
「これで、アンナさんは私達の仲間になりました!早速アンナさんを契約します。」
「私をですか!?」
何を驚いてんだろう?宥子の従魔にならんと向こうの世界にも行けないんだから!
「はい、そうしないと色々都合が悪いんですよ。この後、容子の尻ぬぐいをしに冒険者ギルドに行く予定なので詳細は後で説明します。殺生与奪を握ってますので、契約を拒否することは出来ませんよ。」
宥子がアンナに触れると<契約しますか?>の表示が出たので、YESを選択し無事契約が成功しました。
「では、アンナさんのステータスオープン」
宥子よ、金髪姉ちゃんのプライバシー丸裸やでw
「これは?」
「自分で見るのは初めてですか?ギルドカードよりも、より詳細な情報が確認できる魔法です。」
そんな魔法あってたまるかいな!!アンナの|姉ちゃんを説得する為やって、解ってるけどももっと捻れカス!
アンナの姉ちゃんのステータスは凄かった。
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名前:アンナ
種族:人族[サイエス人]
レベル:3
年齢:22歳
体力:5
魔力:151
筋力:7
防御:8
知能:375
速度:1
幸運:412
■装備:白のシャツ・黒のロングスカート・レッドボアの革靴
■スキル:値切りⅧ・交渉ⅡⅢ・魔力操作Ⅰ・生活魔法Ⅴ・魔力操作Ⅰ・風魔法Ⅱ(中級)・並列思考Ⅰ
■ギフト
[鑑定Ⅹ]
■ギフト:メディションホール共有化
■称号:ヒロコの従魔(制約魔法試行中)
■加護:須佐之男命・櫛稲田姫命
■pt統合
所持金:金貨21枚、銀貨8枚、銅貨13枚、青銅貨9枚
商業ギルド貯金:金貨1180枚・銀貨1枚・銅貨6枚・青銅貨6枚
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「知力が凄いね。アンナさん、頭が良いんだな。」
私の初期レベルより更に上なんだねぇ。スゲー。
ぽかんとしてる私を余所に宥子は
「取り敢えず念話Ⅰを取得してもらうね。私の従魔にも慣れて貰わないといけないし。後、隠密と隠蔽も取得して貰う。」
アンナの宥子ちゃんに色々と習得させていた。
<これで良し。アンナさん、皆聞こえてる?軽く自己紹介から始めようか。>
<わいは、赤白や!好物は酒!!旨いの飲ませてや>
<私は、紅白や。宜しゅうな!旨いもんが好きや。マウスは食べ飽きた。違うもん食いたい>
<サクラなの~。甘いのが好きー>
楽白だけは、まだ赤ちゃんなので念話が出来ないので謎の踊りでアンナを歓迎していた。
「アンナです。宜しくお願いします。」
礼儀正しいねぇ。
「アンナさんの歓迎会は後でするとして、宥子そろそろ行かんと時間に遅刻しちゃうよ。」
現実世界に戻るなら部屋も用意しないといけないし、時計にも慣れて貰わなぁと思いつつ、あの粘着ギルドとの約束の時間を宥子に伝えた。
「うわっ、ほんとだ。アンナさん、これから容子が昨日売ったアクセサリーの代金を貰いに行くんで一緒に来てくれますか?」
「あ、はい分かりました。」
「いろいろ戸惑っていると思いますが、承認は時間厳守!詳細は、この面倒くさい商談が終わってから、時間をかけて説明します。」
宥子は赤白ちゃんと紅白ちゃんをショルダーバッグに入れ、サクラと楽白は私のフードに入れて宿を後にした。




