ACT25 子蜘蛛の楽白(らくはく)ちゃんはチートで有能だった
私は宥子のご機嫌を取るために、宥子が大好きなマギ★コレ!!の魔物モチーフにして作ったリュックを贈呈したら機嫌が治ったようだ。
「何これ!!めっちゃ可愛いやん!もしかしてペラアの魔女??欲しかったんだよねぇ。公式グッツでは出てないし、ありがとー!」
リュックを持ってはしゃいでる宥子に
「魔石は売らないでね。私がアクセサリーとして使うから。」
「分かってるよ~」
ボソっと伝えると上の空の返事が返ってきた。
宥子の言質は取ったので、私は獲得した魔石を巾着の袋に移し、それ以外をアイテムボックスに入れた。
楽白ちゃんが、私の周りでウロウロしている。
「どうしたの?」
何か伝えたいみたいで。前足をフリフリしている。分からなねぇ。というか、君いつ居たの?とギョッとして楽白ちゃんを見た。
楽白ちゃんは、私の動揺も一切気にせず、糸をピューっと吐いて私に渡してくれる。
「えっと、これはくれるのかな?」
そう問い掛けると、身体が上下に動いた。どうやら糸を出せるから使ってみろと言いたいらしい。
糸は滑らか且つ頑丈で素晴らしい素材アイテムだ。
「もっと出したり出来る?」
また、上下に身体が動く。肯定らしい。
「糸の強度とかは変えたり出来るのかな?」
体が上下に動く。凄くリズミカルだ。かなりマイペースなのか楽白ちゃんは、みょーんみょーんと飛び跳ねていた。
「この糸があれば、服も鞄も作り放題だぜ!」
ひゃほうっと奇声を上げて喜んでいたら、くいくいっと楽白ちゃんが服の裾を引っ張っていた。
「楽白ちゃんも服作ってあげようか?」
冗談で言ってみたら、びょ~~んっと大ジャンプしている。
そこで、漸く私は楽白ちゃんが糸を出す代わりに服を作って欲しいのだと悟った。強請りが滅茶苦茶可愛い。あぁ~ん、とメロメロしながら私は
「OKだよ!私とお揃いの服にしちゃう?」
速攻でOKを出した。高速で触手を上下に振る楽白ちゃん。可愛いな、おい。
「お揃いが欲しいんだね!OK★私に任せなさい!洋服作るなら糸がいるねぇ。粘々しない、ふわふわした感じで柔らかくて丈夫な糸を出して貰って良い?」
私の言葉に楽白ちゃんはお尻からピューっと糸を出した。出てきた糸を触ると高級なビクーニャのようだ。ビクーニャとは別名神の糸と呼ばれる最高級の糸である。
「手触りが良いねぇ。」
褒めると楽白ちゃんは、謎のダンスを踊り始めた。嬉しかったのかな?
暫くして、楽白ちゃんの糸をクルクルと巻いて玉を作っていく。
12個作ったところで、
「頑張ってくれてありがとね。これお礼だよ。宥子ちゃんには内緒ね!」
と楽白の口の中にポイっとマシュマロを一つ放り込んだ。
楽白ちゃんは、触感が大層気に入ったようで、前足を上下に動かしておねだりしてくる。
くれないと分かると、カサカサと私の肩までよじ登ってきた。
「これ以上は宥子ちゃんが怒るからダメ!でもご飯は豪華にしてあげるね!」
ふわふわ、ご飯、ふわふわ、ご飯と呟やいてそうな楽白ちゃんに悶えつつ、私は楽白ちゃん作の糸玉を手に取ってどんな作品を作ろうかな!?と考えるのであった。
後に楽白ちゃんに糸を宥子に没収され商業ギルドに売りにだそうとする宥子との攻防戦が勃発するのであった。
宥子に楽白の糸玉を取り上げられそうになり必死で死守した。楽白の糸は中古で久世師匠に譲って貰った自動機織り機に糸をセットして布にしていく。鑑定すると蜘蛛地獄の糸で織った布と表示されていた。手触りは上級の絹のようだ。これで服を作れば良い装備品になるのではないだろうか?
私は型紙を起こしていく。向こうの世界で浮かない程度にお洒落で機能的な服にする。というか、楽白が蜘蛛地獄の幼虫だとは思わなかった。ステータスも大分偏っている変わった魔物だと思っていたが、こんな大物だとは。
布の裁断も終わり各パーツごとに保管していく。中級魔法の指南書に描かれていた魔法陣を裏生地に刺繍していく。勿論、糸は楽白の糸である。きちんと魔力を籠めて施された刺繍からは微力な魔力が感じられた。
「完成した時に思い描いていた効果が付与されていれば成功なんだけど…大丈夫かな?」
ミシンに楽白の糸をセットして布を縫い合わせていく。この辺はコスプレ衣装作成と同じ要領で特に問題は発生しなかった。もし針が折れたらどうしようかと思ったがその心配はないようだ。
作業すること4時間と少し、服が完成した。
「よしよし、見た目は完璧に出来上がってるね。あとは鑑定だ!鑑定っと」
完成した服を鑑定すると防刃8000・魔防10000と表示された。何だこの高性能は!?ボタンは普通の市販のボタンを使ったが、魔石を使えばcleaningや温感調整も可能なのではないだろうか?そう考えてしまうと試したくなるのが人間というものでさっそく私はボタン作りをすることにした。
〈何してんの?〉
〈せや、暇や!〉
〈お菓子が食べたいですのぉ。〉
いつの間にか足元に集まっている契約カルテットに
「服を作ってるんだよ。お菓子あげたら宥子にバレて怒られるし駄目。」
邪魔すんなよと注意する。
〈行き詰ってんのとちゃうん?〉
紅白の指摘にうっと唸る。確かにボタンをどうやって作ろうかと思案している。ボタンほどの大きさの魔石を使うとなると宥子に怒られるし、魔石も小さくはない。小さい魔石でボタンを作ることが出来ないかな。
〈美味い物で相談に乗ったるで〉
赤白の言葉に
〈良いアイディア出しますの!クッキーが食べたいですの♪〉
サクラがぽよんぽよんと飛び跳ねる。その横でキシャーキシャーと謎の踊りをする楽白。欲望に塗れたペット達である。
「なら良いアイディアを出してくれたら内緒で蓮の実飴をあげるわ。」
あまりにおいがしないお菓子を提案した。彼等は他のお菓子希望だったようだが、これ以外はあげないぞと無言で見つめると妥協したようだ。
〈具体的にどうしたいんや?〉
赤白の言葉に
「極小の魔石でボタンを作りたいんだけどどうすれば良いのか悩んでる。」
悩んでいた事を告げる。
〈普通の魔石だとダメですの?〉
サクラの疑問に
「ボタンにするのに普通の魔石は勿体ないから困ってるんだよ。宥子も許さんだろうし…」
屑魔石を消費したい旨を伝えた。
〈れ、れびん?何やったっけ?そんな名前のあったやん。それで魔石を砕いて混ぜて作ったらどうや?〉
紅白の言葉に
「れびんって、レジンのことか?」
レジンの作品を紅白に見せてみれば
〈それそれ!最初からspellを組み込んで砕いた魔石入れるだけにしたら出来るのを作れば良えやん。〉
現実的なアイディアをくれた。これは試してみる価値はありそうだ。だがspellを組み込むとなれば新しく型のシリコンから作らねばならない。
「じゃあ試してみるわ。アイディア料な。」
あーん、と口を開けている四匹にぽいぽいと飴玉を放り込む。私はサイエス専用のシリコンモールドを作ることにした。
後にこのアイディアが大成功となりボタンに様々な付与する事が出来るのであった。




