人工精霊の真実と事態収束
上の階にいくほどレベル300前後がゴロゴロとしていた。私達古参の平均レベルは500ぐらいなので難なくクリアできたが敵がウヨウヨと沸くので、流石にキツイものがあった。連戦続きで休憩しようと提案すると姉も乗って来た。珍しい。
「それにしてもキツイわぁ。」
姉の言葉に
「せやね。ボス戦のレベルが気になるわ。先に偵察部隊を出して100階のボスのレベルを確認して貰おうか?」
私は一つの提案を出した。姉は渋ったが
「万が一高レベルやったら勝ち目ないで?偵察だけでもしよーや。」
私の意見に一理あると思ったのか
「じゃあ、あんたが行け。」
と言ってきた。私は嫌やーと文句を言うも言い出しっぺの法則とやらで仕方なしに私とティムクインテット+出汁巻き卵+ハンスとレナで100階を目指すのであった。途中の階に魔物モンスター一揆殲滅操りをトラップとして張り巡らし、100階を目指すのであった。
強行軍で100階に辿り着いた。100階のモンスターはレベル300越えである。ラスボスのレベルが気になる。
「皆、ええか!今回は偵察だけやからボスのレベル確認したら逃げるで!!」
私はボス戦のドアを少し開けてボスを確認した。ボスは10歳前後の子供に羽が生えた可愛い感じだったが、エグイぐらいにレベルがやばかった。レベル1000越えである。正確に言えばレベル1039だ。私達は直ぐに撤退しセーフティスペースにてテントを建て姉に念話した。
<姉ぇえ、階が増すごとにモンスターのレベルが高い。100階でザコのレベル平均が300。ボスに至っては1039やったで!あり得へんわっ。どうするん?>
<ゲェっ何でそんなに高レベルなん!!?>
<知らんわ。100階までは一応一掃しているけどボス戦はちょい待った方が良えで。作戦は取り合えずセーフティスペースでしよや。>
私はそう言って念話を切った。
それから数時間後に姉達が到着した。
先に簡易セーフティスペースを作らせ、サクラにオーロラヒールで回復させる。各班でテントを張って貰い大体のレベルを確認すると250前後まで上がっている。正直レベリングは成功しているので此処で帰りたいのだが、王様命令なためボス戦をどうするか策を練る事にした。
「相手の属性は無属性や。多分レベルからして無詠唱だろうし、HP・MPも削るのは大変やろう。」
私の言葉に引き攣る姉。
「私が作った渾身の人形で死亡しても復活出来るから安心してや。」
私が胸を張ると胡散臭そうな目で
「本当に効果あるんかいな!?」
喧嘩を売って来た。
「あんな不細工な身代わり人形よりも効果あるわ!ちゃんと人体実験済みやっ!!」
私の言葉に姉が激怒して
「誰に使ったんや!!事と次第によっては強制送還させるで!!」
ギャースカと喚く。
「自分に決まってるやん。」
ドヤ顔をしたらショッペー顔をされた。解せぬ。
「…そか…マッドめ……」
「で、本題なんやけど人数分の人形を作らないとあかん。一人最低でも3体は所持して欲しいと思ってんねん。だからな、材料くれ。」
手を出したらギリリと睨まれた。
「高価な材料を使うんやないやろうな!?」
「えーやん、あいつ等の命に比べたら安いやろ。あと以前狩った時のドロップした特大コアも使うさかいな。あれ砕いて人数分用意したるさかい!!」
任せてーやと言えばスゲー葛藤していた。ワロス。
姉は降参とばかりに
「じゃあ、素材を解放するさかいちゃんとお守り作りーや。パチったら給与差し押さえかつぶっ殺すからな!!」
というお言葉を貰った。私そんなに信用ねーのかな?と凹む。
私はアトリエに籠り解放された素材で身代わり人形を大量コピーするのだった。
「回転あげーや!!足止めにもなっとらんで!!」
流石にレベルの差があり過ぎや!!
<楽白、人工精霊を縛ったり!!ガッチガチでお願いな!>
「シューッシャッシャ」
私の言葉に任せろとばかりに人口精霊を縛り上げた。少しではあるが時間を稼げたので私は
「私の魔法陣に魔力を全力で込めやアアアアアアアアアアアアア」
マジックシールドを展開させた。この魔法は3ターンは行動不能にする代物である。代わりにMPをガンガン喰うのであまり使いたくない魔法ランクにランクインしているのだ。
「全力のマジックシールド喰らえやぁあああああああああ」
放たれたマジックシールドに行動不能になった人工精霊に
「ブーストしてやっちまえぇええええええええ」
総攻撃命令を出した。それでもHPは1/4しか削れず、わぁーお!となる。姉のポーションをがぶ飲みして全力マジックシールドからの攻撃を繰り返すのだった。
<姉ぇええええ、お前の手料理と毒薬の出番やでぇええ!!逝ってまえ!>
姉は最前線に出て身動きの取れない人工精霊の口に手料理と毒物を食わせていた。みるみる内にHPが削げバットステータス猛毒が追加されている。鬼やな…瀕死寸前まで追い込んだ時、私はあることに気付いた。
<姉、殺したらあかん!!こいつ人間やっ!!紅唐白ちゃんに使ったあの手錠をはめたれ!それでこっちで奴のバステ解除するわ。>
<分かった。キヨちゃんに着けた代物寄こし。>
<共有に突っ込んでるからそれ使ってや>
<分かったわ。>
姉は共有から取り出した例の腕輪を人工精霊に着けた。私はタイミングを見計らってバステ解除と回復魔法を施した。
「えっらい手古摺ったわ。てかこの子、実態の姿になったで。どうりでブレて見えてたわけか…」
「どういうことなん?」
「あぁ、大人の姿と子供の姿で私には二重に重なって視えててん。だけど実態は子供の方やったわけやな。にしても子供を殺すのは躊躇われるわ。この子の記憶を覗くか…」
私は記憶を覗き見君を取り出して皆に見えるように映像を展開させた。
彼女の過去は悲惨なもので、アーラマンユに浚われて、魔法適正と魔力が高いという事から実験体に選ばれたようだ。他にも何人かの子供が実験され彼女と数名を残して生き残るも人工精霊になって人に戻れない悲しみやアーラマンユに対しての憎しみ、仲間達の死に心を壊して暴走。それがスタンビートに繋がったということである。哀れな運命に討伐隊全員が涙し、姉は鬼の形相で
「アーラマンユ消し炭にして滅ぼしたる。」
と物騒な事を呟いたのであった。
ウゴウゴしている彼女に対し、どうやって対話しようか考える。ふと私はアベル君像があるやん!と思っていそいそとアベル君像を取り出した。
「姉、アベルにアベル君像に降りてきてって言ってーや。アベル君からこの子を説得して貰うわ。今の状態で私等は敵じゃないって言っても聞かへんやろうし…」
「あー…せやね。分かった。ちょい待ち。」
アベルに念話して直ぐにアベル君像にアベルが降りた。
《ふむ、この娘がアーラマンユの犠牲者か…娘よ、私の名前はアベル・フォン・ルテゥ・ミストという。今は精霊の仲介人、勉学の神として祀られている。娘よ、彼等はお前が憎むアーラマンユの者ではない。》
《…… …□…》
《お前の気持ちは理解出来ないわけではない。しかし私の庇護下にある者に手を出すということは魂を消されても文句は言えんぞ。》
《っ!!…▽……□□……っーーー》
《それに彼等はアーラマンユを滅ぼす事が目的だ。お前のような子供達も彼等の手によって救われるようにしよう。気を収めレンに従属せよ。》
《……っ……〇 …》
アベルと彼女での話は終わったようでアベルが姉に
「終わったぞ。私は戻る。」
大人しくなった彼女に姉は彼女をティムしたのであった。
各階のドロップアイテムを回収し、ダンジョンを脱出した頃には彼等の平均レベルは350前後となっていた。本当に育て過ぎである。またアーラマンユのした所業を王様に報告する事になるので先ぶれを出しておく。こうしてスタンビートは収束したのであった。




