逃げてきた召喚者
姉がスコッティ領に乗り込んでいる間にパナコッタ領から逃げてきた姉弟がいた。
身形がボロボロだった為、不審者とばかりに私の前に突き出された二人は、半泣きになっていた。
「あー、うん、この方々は何かな?」
脳筋になった町民に私は溜息を吐きそうになる。
「不審者だ!馬鹿王子達の手下に違いない!」
リオン以外は死ね気質の町民。
私はお縄になっている姉弟に
「手荒な真似をして彼等が悪かったね。私は留美生。一応、期間限定のこの町のまとめ役的存在になるかな。君達は何処から来たの?」
話を聞く事にした。
姉弟は
「私はカスミと申します。」
「俺はサスケだ。」
「私達はパナコッタ領から逃げてきました。パナコッタ領は領民はおらず全員が奴隷なのです。私とサスケは奴隷だったのですが、隣のロット領では太陽神を崇めており、神の恩恵を受けていると評判になっています。動けた私達だけ逃がせて貰えたんです。どうかお願いします、仲間を助けて下さい!!」
「お願いします!」
必死でお願いしてくる姉弟に私はラッキーと思った。
それにステータスを確認したらあの姉弟は召喚者だった。きっと勇者召喚を期待して失敗して売られたのだろう。
隠密のスキルを持っているが、運も平均、魔法の才能なし、唯一暗殺者のスキルがあるのみだった。鍛えもされてないからレベルは20前後と低い。フードキャンプに突っ込んで、最低でもレベル200ぐらいにはなって欲しい。リオンの護衛に付けるのも良いだろう。
「仲間を助ける云々はリオン殿下次第やけど、あんた等を雇う事は出来るで。」
私の言葉に目をキラキラさせた二人に
「先ずは二人とも足場を作った方が良えやろう。一緒に執務室に来てや。手続きするわ。」
私は彼等を執務室に案内した。
執務室にて、私と姉弟だけになったのを見計らって私は防音魔法をかけた。
こっから先はサイエスの人間を交えたくないからなぁ。
アイテムボックスからコーラと煎餅を出して二人に振る舞う。目が懐かしいって言ってますな。
「じゃあ、邪魔者は居らへんしアンタ等は召喚者やな?どっから召喚されたん??」
私の質問にビックリする二人。
「あぁ、うちは違うけど姉が召喚者やから話して欲しいんや。」
話してーな、と催促すれば姉カスミが
「え、あ…はい、私は日本の東京で弟のサスケと一緒に召喚されました。勇者召喚だったらしいのですが、欠陥品だったらしく奴隷として売られパナコッタ領で戦が始まるので無理矢理参戦させられる所だったんです。弟は私に巻き込まれた形で一緒に召喚されたんです…」
戸惑いながら自身の生い立ちを説明し始めた。
「そうか、いつぐらいに召喚されたん?」
「8年前になります。」
「地球では何年に召喚されたか覚えとる?」
「えっと…1970年ぐらいだったと思いますけど…」
カスミの答えにバブル全盛期じゃん、と思いつつも私は彼等に確認をしてみる。
「二人共…地球に帰りたいか?出来るかどうかじゃなくてな。」
私の言葉に二人して
「「帰りたい(です!)」」
帰還したいの一択であった。
まぁ…それが普通なんやろうけど事情がなぁ、と思いつつも説明する事にした。
「今の地球は2019年やねん。で、地球に帰還出来てもアンタ等二人は死亡案件になっとるわ。それでも地球に戻りたいなら姉に掛け合ってみたげる。それまでは私の部下になるけど、どうする?」
「「お願いします。」」
土下座の勢いでお願いしてくる姉弟に私は雇用契約をする事になった。
姉に報告した時、ゲスい顔をしていてビビる事になる少し前の話である。




