大精霊の像を作ろう
元勇者(屑アホ)が身の丈に合わない願い事をマーライオンにしたせいで世界滅亡カウントダウンになっていた事を知った、留美生です。
元凶のマーライオン死ねば良えのに!!
糞なフラグ乱立させんなやと文句が言いたい私です。
姉が
「さて、ここで1つ提案なんやけど。お二方の力で帝国を順に巡って地力を回復させて貰いたいねん。ああ、先に言っとくで。地力を回復した場所は、精霊に手が出せんように結界を張る。精霊が傷つけられることも、奪うことも出来ん。もし、そんな愚行をやからす輩は天罰食らうように細工するから。留美生、神社に精霊信仰のための像を用意してくれ。街や村を解放することで、領土が広がる。精霊を酷使しなければ戦えんなら、結果的に相手はじり貧やろう。どっちの馬鹿王子がやってるのかは知らんが、2人を叩くのには丁度良い。全ての領土を解放した時に、国の中枢にでっかい像を立ててデカい結界を張ればええんとちゃう? 精霊の住処も新たに出来るし、精霊たちの駆け込み場にもなるやろう」
大胆にも大精霊相手に提案をした。
見えない空間から殺気がゴゴゴゴゴゴとしていて精霊っているんだーって感じになった。
姉が精霊と何を話しているかさっぱり分からないが
「言葉尻はそうなるな。今すぐどうこう出来るだけの力が無い以上は、長期戦は覚悟して貰わんと今以上の同胞が死ぬと思う。逆に餌をチラつかせた方が、食いつくやろう」
姉の言葉を聞いて、私はニヤっと笑う。何と素晴らしきかな!これぞ飛んで火に居る夏の虫作戦だ。
「ワウルを使って噂を振りまくか。『馬鹿王子たちのせいで精霊に顰蹙を買ってしまった。殿下が、囚われた精霊たちの解放にも尽力している。解放された土地は、鮮やかな緑にあふれる』とでも噂を流したら、勝手に自爆しそうやね」
馬鹿共のせいで破滅の一途を辿っていると触れ回ってリオンを立てる事が出来る良いネタだ。
リオンや私の手を汚さずに暴徒化した民衆に殺されたら良えねん。
「せやね。今は出来んけど、リオンを王座に据える気満々やからな。仲間集めもしなあかんし、精霊解放も同時に行えば殿下の名声も高くなる。精霊への信仰も増えるやろう。信仰は大事やで。力の源になるからな。それは、アンディーン様もグノーム様も同じやろう?」
私には見えないので、姉の視線の先を見つめておく。ただのポーズだけど何か?
姉よ、カクーン、カクーンとするのは止めてくれ。一人コントやで!
「留美生、アンディーン様とグノーム様の像を作ってくれ。小さくて構わん」
「ええけど、私見えんねんけど」
像を作るんのは良えけどな、見えへんのにどうやって像を作れっていうねん!
姉は私の言葉に少し考えて、ピコーンと手をポンとして良い事を思いついたとばかりに、スマートフォンのカメラを起動して2人に向けて写真に取っている。
「……発行体が2つ。意識的に人に姿を見せることは出来ませんか?」
取れた写真には発行体が二つと残念な仕様だった。
姉は大精霊と言葉を躱し連写してたら撮れたようだ。
「…………心霊写真っぽくなった」
姉のスマホを覗くと、ガチな心霊写真が出来ていた。
周囲に漂う光は、オーブみたいで何か怖い。
キモイなという言葉を引っ込め、私はとても複雑な顔をした。
「アンディーン様とグノーム様、ご協力ありがとう御座います。留美生、この写メ送るからそれを元に像を作って」
「了解。出来たらどうしたら良いん?」
「サクラを通じて、満足いく像かチェックして貰ってから設置やね。サクラもお願いね」
<はいなのです!>
にゅーんと手を挙げるように触手を動かしているサクラ。
可愛いので後でチョコをあげようと思う。頑張って仕事をしてね。
「じゃあ、像が出来て奉納したら地力の回復をお願いします」
姉の仕草で大精霊から了承を貰ったんやろうと確信した。また姉はリオンに向かって
「殿下には、書類仕事もこれから回していくからアベルの指導と並行してやれよ」
「マジかよ……」
仕事を押し付ける宣言をしている。絶望の二文字を背負うリオンよ、王になればもっと膨大な仕事が待っているのだから頑張れ!!
私は絶対に手助けせんからな!
マーライオン消滅からサイエスを救っちゃうぞ的な方向に話が向かってしまったのは大誤算だ。
今から逃げたいと思うも、あの邪神を消すだけでは気分が収まらない!自由を縛って牢獄に閉じ込めて、牢獄から脱出出来た瞬間に消滅する絶望を味合わせたいぐらいだ。
屑邪神をどう料理するからこれからの楽しみにしておこう。
召喚者が屑そうなので、私は屑召喚者を元の世界よりもサイエスのエネルギーとして奪取しようと思う。姉なら地球に帰還させると考えるんやろうなぁ。
それはさておき、姉には高級素材をたんまり請求してやった。紅唐白の脱皮した皮は当然の如く私が使うので持って行ったら姉に泣かれた。面倒臭い奴である。
何回も、何回も、何回も、リテイクを出されてついに爆発した私は姉に念話した。
<姉、ちょっとええか?>
<何よ>
<像のことなんやけど、アトリエに来てくれ>
<念話で話せばええやん>
<ええから、来て!>
やっと来た姉は私達を見て
「何かトラブルでもあったんか?」
「いや、取敢えずサンプルを木で作って見たんやけど全然納得してくれんのや」
いくつも作られた木彫りの像。
「なあ、微妙に違うくね? これが、一番似てると思うんやけど」
写メそっくりの2体の像を指さしたら、姉に残念そうな顔をされた。何故か哀れまれてる。
サクラを介してあれこれ注文されて作った作品がゴロゴロと、足元に転がっている。
「サクラが通訳におるやん。何で私を呼ぶんよ」
「あんたの写メを見て作ったのに、全然違うって言うんやもん」
良え加減妥協しろよ!という私の主張に姉は溜息を吐いた。
「いう通りに作ってみたら?」
「言われた通りに作っても、ダメ出し食らうんやもん」
写真通りに作ったの何かそっくりやん!
見栄か?そんな疑念を持った私に姉は適当な像を手に取って
「これなんかアンディーン様に似てると思いますよ。グノーム様を彷彿させる像ですね」
ザッと見た中で、グラマラスかつ妖艶な笑みを浮かべるアンディーンと筋肉モリモリなマッチョのグノームを指さした。
「アンディーン様、誰が見ても妖艶な美女って感じですよ。グノーム様のイケメンが再現されていると思いますけど」
写真とは全然似てない作品を見て、絶対に見栄だと思った。口に出したら藪蛇になるだろうから口を噤んでおく。
「留美生、この2体で像を作って」
「ありがとー。やっとこれで像作りに一区切り出来るわ」
余った像はリサイクルすれば良えしなー。木彫りの根付にしたら良えやろうし、大精霊に家紋みたいなのがあれば使いたいわぁ。
その話は追々姉から大精霊に通して貰おう。
こうして大精霊の詐欺像が完成するのであった。




