雨ごいの儀式
昼夜問わず突貫工事で建設した神社は10日で建設出来た。落成祝いも終わり、雨ごいの儀式の準備に入る。
「雨ごいの下準備も整っているし、明日は姉と紅唐白ちゃんに雨ごいして貰うからな。」
ご飯を食べてる一人と一匹に私は激励の言葉を投げかけた。
「任せとき!」
紅唐白ちゃんを撫でながら満面な笑みを擦る姉に本当に大丈夫か?と思ってしまう。
ここ一番で転ぶ奴やからなぁ…
私は出汁巻き卵にご飯を食べさせながら
「殿下♡も頑張って目立って貰うからな。」
リオンとゲルドのおっさんに向けてニヤって笑えば嫌な顔をされた。解せぬ。
「明日は雨ごいの儀式やさかい、以前に配った衣装を着て挑むで!殿下は旗本やさかい、一番所作を見られるから気を付けぇよ。」
注意を促し、私はご飯を食べる。
大丈夫だと思うが失敗したらリオンへの信頼は地の底へ失墜するだろう。
この後、内乱に参加する為の足掛かりが無くなってしまうので是非とも頑張って欲しい物である。
ギラギラと太陽が眩しいですね。
こんにちは、巫女衣装にチェンジした留美生です。
神楽殿の上座に特製の衣装を身に纏った姉と紅唐白ちゃん、リオンを据えて粛々と雨ごいの儀式が始まりましたが、何か?
見栄だけの為に神楽舞をしていますが?
舞を舞っている私を尻目に姉は頑張って紅唐白ちゃんに雨を降らせるように頑張っているが、紅唐白ちゃんは雨を降らせる素振りを見せない。
姉よ、紅唐白ちゃんはポンコツ神使なのではないだろうか?
姉が上げる祝詞の合間に食べ物の名前をツラツラと流すのは止めて欲しい、本気で!!
笑いで踊りどころじゃなくなるじゃないか!!
紅唐白ちゃんの好物がヒットしたのか、紅唐白ちゃんが何やらやる気を出したようだ。
姉の傍からスルっと離れ天へ上昇を始めた。
私が作ったアクセサリーが綺麗に紅唐白ちゃんを目で立たせている。
幻想的な部分を見たら、やっぱり紅唐白ちゃんは神使なんだなぁ…って思うが、姉にべったりな普段を見ているのでショッパイ気持ちになった。
私は山場だと思い、祝詞を必死に上げ続けた。
紅唐白ちゃんの身体から膨大な魔力が放たれ、町全体を覆う。
雨雲がどこからともなく集まり町に恵みの雨を降らせた。
紅唐白ちゃんは、雨を降らせた事で姉の傍に戻り、私は舞を終えた。
周囲は雨に歓声の声を上げ盛り上がっている。
「太陽神天照大御神様の力の一端を具現させる事が出来たのは、ひとえにリオン・フォン・アトラマント殿下と神の御使いである紅唐白様、レン様の助力のお蔭です。」
錫杖を掲げ
「人の子よ、崇めよ、称えよ、我が神である天照大御神様を!恵の雨を!この痩せた大地が蘇る約束の地である事を信じよ!」
私は声を上げプロパガンダ並みの演説を流すのであった。
天照大御神様やリオン、姉や紅唐白ちゃんを崇める称える声が後を絶たない。
私は止めとばかりに錫杖に魔力を込め癒しの魔法を町全体に放った。
前衛的な私の回復魔法ではなく、私の髪の毛に隠れていたサクラのオーロラヒールである。
傷が癒されたり、身体が軽くなったりと町の住民は歓声を上げるのであった。
私は静々と神楽殿から退場するのであった。
「これで少しは天照大御神様の信者が増えるやろう。胡散臭い宗教のイメージは少しは払拭出来たな。」
ボソっと零して私は裏に引っ込む。
姉や紅唐白ちゃん、リオンに民衆は集中している事やし、私は着替えて自宅に避難しておこう。
こうして雨ごいの儀式は成功したのであった。




