姉と私
一週間の配給で町民達は割と元気になった。
簡易的に社を作り、治癒と参拝を平行して行っている。
神社の着工までは手が回らないのが現状だ。
「町民の住民票は作っているし、各個人の畑の大きさも確認中と…」
他にも色々とする事があるが、曖昧に管理されていた物を明確に管理するようなシステムへ変化させていく。
この地を足掛かりに他の領地も巻き込んで行く予定だ。
「留美生、お前が書類仕事って珍しいな。」
姉よ、私を馬鹿にしきにたのか?
ギリと姉を睨むと
「仕事の邪魔をしに来たんちゃうからな!!聞きたい事があんねん。」
慌てて訂正してきた。
邪魔になったら問答無用でサイエス飯にしたろうって思ったのが、姉にはバレていたようだ。
「何や?あんたは簡易神社で治癒と紅唐白ちゃんと一緒に座ってるだけやろ。仕事はどうした!?」
「や、そうやねんけどな…アンタが勝手に集めた子供等はどうするん?」
情報を流す対価に餌付けした子供達の事を聞いてきた姉。
「諜報部員として育てるで。今は書類が山のようにあって動けんし、姉よワウルを連れてガキ共を特訓してや。中には韋駄天や流言などのユニークスキルを持っている奴がいるからな。」
「え~面倒臭い。」
バッサリ切って捨てる姉に
「これ欲しくないか?」
抱っこ紐を見せた。私の腹に丸まっている出汁巻き卵の抱っこ紐。
「抱っこ紐貰っても重いだけやん。」
姉の主張に
「普通はやろ。これの作成者私やで?私だって好き好んで腹に重し付ける趣味はないわ。」
キッパリと言い切れば
「もしかして重力無効とかのスキル付与されてるん?」
姉は興味深々な顔をした。
「せやで。本当は抱っこ癖付くのも…って思ってたけど、まだ赤ちゃんやしな。で、どうするん?」
「やる!だから抱っこ紐クレ!」
クレクレと手を出してくる姉に
「じゃあ、ガキ共の教育任せるわ。出来れば隠密のスキルを取得して欲しいな。レベルは150を目指してくれ。ガキ共はリオンの直属の隠密部隊にするからな。あと、直属になる時は魂の誓約させるさかい。」
抱っこ紐を渡して私は話を締め括り、姉を執務室から放り出した。
あー五月蠅いのが去ったわ。
書類を一通り終わらせて、私は町を散策する事にした。
神社を建てる良質な木を求めてブラブラしているが、干ばつで良質な木は無い。
枯れ木一歩手前はあるあるなんだが…姉に地球より木材を仕入れて貰うようにお願いするか。
「殿下?」
リオンが居たので声を掛けたら無視された。
殿下呼びに慣れてないリオンに頭を痛める。まぁ、散々呼び捨てにしてたしな。
「リオン様!!此処にいらしたんですね。」
私はニヤっとリオンを呼び止めた。
リオンは私の顔を見た途端、うげぇとした顔をしたので良い笑顔でニッコリと微笑む。
「あ、あぁ…」
凄く動転してませんか、リオンさんよぉ!?
「殿下、軍略のお勉強の時間ですよ。」
これから兄二人の内乱に参戦して三つ巴になるんだから不測の事態に備えてリオンにもある程度軍略を学んで貰わないとならない。
姉が拾ってきた三人娘もそこそこ出来るのだが、まだまだ私の足元に及ばない。それが凄く残念である。
このままでは私が姉から正軍師の地位に縛り付けられる!
それは何としても回避したいのだ。
私がしたいのはワイバーンに乗って格好良く空を駆ける事であって、策を練って敵に絶望を与える役ではない。
「……分かった。」
対外的な事もあってリオンは大人しく私に付いてきた。
こうして姉とワウルがガキ共の教育をする間に私は、三人娘とゲルドのおっさんにリオンを含んで戦略のイロハを叩き込むのであった。




