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琴陵姉妹の異世界日記if  作者: ガンバル。
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リオンの秘密


 兵士の育成も順調に行っている中、私のノルマは達成した。我先にとアトリエに籠って卓上神社を量産していたら

留美生るみな、リオンを連れて執務室まで来て>

<何や? 急に>

<事の次第では、厄介ごとになるかもしれん。急を要するから、今の仕事は誰かに委ねてリオンを連れてきて>

<分かった>

姉から招集命令が掛かった。面倒臭ぇと思いながらもリオンを捕まえて連れて行かねば私の給料が減らされるので、私はリオンを探しに街へ向かった。

「リオン、重要案件や。今の仕事は誰かに引き継ぎさせて私に付いてきてくれ。」

「何で俺がっ…」

 ブスっと文句を言うリオンに

「重要案件や。至急ってことで姉が呼んでる。」

早く支度しなやーと言えば

「レン様が?」

ポカンとした顔になった。おい、レン様ってどういうことや!?私のことは呼び捨てやんけ!?アンタを拾ったんは、私やで!!

 ムっとリオンを睨み付けるもリオンは私を無視してサッサと引き継ぎを終え、私を引き摺って執務室を目指したのであった。





 執務室でアンナと姉が待っていた。

「一体何なんよ」

「まあ、まずはそこに座って。アンナ、サスペンションを採用した馬車の設計図を生産ギルドに持ち込んだ件はどうなっている」

「今、設計可能か試作中です」

「じゃあ、生産ギルドに顔を出して進捗確認してくれへん。この間、クロエ様に少し話したら制作を急ぐように言われてんねん」

 姉よ、それ嘘やんけ!

「分かりました」

 ってアンナ、マジで信じてるんか?金に目が眩んでるやろうか?

「じゃあ、お願いな」

 アンナを見送った後、姉は席を立ち部屋の鍵を掛ける。

 風魔法で防音を強化した。

 何や、この徹底ぶりは?

「アンナまで追い出して、一体何なん?」

 怪訝そうな顔をする私に、

「リオンの素性を知る必要があるから呼んだ」

と簡潔に述べられた。はーん、他国の王子のイザコザでもあるんやろうか?

「まだ、話は極小数しか知らん。リオンがアトラマント帝国の間者と接触していると報告が上がっている。気付いたのはジャックや。どんな話をしていたのかまでは聞き取れんかったらしいが、聞き取れた内容から推測するとリオンはアトラマント帝国の上層部に位置する人間であること。この国が、帝国と小競り合いをしているのは知っているやろう。そんな状況で、帝国の人間がCremaクリマに居るとなれば、会社の存続も危うくなる。リオン、あんた何者や」

「……」

 姉よ、行き成り何言ってんだ!リオンは私が拾った下僕である。取り上げられるのは困るんだ。有能だし!私は慌ててリオンを庇う。

「ちょっ、行き成り何言うんよ。リオンが帝国の人間やったとしても、亡命しただけちゃうん」

「亡命した人間に、何で帝国の人間が接触するんや? 孤児院の子供らを遠目で鑑定した事があるけど、諜報員向きなスキルを取得している奴らばかりやったで。リオン自身、強制合宿ブートキャンプする前もレベルが高かったし戦闘経験もあった。不穏因子を排除するせなあかん。それをするのがトップの役目や。リオンが話してくれれば、こっちも手の打ちようがあるかもしれへん」

 姉が続けた言葉にリオンを見つめると、無言が暫く続き重い口を開いた。

「…………リオン・フォン・アトラマント。アトラマント帝国第3王子だ。俺の母は、旅芸人の踊り子だった。宮廷で踊りを披露した時に見初められ側室として召し上げられた。王位継承権は、殆どない存在だった。でも、現国王が病で倒れ王位争いが表面化になり、俺は乳母の手を借りてこの国へ亡命した。母は、毒殺されたよ」

 マジか、王位継承権争いに巻き込まれて逃げてきたのか。

 道理で立ち居振る舞いやらが板についているわけだ。有能なんもその王家の教育もあったんやろう。

「最近、接触してきている者は?」

「……国に戻り王位を継ぐように言われている」

「上に2人の王子がいるんやろう? 相当ボンクラなんか?」

「そうだな。消去法で1番まともな俺が妥当らしい。今、帝国は内戦1歩手前の状態と聞いている。水面下では相当やり合っているらしく、民にまで被害が及び始めている。疲弊している馬鹿共を手に掛けて次期王として立って欲しいと言われた」

「成程なぁ……」

 私は唖然とした。超面倒臭い事に巻き込まれてるやん。

 リオンを下僕にした時に王子である事は理解してたが、ビシバシと鍛え上げた結果が此処に居るから、切った後で帝国で王位に就いた時に問題が勃発しかねない。

 姉をチロっと見れば、私は眼中にないようだ。安心した。

「リオンとしては、どうしたい?」

「……」

「黙ってても時間の無駄やで。1つ、帝国を見捨てる。1つ、リオン自ら内戦を平定して王位に就く。選べる選択肢はこの2つやと思うけど」

 姉は提案してへんけど、後はリオンの暗殺ぐらいしか選択肢がない。 

「……王位に就く」

「分かった。じゃあ、リオンは今日付けでCremaクリマを退職。私も、帝国に行って手伝うわ。留美生るみなはどうする?」

「私も行く。リオンは、私が拾ってきたからな!」

「じゃあ、私も留美生るみなもCremaクリマは退職や。後任も育っているし、暫く空けても問題ないやろう。アンナにCremaクリマは全権任せているし。後は、誰を連れていくかやな」

「イスパハンとワウルを連れて行く。国外に行くなら、ドワーフの洞窟に行きたいし、ワウルなら情報収集に持ってこいやん。まあ、戦闘は程々やけど」

「後は、クインテットやな。アンナが戻ってきたら五月蠅いから、辞表を書いて直ぐ出発するで。途中でイスパハンとワウルを回収して、ジェリダン共和国を経由して入国する。冒険者なら入国も容易いやろう」

 善は急げとばかりに、私達三人分の辞表を書斎のテーブルの上に置き、リオンには私物をアイテムボックスになっているウエストポーチに収納するように言いつけ、私はイスパハンとワウルの回収しに行った。

 準備もそこそこに、私達はハルモニア王国を出国するために旅に出たのだった。

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