姉の横暴
今日も今日とてアトリエで、アベルの像を作っている私です。
後少しで出来るそれに私はラストスパートとばかりに頑張っているのだ。若干アナスタシアの像の方が豪華に見えるが、それはそれで良いんじゃないか?
作業に没頭していた私に姉が訪れた。
「留美生、作成捗っとるか?」
「ん~、後少し~」
素材があちこちに散乱している間をすいすいと進む姉。万が一、踏んだら私が怒り狂うからね。
作業中の私に姉が
「ん? これ……キヨちゃんの鱗やん!! 何勝手にキヨちゃんから鱗剥いでんねん」
手加減なしの張り手を脳天に叩き込まれ、像を持ったまま頭を抱えて呻いた。
何すんねん、この糞婆!!
「うちのキヨちゃんに何さらすねん。殺すぞ」
姉は私の襟首を掴み上げた。グエっと蛙のような声は姉に無視された。
「ちょっ、これは落ちてたんや。紅唐白ちゃんから無理矢理取ったんとちゃう」
「お前が、キヨちゃんを頬擦りしまくってたのは知っとるわ。気絶させるくらいの雷喰らったんやから絶対取った!!」
嘘つくんじゃねえ! とばかりに締め上げる姉に必死に弁解する私。
「嘘ちゃうもん! 大体、あんたが紅唐白ちゃんを置いてきぼりにしたからご飯食べられずに怒ったんやで。うちのせいちゃうもん」
姉がご飯を残していかへんから私は八つ当たりされて感電したんやで!まぁ、耐雷がスキルに付いたけど…嬉しくない。
私が嘘を吐いてないと悟ったのだろう、パッと手を放す姉。私は、ゲホゲホと咳込むのであった。
「拾ったならまず、私に渡すもんやろう。何で勝手にポケットにないないしてんねん。ぶっ飛ばすぞ」
「だって、紅唐白ちゃんの鱗欲しかったんやもん。今回の像も、それが無いと完成しないから貰っただけやもん」
「ババアが、もんもん付けるな。気色悪い」
「酷い!!」
うわーんと泣き真似をする私を軽く小突きまわす姉に、チッと舌打ちして気色悪い泣き真似を止めた。
「素材が必要なら私に渡してから要求しろ、カス。次、同じことしたら減俸やからな」
「分かった」
本当のケチケチ婆やな。ってか、私が狩ったモンスターの素材を何でお前に進言せんといけんねん。解せぬ。
ブチブチと文句言えば姉がギロッと睨んだので黙った。
「それで像は出来たん?」
「うん。後は研磨して磨けば完成やで。王都の像と遜色ないものが出来たわ」
はっはっは、褒め称えて良えねんで!と自慢したら、ハイハイご苦労様と適当に流された。ブーブーと不満を言えば
「ティムカルテット達の様子も見に来たんやけど、あいつらどこにおるん?」
めっちゃ話を逸らされた。
「多分あの辺にいると思うで。適当に素材渡してあるから、何か作ってんのとちゃう」
あいつ等、私より色々な物を作るのが好きやさかいな。
<花令来たんか?>
<主ぃ~、素材に埋もれちゃったですの。助けて欲しいですのぉ>
サクラからのヘルプコールに脱力している姉。
「こんなにグチャグチャにしてたら埋もれるわ。どこら辺におるん?」
<ここですの~>
ニュッと身体の一部を伸ばし手を振る仕草をするサクラに、溜息が出た。
何で埋まってんねん?と思うものの私は作業に没頭する。
「皆、そこに集まっているの?」
ちょいちょい姉の確認する声に
<せやで。早よ救出してんか>
何とも図々しい救出要求をしてくる赤白。姉は適当に返事をしているようだ。
チラっと見たら綺麗に道具や素材が無くなっていた!
「ちょっ、何すんの!! まだ使う素材とか道具とかあったんやで」
「メディションホームの留美生フォルダー内のその他に収納しているから、そこから取り出せ。床に物を置くなカスが! だから部屋が散らかるし汚くなるんじゃ。部屋の汚れは心の汚れじゃ」
「自分も人の事言えんやん!!」
「私は床に物は置かんし、全部メディションホームに収納しとるわボケ」
ギャンギャンと吠える姉に私は出てけ!!と言う言葉を無理やり飲み込んだ。今は目の前の像に集中せんとと思いながらも姉の横暴に死ねと暴言を吐きまくるのだった。
こんもりと素材とティムカルテットが作ったであろう作品を1つ1つ取り除いて、出てきた5匹。
「自分らの作品に埋まってたら世話ないで」
クドクドと説教する姉。
<いや~、まさか崩れるとは思わんかってん>
目が泳いでるよ、紅白。
「白朱も一緒か」
白朱の身体を撫でる姉に、シュルンと姉の腕に絡みついてきた。
<あ、1人だけ媚び売るって逃げる気やな! ずっこいぞ>
赤白が、白朱に対して威嚇している。
「狡猾な赤ちゃんが居てたまるか。赤白、白朱を虐めたら飯抜きにすんぞ」
<虐めてへん!>
必死に頭を左右に振る赤白に、私は心の中でギリギリしてるんやろうなぁと思った。
「虐められたら直ぐ私のところに来るんやで?」
姉の言葉に白朱は、キュッと強く腕に巻き付いてきた。
「それで何作ってたん?」
丸っと覗き見放題望遠鏡、100キロ先にも届く拡張機などなど、何とも微妙な物を作っていたらしい。
「おまいら、本当下らないもの作るな。あ!! これ、私が売るつもりだった魔石やん。何であんたらが持ってんの!!」
アラクネの心臓や拳大くらいの赤い魔石が無残にカットされていた。
<留美生のところからパチったんや! 留美生の素材やもから悪くない!!>
自分達は悪くないと主張するティムカルテットを一瞥し、
「留美生、何勝手に素材パチってんねん!! 十分な素材渡してるやろう! 必要以上にパチるな。これ売ったら、社員の給与が銅貨1枚は上がるねんぞ」
「留美生様、50%減俸3ヵ月決定ですね」
アンナが、すかさず閻魔帳を取出し私の減俸を書き記している。
「ちょっ、待ってや! 手持ちの物だけじゃあ碌な物が作れないから少し借りただけやん」
「うっさいわ。大体、借りたとか良く言えるな。事前に作りたい物を報告した上で素材を貰いに来いと何度言わせれば気が済むんや」
姉がグーで私の右頬を殴る。
殴られた拍子にゴロゴロと部屋の端へ転がっている。
「着服した分は、乾パンの刑で補填しろ。暫くお前は3食乾パンじゃ」
姉の宣言に私は、絶望の2文字を背負ってシクシクと泣き出した。
「ティムカルテットも、留美生の素材を勝手にチョロまかして変な物を作らない!!」
<変な物やない! ちゃんと実用性を…>
「赤白、言い訳は聞かん! 大体、お前が1番年長やぞ。作りたい物があるなら、まず私かアンナに相談して素材を貰いに来い」
姉の剣幕に無言になるティムカルテット。
「この素材も切り刻まれているし、今回は留美生の監督責任という事にしたる。次、やらかしたらマウスと乾パンの刑が長くなるだけやからな」
「アンナ、素材管理を任せるわ。あいつらが勝手に使ったら即連絡してくれ」
「分かりました」
「白朱も、あんな大人になったらあかんからな。あれは、悪い見本や」
と赤白と紅白を指して諭した。
分かっているのかいないのか、白朱は首をふりふりしているだけだった。




