アベル君、爆誕
姉が屋敷に突入して数時間、私達はMPとHPを削りながら魔法陣を維持していた。
まだ帰ってこんねぇ!!
サッサとしろとイラつくが、姉がアベルをあの手この手で黙らせてくれないと困る。
私はポーションを飲みながらお祓い軍団を見渡すと皆フラフラしていた。
ちょっとヤバいなと思いつつも魔法陣を保つ。
継続して維持すること数時間、姉はとんでもない奴を連れてきた。
そう、元凶のアベルである!!
「うぉらああああああああああああ!!」
姉の顔面に右ストレートをぶち込んでやった。宙に浮いた姉の体が地面に叩きつけられ、ゴロゴロと勢いよく転がる様を見て、へッと吐き捨てた。
「だ、大丈夫か?」
と私と姉の間でオロオロしている元凶。
「大丈夫ちゃうわ! 何すんねん、留美生」
「何ボスキャラを連れてきてんねん! こっちは疲弊してるんやぞ」
「行き成り殴る必要あるか、ボケェ!!!!」
「お前が死ぬんは別にええけど、他を巻き添えにすんなカス」
「酷い!!」
私の本音に姉が何故かショックを受けた。
「どの面下げて本丸連れてきたんじゃ」
と呆けた姉を問い詰めると
「紆余曲折あってティムしたから連れて来たんだよ!」
滅茶苦茶説明を省いたアホな回答をしたので
「その紆余曲折を省略するんじゃねぇー」
本能に任せ左ストレートが繰り出した。クリティカルヒットしたのか、姉はキャンキャンと喚きだした。
「話す前に暴力振るったん留美生やん!」
「お前が、予告なく本丸を勝手に連れてくるんが悪い。念話すれば良い話やろ」
図星を刺されたのかウグっと詰まった姉に止めを刺そうとしたらアンナが珍しく姉に助け舟を出した。
「レン様が連れてきたのであれば、害意はないのではありませんか? まずは、こちらに連れてこられた経緯を聞いてみましょう」
皆に集まって貰い、アベルが仲間に加わった経緯を話した。
「――というわけで、この度正式な仲間になったアベル君です」
姉の奇行は毎回なので今回もヘーホーヘーで終わりを告げるのだが、当の現況であるアベルが
「おい、そこは『様』だろう」
アベルが不機嫌そうに姉に指摘していた。
面倒臭い奴め。
「良いやん。これから、あんたを神として正式に祀る事になるんやし。彼らは、あんたの信仰を集める重要な存在なんやで。一々敬称でガタガタ言うな。器が小さく見えんで」
「私は神になるのだぞ。そこは様を付けるべきだろう」
「ティムされている以上は私が上や。菅原道真様みたいな存在になったら様付けしたるわ」
姉の捨て台詞に
「その言葉違えるなよ」
とアベルが念押ししている。
「女に二言はないわ」
姉の態度にアホやな、と思った。神社が建設ラッシュになってアベルの名は広まるやろうし、様付けするのも時間の問題である。その時の姉の顔が見物だ。私?私は約束してへんさかいズーっとアベルで通すで!!
街の浄化は終わり、取敢えず諸悪の根源であるアベルも一先ず落ち着いたので、一旦報告も兼ねて皆で公爵家の館に行くことになった。




