姉と合流しました。
「偉い早かったなぁ。」
スルメを燻りながらマヨネーズを付けて食べている私をハリセンで張り倒した姉。
「痛いぃいいいいいいいい!!何すんねん!」
横っ面を吹っ飛ばされてゴロゴロと地面を転がる私にアンナが一言
「二ヶ月分の給与カットですよ、留美生様。」
帳簿にサラサラと減給処分と記載した。
「何でやねん!!何もしとらんやん!?此処に辿り着くまでにアンデットモンスターを一掃してるんやで!ちゃんと仕事したやん!下見だって頑張ったのに何で給与カットやねん!!」
「勝手に先走るからです。レン様は待機って仰ってましたよ。命令違反で給与カットです。」
ギャースカ騒ぐ私にアンナはこれ以上ガタガタ騒ぐならもっとカットするでぇ!!と脅しをかけてきたのでお口をチャックしておいた。
本当に解せない??
「で、何か追加報告でもあんのかいな?」
「ある……けどお給与カットなしにしてくれへんと言わん。」
ブスっと文句を告げるとパシーンパシーンとハリセンを両手に持って威嚇体制に入ったアンナを見てヒィっと悲鳴を上げた。
「給与カット2ヶ月って酷いわぁ。来月にはコラボイベントがあんねんで!!コラボ展で散財したいねん。お願いや!給与カットだけは止めてーな!!」
土下座して泣いたら
「先ずは情報を精査してから検討します。」
冷静なアンナに一考するとだけ伝えられた。
知ってる。これって遠回しのお断り文句やね!どこでそんな対応覚えたん!?って姉か!日本独特の八つ橋に包んでお断りするパターン。応募した案件からのお祈りメール。そんな文化学んで欲しく無かったわ!!
私は渋々と姉に古いブローチを見せた。
「此処のアベル公爵の奥さんのアナスタシアさんから受け取ったブローチや。奥さんは、アベルさんを偉く心配してはってなぁ…アベルさんを救って欲しいんやと。多分、鍵になるんはそのブローチやろうなぁ。そのブローチにアナスタシアさんが眠ってんねん。」
私は姉とアンナに作戦を言い渡す。
「今回はマーライオンの粕封印の手段が一番良えんやろうけどな。マーライオンの封印が粕過ぎてアベルさん激オコ通り越してるわ。あんな粗雑な封印なんてされてよく百年近く持ったと思うほどやで!一番は紅唐白ちゃんや!私を含めた神社組で浄化・お祓いで相手を弱体化させる!弱体化させてる間に姉はブローチのアナスタシアさんの助力を得て説得しかないわ。万が一にも上位種である紅唐白ちゃんがおるから祟りは無効化されるやろうけどな、交渉は私やなく信託のある姉ちゃんがせい。1.神に祀るので祟りを静めて欲しい 2.対価としてこの街を学術都市として繁栄させる 3.アベルの名前を正しい歴史と同時に各地に広めていく努力をする 以上の3点で交渉宜しく。あとMPとHP回復する上級ポーションガッポリ置いていって。それが無いと死ぬ、マジで!!」
私の言葉に姉はだんまりとなった。
まぁ仕方ないわな。私だってそんな無理ゲーしたくないもん。せやかて此処を浄化出来へんかったら土地が勿体ないし利益が出ない。態々公爵領まで来たんや、お土産は沢山あった方が嬉しい。
「分かった、説得は何とかするわ。キヨちゃんも居るし、大丈夫やろ。」
姉の決断に
「じゃあ、早速今からするか?」
実行の確認をしたら意外と
「いや、明日にするわ。」
「ふーん分かった。じゃあ、皆には明日の朝一って事で知らせるけど良えな?」
「OK。」
急がずに明日の朝一でという事に決まった。
「じゃ、私は皆に伝えに行くわ。」
私は早々にテントから退出し、皆に号令を掛けて明日の朝一に除霊すると伝えてその日は終了した。
朝です。いつもなら太陽がサンサンと光注ぐ爽やかな朝なのに、この街は太陽の光が薄っすらと降りてくるような場所です。
「昼間からアンデットが活躍しているだけあって気持ち悪い場所やなぁ。」
朝飯を食べながらボソっと零した私の台詞に
「勝算はあるんですかぁ!?」
必死に帰ろうと訴えてくるボブ。
「勝算はないで?負けへんけど勝てもせんな。うちらがどうこうなるってわけやないし、安心しいや。」
他に付いてきた面子も私の言葉にショックを受けていたようだ。
私が祓えないっていう意味でショックなんだろうか??それとも勝算が無いのがショックなのだろうか?
お通夜状態の初期メンバーは置いといて、私は見習い候補達の方に向かった。向こうは食事が終わっている状態だからね。
私はメガホンで
「集合」
見習い候補に集合を掛けた。
「諸君、失敗は成功の母と言うが、失敗は単なる失敗だ!失敗すれば直結するのは、即ち死!死にたくなければ成功させろ!これより荒廃の街及び旧公爵領廃墟の除霊を行う。死にたくなければ全力で従え!」
「「「「ハっ!」」」」
ビシっと姿勢を正す見習い達に満足に私は頷いた。
「私が魔法陣を展開させたら魔力を全力で注ぎ込め!作戦は以上だ。」
私は用意させていた神棚を前に座り大祓いの祝詞を上げる。
「高天原に神留り坐す 皇親神漏岐 神漏美の命以て 八百萬神等を神集へに集へ賜ひ 神議りに議り賜ひて 我が皇御孫命は 豊葦原瑞穂國を 安國と平らけく知ろし食せと 事依さし奉りき 此く依さし奉りて し國中に 荒振る神等をば 神問はしに問はし賜ひ 神掃ひに掃ひ賜ひて 語問ひし 磐根 樹根立 草の片葉をも語止めて 天の磐座放ち 天の八重雲を 伊頭の千別きに千別きて 天降し依さし奉りき 此く依さし奉りし四方の國中と 大倭日高見國を安國と定め奉りて 下つ磐根に宮柱太敷き立て 高天原に千木高知りて 皇御孫命の瑞の御殿仕へ奉りて 天の御蔭 日の御蔭と隠り坐して 安國と平けく 知ろし食さむ國中に成り出でむ天の益人等が 過ち犯しけむ種種の罪事は 天つ罪 國つ罪 許許太久の罪出でむ 此く出でば 天つ宮事以ちて 天つ金木を本打ち切り 末打ち断ちて 千座の置座に置き足 天つ菅麻を 本刈り断ち 末刈り切りて 八針に取り辟きて 天つ祝詞の太祝詞を宣れ………祓へ給ひ清め給ふ事を 天つ神 國つ神 八百萬神等共に 聞こし食せと白す」
大祓いの祝詞を読み上げると共にオーロラヒールの魔法陣を展開させていく。元公爵家と街全体を包み込める魔法陣を三重に描いていく。HPとMPをガリガリ根こそぎ削られる感覚が今ならハッキリと解る。見習い達もMPを全力で魔法陣に注いでいる。
グラグラするぅと気持ち悪くなりながらも私と見習い達で
「「「「オーロラヒール」」」」
三重のオーロラヒールを発動させた。ついでに連動して街の四隅に仕掛けた多重浄化結界も街全体に発動している。
声にならない悲鳴?みたいなのが聞こえるが私はそんな事は構ってられなかった。光の柱を降ろしている状態を維持し続ける義務があるのだ。
私と見習いはそれぞれ配られている上級ポーションでMPとHPを回復させオーロラヒールを維持している。
姉は私を見て紅唐白ちゃんを連れて館へ乗り込んだのであった。




