女幽霊と私
街に入ってから襲い来るアンデットの群衆にそれぞれ対応する。巫女・神薙見習い諸君も統率の取れた一軍宜しくバッサバッサと薙倒している。
「取り合えず、街を回って浄化すんで!!最後にお屋敷や!姉はサッサと話しを終わらせて合流しようとするさかい駆け足で行で!」
街をランニングするで!とばかりに走りながら襲い掛かって来たアンデットモンスターを叩き潰して行った。
「「「祓い給え、清め給えエクストラルヒール」」」
うぉおおおい、使い方間違ってないか!?
エクストラルヒールで浄化する彼等に私は頭を抱えた。アンデットモンスターを回復魔法で昇天させるなんて!!確かに神聖魔法やけど、回復魔法を攻撃魔法にせんといて!!
踊り狂いながら回復魔法で昇天させる見習い達に私は涙を浮かべた。
街をランナーズハイキングしつつ四隅に魔石を埋めて一周した辺りで館付近に到着した。
街を一望すると完璧に浄化しきれてないのが見てわかる。諸悪の根源を遠目に見るも
「あ、詰んだ。」
邪神って、瘴気ボッコボッコやし。マーライオン手抜き封印しやがって!!しかも封印した奴の神経逆撫でしてインフェルノ通り越してんで!?
こうなったら一柱神として祀るしかないちゃうやろか?此処は姉と相談せなあかんな。
「此処で待機する。姉と合流後に此処一体を処理するさかいな!今は休んでて良えで。」
私は解散と告げて、館の周囲を散策する事にした。
おどろおどろしい雰囲気ですな。アンテッドモンスターを殴り倒しつつ周囲を伺う。
墓地ぐらいはありそうやけどなぁ。
<姉ちゃん、屋敷におるけどお手上げや。>
<何やて!?>
<街全体がアンデット系のモンスターの住処や!しかも館は邪神がおるで。もう一柱神として祀って祟りを収めて貰うしかないわ。場合によっては国王引き摺りだす必要があるで!>
<………それでか……>
<どうするん?オーロラヒール使っても昇天せんで!多分。お、墓が見えたわ。ちょっと見てくるさかいまた連絡するわ。>
念話を切って墓を見に行った。
墓の周囲は意外にも静かである。
「ん~何か手がかりはないんかなぁ?」
墓らしき物にペタペタと触るも古い物らしく文字は読み取れなかった。
<何や蛻の殻やなぁ>
<なぁ、あっちに何かおんで??>
<幽霊ですのぉ>
「キシュっ」
ワイワイと騒ぐティムカルテット。サクラの幽霊という言葉に怯えた白朱ちゃんは、私の首を絞めてる。ぽんぽんと叩いて緩めてねーと伝えると力は緩くなった。
フードから顔を出してるサクラと楽白。
『どうか、アベル様をお救い下さい……』
ホロホロと涙を流す女の幽霊に私は声を掛けた。
「すみません、アベル様って誰の事ですか?」
『わたくしが見えるのですか?』
「えぇ、見えます。何かお困りでしたら話を聞きますよ?」
内心ではきっとこの瘴気に関係する話だろうと思ったのでチャンスだとも思った。
『わたくしはアナスタシア・ミストと申します。わたくしの夫をお救い下さい。本来であれば、アベルは王になるお方だったのです。継承争いに敗れ、あの方はこの地に捨てられたのです。あの方は王の座に執着しているわけでは御座いませんでした。王は、あの方の才を恐れ生涯何もするなと命じ飼い殺しされたのです。わたくしはアベル様をお救いする事が出来ませんでした。その深い悲しみも…どうか旅の人よ、我が最愛の君をお救い下さいませ。』
「必ずと約束は出来ませんが、最善を尽くします。」
私の言葉に女の幽霊は感謝の言葉を述べピンク色の石が填められたブローチを手渡した。
『ありがとうございます。どうかこれをアベル様へお渡し下さい。アナスタシアは貴方と共にいますと、お伝え願えませんか?』
どうか、どうか、と願いを込められた言葉を残してアナスタシアと名乗った女の幽霊は消えてしまった。彼女はきっとこのブローチの中に眠ったのだろう。
私達はブローチを持って待機場へ戻った。




