アンナと私
「姉、入るよ。」
執務室のドアを開けるとボールペンが飛んできた。ヒョイっと躱すと姉がイラっとした表情で
「ノックしてから入れ粕めっ!」
暴言吐かれた。何やらご機嫌斜めのようだ。大量に積み上げられた書類への八つ当たりだろう。
「いくつかヤバイ物件あったやろ?地方でも構わへんし21件ほど集めてくれへん?神社建てるのも交渉して欲しいわぁ。」
「は?何言ってんの!!そんな面倒ごと嫌やで!」
姉はバッサリと断るも後ろからアンナが良え笑顔で
「何を言っているんですか!天照大御神様の神社建設と布教を全国でしたいって言ってたではありませんか!大丈夫ですよ、留美生様。貴族の伝手はありますので、私達で整えて明々後日にでも書類をお渡ししますね。」
姉の許可なく決定事項として伝えられた。
アンナを恨みがましく見つめる姉は
「自分は社長やのに……」
とブツブツ呟いているのである。
「私だって全国津々浦々回って遊びたい!!……じゃなかった、強化訓練してその地域の現状とか把握しなくては!!」
本音が漏れ過ぎで後ろに控えてるアンナがハリセン持ってんで!
「あんた書類で動けへんやん。アンナ連れてって交渉させるんでも私は構わへんで。自分の仕事分は終わってるやろうし、最終試験はお祓い系やしな。新しいスキルを身に着けた奴もおるし、こっちは期待が大きいねん!」
書類裁け、仕事しろと文句を言えば机にへばり付き泣き出した。
鬱陶しい姉である。
「どうでも良えけど、書類仕事から逃げるなよ。」
クイっと指で後ろを指せば、姉が後ろを見て悲鳴を上げた。アンナ降臨である。
私は言いたいだけ言って執務室を後にしたのであった。
先日、相談した件で姉の猛抗議があったそうで、アンナは
「最終試験はレン様も一緒に行う事になりました。」
げっそりした顔で報告してきた。
「黙って座って書類を処理すれば良い物を…」
本音が駄々洩れになっている所、かなりお疲れの様だった。
「件数が21件とあったのですが、自宅なども確保したいので37件に引き上げました。各領へ赴いて試験と並行して住めるように人員を手配させて頂きしたので、ご安心下さい。此方が物件の書類となります。」
書類を渡されたので目を通すと、大貴族や王族の領地までと多彩にあった。無料物件にしては安過ぎないか?と思わなくもないが、それなりのアレが住み着いているらしくマーライオンでは封印がやっとだとの事。
無能だな、マーライオン。物件の処分にお金が掛かる上、取り壊しも出来ない負の遺産となればマーライオンよりも安いこっちに回された物だろう。こっちは神社か自宅としてリサイクされるわけだし、多少なりとも税金が入るから儲けも出るわけだ。
「OK、全部処理させるわ。一旦、王都から離れる事になるさかい後任は大丈夫なん?」
「その辺は大丈夫です。ただ…レン様は書類付きで付いてきますので実質手伝いは出来ませんが…」
「足引っ張ってんねんな…書類が終わるまで王都に引っ込んでれば良えのに…」
「置いていくと逃走するので、連れて行きます。」
アンナの苦労が忍ばれるわ…。
「じゃあ、こっちも早速準備させるな。明後日には出発出来るようにしておくから、そっちも宜しく。」
私は神社と孤児院に向うのであった。




