ACT1 始まりの日
私の名前は琴陵容子。姉の宥子と一緒に生きてきた。姉宥子は縁結び、私は縁切りの力を宿している。琴陵家は神職の家系だったらしく、稀に異能持ちが生まれるそうだ。幼い頃、家族に嫌気をさして縁切りして児童養護施設に入所し、手に職をと考え普通の高校には行かずに日本理工専門高校へ入学し三年間学んだ。学校側からは大学の専攻へ推薦を出すと言われたが、お金が無いのでお断りし小説作家となった。年を重ね、私は久世苧環と出会い世界が広がっていった。彼女はその道では有名な霊媒師である。自称占い師と言い張っているが、退魔を得意としておりデリバリー・シャーマンの代表者でもある。そして私は執筆とデリバリー・シャーマンとの二束草鞋で活動しているのだ。
執筆とたまに久世師匠の手伝いで毎日を終える私に人生の転機が訪れたのは姉が三日間行方不明になったのが切っ掛けだった。電車に引かれたのに忽然と姿を消したとかでSNSで当時動画を拡散されていたみたいだしね。神隠しだとかなんとか。実際、異世界の自称神に誤召喚されたらしい。
「うん、頭イカレタたのか?心療内科ではなく精神科を探そうか?」
異世界へ行ってきたとのたまった姉に私は精神科で受診出来そうな病院をスマホで探す。
「酷い!私は本当に異世界へ行ってきたんだってば!」
必死な宥子に私は信じられないと視線を寄越せば、宥子は
「ステータスオープン!」
ヤケクソに叫んだ。宥子のステータスオープンの言葉と同時に空中に宥子のステータス表示される。私は宥子のステータスをまじまじと見つめポツリと
「マジか、ステータス画面やん。」
と呟いた。驚いた。いやビックリだよ。本当に異世界に行ったのかステータスが表示されてるし、日本の神の加護も貰っている上に、ちゃっかりとペットのティムしていた。
「お前、魔物使いかよ。しかもちゃっかりと紅白と赤白ティムしてんな!」
ブーブーと文句言えば
「不可抗力だよ!しかしこのステータス運が高いよね!」
宥子は話を逸らしてきた。しかし宥子のステータスには美味しい経験値倍化と成長促進がある。
---------STATUS---------
名前:未設定(琴陵 宥子)
種族:異世界人
職業:魔物使い
レベル:1
年齢:25歳
体力:10/10
魔力:8/8
筋力:3
知能:5
速度:2
運 :300
■スキル:縁結び・契約
L紅白・赤白
■ギフト:全言語能力最適化・アイテムボックス・鑑定・経験値倍化・成長促進
■称号:なし
■加護:須佐之男命・櫛稲田姫命
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「異世界から家にどうやって戻って来たの?」
ふとした疑問を宥子に投げかければ
「自分の所有物の使用を許可して貰ったからね。この家の半分は私の所有物だしいけるかなって思ってさ。異世界はサイエスって名前だよ。」
随分と博打に出て勝ってきたようだ。
「なるほどね。自分の所有物なら異世界でも使用可能ってわけね。縁切りする?」
「相手が腐っても自称神だから無理だよ。それにしても三日も私が行方不明になってたって結構おかしいと思うんだ。」
宥子の言葉に私は疑問符を浮かべる。
「だって向こうでは数時間しか居なかったし。多分だけどサイエスとこっちの世界の時間の流れって違うと思うんだ。」
そう言い切る宥子に私は
「だったら今勤めている会社は退職しなきゃ駄目だね。私が連絡入れているから無断欠勤では無いけど宥子はサイエスに戻ったら会社どころじゃないだろうし、一応私の給料でも生活出来るだろうしね。」
会社を自主退社の手続きしとけよと釘を刺しておく。宥子は会社のことをサッパリ忘れてたのかバツが悪そうな顔をして
「明日一番に自主退社の手続きするわ。有休消化したら会社に行かなくて済みそうだし・・・」
本当は引き継ぎがとか言っていたが異世界に召喚されている今、いつサイエスへ転移してしまうかも不明なのだ。この際、会社には悪いが引継ぎは無理だろう。どんまいである。
「久世師匠に仕事を回して貰えば食べるのに苦労しないし、当面はサイエスとこっちの往復かな。」
「久世師匠には私から状況説明しておくよ。サイエスに行った証拠の品でも持って行けば納得するんじゃないかな。にしてもサイエスではまずはレベル上げと金策が必要になってくるね。」
「砂糖と塩、胡椒を購入して向こうで売るよ。でも売る前にレベル上げは必須だよねぇ。大金が絡むだろうし、モンスターは兎も角、人間からも身を守る必要があるとは。。。」
うんざりとした様子の宥子。武器は何にするんだろうと思えば
「包丁とゴキジェット持って行くね。」
万能包丁をとゴキジェットをバックの中にいそいそと仕舞っていた。
宥子よ、本当にそんなので敵を倒す気なのだろうか?異世界の金も持ってないし装備はこっちの世界の物になるのは解るけど万能包丁ってちょっとと思った私は悪くない。私は後で万能包丁とゴキジェットの代金を請求しようと思うのであった。