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95.あれ?

藤堂会長がゆっくりとした動きで僕達の前に立つ、下から見上げるように見てるせいか自然と見下ろされる形となる。

綺麗な青い瞳に射抜かれ、身体がすくんだのか動く事が出来ない。


「と、藤堂会長、これは一体?」


「鉄郎さん、わたくし鉄郎さんにぜひともお聞きしたい事がありますの」


「な、何かな」


藤堂会長の静かな問いかけに、なぜか冷や汗が出て来る、何このプレッシャー。僕に抱きついていた京香さんが小さく舌打ちすると小声で呟いた。


「リカに鉄ちゃんとの事がバレるの早すぎですわ、一体どこから漏れましたの?」

「えっ、これってやっぱり、会長に京香さんとの関係がばれてるって事ですか?」


「な〜にをコソコソイチャイチャとなさってるんですの」


「「ヒエッ!」」


「で、鉄郎さんはお母様と致しましたの」


「なっ!?」


やばい、まだ京香さんとの話し合いが済む前に本当に藤堂会長にバレてる、そ、それでかぁー、自分の母親がそう言う事されたら娘としてそりゃ怒り心頭にもなる、ここはもう覚悟を決めて謝るしかない。


「と、藤堂会長、京香さんとの事は決して中途半端な気持ちではなく、僕も真剣に考えて」


「もういいですわ!! やっぱり聞きたくありません!」


えーーっ、藤堂会長が聞いてきたのに、僕の言葉など聞きたくないとばかりに、言葉途中で首を振りながら大声で遮れた。

ちょ、ちょっと待って、せめて僕の京香さんへの気持ちだけでも聞いて欲しいんですけど。




「もう、お母様を殺して、お母様を殺すしかないですわ」



「……あれ? 僕じゃなくて?」


「それだと私2回も死んでますわ!!」


藤堂会長がいつの間にか手に持っていた、トランシーバーのような機械のスイッチを押した、すると先端でパチリと電気が走る、ス、スタンガン!!


「リ、リカちゃん、その手に持ってるバチバチするの、お母さんとっても危ないと思うんだけど……」



「なぜですの!! なんでお母様なんですの!!」



藤堂会長がワナワナと震えながら大声を張り上げる、きつく閉じた瞳から涙が零れ落ちている。どうにも頭が混乱してきた。


「リカ、鉄ちゃんの価値は1回や2回や3回やったくらいで変わるものではないですわ」


「どやかましい!! それぐらいわかってますわ、その鉄郎さんの最初の相手がお母様なのが腹立たしいのですわ!! 怒髪天ですわ!! どうしてよりによってお母様のような年増と、それだったら住之江先生の方がまだましでした」


「若けりゃいいってものじゃありませんわ、ねえ〜、鉄ちゃん」


「そこで僕に振るのやめてください、この状況わかってます?」



「どうしてですの鉄郎さん、どうして私ではなくお母様なんですの、私のような女には興味もありませんの!!」


「そ、そんなことは、……でも僕なんかじゃ会長のような綺麗な人と釣り合いが取れないんじゃ」



実は鉄郎の中で藤堂リカは特別な存在だった、美しいブロンドの髪、宝石のような青い瞳、スラリと長い脚、フランス人形のように整った小さな顔、まるで童話の中のお姫様のように思っていた、鉄郎にとっては決して手の届かない高嶺の花であり憧れの先輩だったのだ。そして常に多くの女性に好意を寄せらている所為で、自分に向けられている感情に酷く鈍感になってしまっている、住之江の時に犯したミスを再び犯してしまっていた。


「鉄郎さんは馬鹿ですの、残酷ですわ! こんなにもお慕いしていますのに!」


ボロボロと涙を流しながら慟哭する藤堂会長にハンマーで殴られたような衝撃を受ける、婆ちゃんにあれ程不誠実な事はするなと言われていたのにも関わらず、僕はなんて事を。

藤堂会長がこんなにも想ってくれていたのに僕は真剣にとらえていなかった、これじゃあ真澄先生の時と同じじゃないか、好きと愛してるの区別がつかないなんて男として最低だ。


「ごめんなさい、藤堂会長」


「くっ、いいんですの、鉄郎さんは悪くありませんわ、私にそれだけの魅力がなかっただけの事ですわ」


「ち、違うんです! 今のは藤堂会長の気持ちに気付かなかった事への謝罪です」


「はい?」


「藤堂会長は本当に綺麗で、憧れの人で、僕なんかが好きになっていい人ととは思えなくて、だから会長が僕をどう思ってるかなんて考えもしなくて」


「て、鉄郎さんはお馬鹿ですの! そ、それは私のセリフです、私にとって鉄郎さんは憧れで理想の男性で、そ、それに本気で好きでもない殿方にキ、キスするなんてはしたない真似を私はしませんわ」


「藤堂会長……」


白い肌を真っ赤に染めて俯くリカ、この時鉄郎はリカに対して初めて美しいではなく可愛いと思った、等身大の彼女とやっと向き合う事ができたのだ。


「ねえ、リカ」


「な、なんですのお母様、今とっても大事な場面なんですの邪魔なさらないで」


「貴女、鉄ちゃんにしっかり告白しましたの? 愛してるって言いましたの?」


「へっ、そそ、そんな愛してるなんて……恥ずかしい言葉は」


「はぁ〜、お馬鹿は貴女ですわリカ、いいですこと鉄ちゃんは周りの女性達全員から常に好き好き言われてますのよ、その中で自分の想いを届けるにはそれ相応の態度で望まないと、キスの一つや二つ程度で気付いてもらおうなんておこがましいですわ」


「僕、キスした、いや、されたのなんて京香さんも入れて3人だけなんですけど、そんなしょっちゅうしてるみたいに言われるのは心外なんですけど」(鉄郎の中で夏子はノーカン扱いです)


「あら、まだ私とリカと住之江先生だけですの?」


「そ、そうですよ」


自分が思ったよりモテないと告白するようでちょっと恥ずかしい。(自覚なし)


「あらあら、それは光栄ですわ。ですってよリカ、この際だからはっきり、きっぱり、一片の誤解のないように告白なさいな」


「えっ、…………そうですわね、はっきりさせない事には始まりませんものね」


スゥーっと大きく息を吸った藤堂会長と目が合う、その大きな瞳には強い意志の力を感じられて思わず見蕩れてしまう。



「鉄郎さん、好き、大好きです。私を貴方のこ、ここ、恋人にしていただけませんか!!」



「藤堂会長。……こんな僕で良かったら喜んでお受けします」



「つっ! 鉄郎さん、嬉しい、…………とっても嬉しいですわ」


そう言ってまたボロボロと泣き出した藤堂会長をそっと抱きしめる、すると感極まったのか余計にわんわんと泣き出してしまった。女性をこんなに泣かしてしまうとは、婆ちゃんや李姉ちゃんに知られたら思いっきり怒られてしまうだろうな。


「やれやれ、本当に世話の焼ける娘ですわ、もうちょっとで殺される所でしたわ」


京香さんも呆れ顔ながらも、優しい目で藤堂会長を見つめていた。










ヒック、ヒック


なかなか泣き止まない藤堂会長をソファーに座らせる、それにしてもまさかこんな美人さん達とお付き合い出来るなんて夢にも思っていなかった、でもこれで真澄先生、京香さん、藤堂会長とこの世界では義務である3人のお嫁さんを決めることが出来て、正直ホッとしている自分がいる、僕なんかにはもったいないくらいの人達だ、大事にしなくては罰が当たりそうだな。

と、その前に男として先に責任をとらねばならない事がある。


僕は会長の横でハンカチを差し出している京香さんに身体を向けた。


「京香さん、僕と結婚して下さい!!」


「えっ、わたくし人妻ですわよ」


「はっ? ええーーーーーっ!!」


「まぁ、戸籍上ってレベルで、夫とは15年以上も会ってませんけど」


「お母様、離婚なさってたんじゃありませんの!!」


「いやですわリカ、この時代そんな簡単に離婚するような女はいませんわ、まぁ、あの人が今どこの女の所にいるかまでは知りませんが」


揃ってポカ〜ンと口を開ける僕と藤堂会長。


「えっ、でも、京香さん、僕とああ言う関係に……」


「あら、野暮な事は言いっこなしですわ、わたくしは鉄ちゃんの赤ちゃんが産めればそれで満足ですもの、それ以上は望んでおりません、幸い経済的にも余裕がありますし、ですから難しく考える必要はないんですのよ、そうですわね良き愛人と言ったところでいいですわ」


「「はあ??」」


「それに〜鉄ちゃんは旦那さまと言うより息子にしたいんですもの、だからリカと結婚してくれれば義理の息子になりますわ、ところで鉄ちゃんは親子丼ってお好き?」


「は? 親子丼ですか、そりゃ美味しいですけど、なぜ今?」


「さ、さ、最低ですわ、お母様ぁーーーーーーっ!! やっぱり今すぐ死んでいただけます!!」


「ちょ、藤堂かいちょー、スタンガンは危ないですって、落ち着いてぇーー!!」


その後、スタンガンを持って京香さんを追いかけ回す会長を止めるのは苦労した、肉体的にも精神的にも酷く疲れた、まさか京香さんと不倫をしてしまうとは……。


婆ちゃんごめんなさい、僕はとても不誠実な事をしてしまいました。



お読みいただきありがとうございます。感想絶賛受付中!!

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