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87.狡い女

平成ラストの投稿になりますね。


夕方になりバベルの塔から黒夢が動かすヘリで戻ってきた鉄郎、貴子はグリーンノアに行ったまま帰ってきていない、ナイン極東マネージャーの花琳との会談が長引いているらしい。



住之江が軽く首を傾げる。

う〜〜〜〜〜ん、ちびっ子 (貴子)の発電所に行ってから鉄君の様子がどこかおかしい、何かボ〜ッとしてることが多いし少し疲れた感じなんよね、京香さんとこで健康診断も受けてきたって言うてたから、診断結果に問題でもあったんかいな?


「鉄君、どないしたん? なんや元気ないようやけど、お腹へった?」


ビクッ


「ま、ま、真澄先生、僕、……いや、な、なんでもないです、でもちょっと疲れが溜まってるみたいで、部屋で休んできますね」


「あ、鉄君……」


うちを避けるようにそそくさと部屋に行ってしまう鉄君、ど、どう言う事、悩みがある時はいつも相談してくれてたのに、まさか嫌われた、えっ、うちなんかやってもうたんか、…あかんさっぱりわからん、どないしよ。


頭の中で嫌な想像がグルグルと駆け回る、そこに偶然通りがかった黒ちゃんに鉄君のことを聞いてみた。


「なあ黒ちゃん、鉄君の様子がおかしいんやけど、なんぞあったんか知らん? ……健康診断の結果が悪かったとか」


「ん? パパなら凄く健康だったゾ、黒夢が保証すル、凄く元気」


「そ、そうなん? せやったらやっぱり、うちがなんかしてもうたんかな、この所春子お婆さまと修行ばっかしとったからな〜、スキンシップが足りとらんなぁ」




そんなやりとりをソファーで寝そべっていた夏子が見つめていた、いつもと違う息子の態度に一瞬首を傾げるも、急に何か思いついたのかガバリと起き上がって玄関に早足で向かう。


「まさかね、でもあの感じは……」


夏子は玄関に置いてあったヘルメットを掴むと、ガレージに置いてある愛機NSR500のエンジンに火を入れた。


パリィーン、バリバリバリ、パイーン、パイーン


「あら、夏子さま、おでかけですか? こんな時間にどうされました、もうじきお夕飯の時間ですが」


「あ、児島、ちょ〜っと研究所まで行ってくるわ、夕飯はいらないわ」


「はあ? お気をつけてレレレノレ〜」


爆音と白煙を上げながら相変わらずとんでもないスピードで去って行く夏子、箒を持ってメイド服を着た児島はポニーテールを首とともに傾げながら不思議そうにそれを見送った。









自分の部屋に戻った鉄郎は明かりもつけず薄暗いなかで一人頭を抱える。たいして物もないさっぱりした室内、その中で一際目立つ大きなベッド(キングサイズより大きい特注)に身体を投げ出し大きなため息をつく。


鉄郎は猛省していた、なぜあの時あのような事をしてしまったのかと。確かに京香さんの言うとおり真澄先生と行為に及ぶ前に事前知識は必要だろう、本番で失敗するのは男として、とてもじゃないが我慢出来ない、もし失敗したらもう一生立ち直れないだろう。

だが、だからと言って京香さんとあんな事しちゃったのは、やはりどう考えても早計だったのではなかろうか、だがしかし、あの京香さんの誘惑に思春期の男子高校生があらがえるわけないだろーーーーーっ!! 

結局、なんかもう流れに任せちゃったけど、これもう絶対浮気じゃんかーーーーっ!! やばい、罪悪感で真澄先生の顔をもうまともに見れなかった、どうしよう、どうしたらいい。



…………しかしあれ程気持ちのいいものだとは思わなかった、京香さん凄過ぎ、禁断の扉を開いてしまった気がする。(これだから男って)



コンコンコン




「鉄君、うちや入ってもええ? さっき様子がおかしかったから気になってもうて」


「ま、まま、真澄先生!! ちょ、ちょっと待ってください!…………スゥ、ハァ、ど、どうぞ」


「ほ、ほなお邪魔しま、って、ええっ!! て、鉄君、ど、どないしてん」


住之江が部屋に入るなり、目に飛び込んで来たのは土下座姿の鉄郎、床に頭を擦り付けて、いつぞやの尼崎総理のスライディング土下座に勝るとも劣らない見事な土下座を披露している。

これには流石に住之江も吃驚せざるを得なかった。


ガバリと顔を上げて住之江を見つめる鉄郎、覚悟を決めた男の目だ。(笑)


「僕、真澄先生にどうしても謝らなきゃいけないことがあるんです!!」


鉄君の真剣な顔かっこええな、って見惚れてる場合やない、謝るってどゆこと?


「ごめんなさい!! 真澄先生のような素敵な婚約者がありながら、僕、京香さんと関係を持ってしまいました」







「へっ?」






鉄君何言うてるのん、あの年増と関係って、あれ? 頭真っ白でなんも考えられへん。





「そ、それって……うちの事はもう……嫌いに……」


「ち、違います!! 僕が一番好きなのは真澄先生です!」


きゃーーー! 鉄君に一番好きって言われた。いやいや待て待て、それやったらなんであの腹黒年増女に先越されとるんや、おかしいやん、世の中間違うとるやん。


「なら、なんであの女と……ま、まさか◯イプされたんか」


「そ、そんな事はされてません!! きょ、京香さんは決してそんな無理矢理なんか……」


「鉄君、……寝取った女庇うとか、めっちゃ傷つくんやけど」


「す、すみませんそう言うつもりじゃ、でも京香さんの誘惑に勝てなかったのは事実でして、それは言い訳にもならないのはわかってます、ごめんなさい!!」


「誘惑ぅ!? あの腹黒女のことや、どうせ「鉄ちゃん、真澄さんとする前に練習は必要よ、でないと真澄ちゃんに「はっ、へたくそ、全然気持ち良くなかったわ、がっかり」なんて言われて愛想つかされてしまいますわ、女ってやっぱりアレが上手な男について行こうとするものよ、一度経験しておいた方が絶対いいわ、私が全部手取り足取り腰とりやり方を教えてさしあげますわ」などと抜かしこいたんやろ」


「えっ、なんで知ってるの?」


「か〜〜〜〜〜やっぱりかぁ〜〜、ええか鉄君、確かにそう言うのが上手いのが良いのは否定せえへん、けどうちは鉄君が初めてなんよ、上手い下手なんてわかるわけないやん、そやからうちのことはこれから全部鉄君に染めてもらおと思ってたんや、せやから絶対そんなことで鉄君を見限るなんてありえへん、もっと自分に自信もってええんよ」


住之江の言葉に今更ながら自分の犯した罪の重さを実感する鉄郎、自分でも流されやすいとは思っていたがこれは流されていい事では無かった、自然と涙が溢れ出す。


「ご、ごめんなさい、真澄先生がそんなこと思うような人じゃないってわかってたはずなのに、僕ってば不安になっちゃって、先生に嫌われたらどうしようって……」


「ほんまアホやな鉄君は、……で、ちゃんと経験を積んだ鉄君は当然次はうちとしてくれるんやろな、じゃなかったらうちめちゃ泣くぞ、三日三晩わんわん泣くぞ、ついでにあの女ボコる」


いきなり泣き出した鉄郎にほだされたのか、住之江はちゃかすように問いかける、惚れた弱みと言ってしまえばそれまでだが自分でもちょっとチョロいと思わないでもない。


「と言うかあの女はマジでボコる!!」




「こんな僕でもいいの?」


「当たり前やんか、せやからいっぱい気持ち良くさせてえな、初めてやないんやろ〜」


「……やっぱり怒ってる?」


「ふふ、誠意は言葉じゃなくて態度でしめてもらおか」


「ま、真澄先生ぇぇ〜!」


「きゃっ! んんっ」












「はぁ、はぁ、…………鉄君の浮気者、どんだけ経験積んだんや、めっちゃ良かったんやけど、ほんま死ぬかと思ったわ」


「ご、ごめんなさい、つい」


しゅんと縮こまって涙目で住之江を見つめる鉄郎、まるで捨てられた子犬のようであった。この男、一生住之江に頭が上がらなくなったのではないだろうか。

浮気した鉄郎は未だ後ろめたさを引きずっている、住之江はと言えば、男性が少ない今の世では男が複数の女性と結婚する事が常識となっている、そんな背景もあり住之江にしてみれば順番にはこだわるが人数については最初から諦めていた所が大きい、その意識の違いが田舎育ちで情報不足の鉄郎にはわかっていなかった。


「も〜う、そない素直に謝られると怒りずらいやん、でも一番最初の相手はうちにして欲しかったわ〜」


「うぐっ、ど、どうすれば許してもらえますか」


「う〜ん、鉄君がぎょーさんの女の子と子供作らなあかん事情は頭では理解しとるんよ、せやけどうちの事は一番多く愛して欲しいねん……あと、先生呼び禁止」


顔を真っ赤にしてもじもじと鉄郎に上目遣いをする住之江、これには鉄郎もきゅ〜んと胸をしめつけられる、男なんて所詮単純なもんである。


「きゃっ!」


「わかった、真澄を一番愛することを誓います!」


「て、鉄君、んっ、あっ」


そのまま唇を奪う鉄郎、驚きと嬉しさで涙目の住之江、なんか2人ともチョロ過ぎやしないか……。




なにわともわれ、第2ラウンドのゴングが今鳴らされた。リア充爆発しろ。










キキィーッ、カチャ



「ふふふ、ここがあの女のハウスね」


お決まりのセリフを吐き白い巨塔を見上げる夏子、傍らにはキンキンとエンジンが焼ける音をたてるNSR500があった。



ダアァン!!


バベルの塔にある研究施設、京香の使う部屋のドアが壊れるくらい乱暴に開け放たれた、そこに立つのは白衣の鬼。




「京香!! あんたやったわね〜」


「いやですわ薮から棒に、何の事ですの?」


「しらばっくれるな、鉄君のことよ、あの子からあんたのエロい臭いがしたわ」


次の瞬間、目にも止まらぬ神速の居合いで抜かれた刀が京香の首に突きつけられていた。京香の細くて白い首筋に切っ先が当てられプツリと血が一滴床にこぼれ落ちる。


「ちょ、ちょっと落ち着いてくださる、血がでちゃってますわ」


「けっ、処女じゃあるまいし血なんか出るか」


「で、何回やったの?」


「さ、三回ほど……最高でしたわ」


「ウガァーーーーーーーーーーーーーーーーッ!! 鉄君の一番搾りがーーー、うらやまーーーーっ!!」


髪を振り乱し絶叫する夏子、血涙まで流している。


「な、夏子さん、流石に実の息子にその反応はドン引きますわ」


「うっさい!! 息子の童貞散らされた親の気持ちがあんたにわかる! 絶対最初の相手は私って決めてたのにぃ!!」


「本当にドン引きですわ、いいお薬処方しましょうか」


「あんたまさか、無理矢理襲ったんじゃないでしょうね」


「誘惑はしましたけど、無理矢理なんてするわけないですわ、見損なわないでくださる」


清々しいほど自信満々に胸をはる京香、その形の良いバストを見ながら歯噛みする夏子、なんだこいつら。


「くっ、こんな年増の誘惑に負けるなんて、鉄君そんなに溜まってたのかしら、だったらもっと早くに私が……」


「私にも鉄ちゃんにも、とっても失礼ですわ」




「ハッ! 記録! 記録は当然撮ってあるんでしょうね!!」


「もちのろんですわ、黒ちゃんにサーバーに保管してもらってるから画質もセキュリティも万全ですわ」


「あんたうちのクロムになにさせてんのよ」


「人類滅亡の危機なんですのよ、記録を撮るのは医者として当然の義務ですわ」


「しれっと言うわね、まさか、あんたが一番危険人物だとは思ってなかったわ」


「だって早くしないと高齢出産になってしまいますもの、悠長に構えてられませんわ」


「いやもう充分高齢でしょ」


「アンチエイジングはバッチリ、20代でも通用しますわ!!」


「私だって鍛えてるわよ、でもそうよね、あまり時間は残されてないわね、私も急がなくちゃ」


「夏子さん、貴女そんな事したら鉄ちゃんに本当に嫌われますわよ」







その頃、夕飯の時間を告げに廊下を歩く児島が、鉄郎の部屋の前で藤堂リカが倒れているのを発見する、何かショックなことがあったのか白目をむいていた、児島は鉄郎の部屋の扉に目を向けた後、そっとリカの衿首を掴むと引きずりながら去って行った。



お読みいただきありがとうございます。感想絶賛受付中!!

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― 新着の感想 ―
[一言] マジか。 京香が初めての相手とはびっくり。 鉄朗の流され易さもここに極まれり。 京香が正妻に遠慮しなかったというのも驚き。 童貞だけは正妻に譲るのかと思ってた。 つまり、正妻がやった後はヤ…
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