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73.ばれて〜ら

ユサユサユサ、チュッ


「パパ起きて、後30分45秒でママが来ル、F-35を突撃させるカ? それとも人工衛星ぶつけル?」


朝も早よから黒夢の物騒な言葉で起こされる、そういえば早朝には貴子ちゃんが来るって言っていたな。

渋々ながら布団から出ようとすると身体が動かない、そぉ〜っと布団をめくればお母さんが中でもぞもぞと抱きついて寝ていた、何しとるんだこいつは、道理で変な夢を見ると思った、思わず下半身の無事を確認する。ヨシッ無事だ。


「ほら、お母さんどいて、起きれない。ぐぬぬ、なんちゅう力だ!! はがれない〜っ」


「んん〜〜っ、てちゅく〜ん、もう1回ぃ〜、もう1回だけぇ〜」


涎を垂らしながら良くわからん寝言をほざくお母さん。少しイラッとする。


ゲシッ!!





海辺の朝、薄紫の世界が広がっている、海岸沿いを鉄郎を先頭に堤防に向かってぞろぞろ歩くのはリカ、京香、黒夢、麗華、夏子の6名だ。お母さんが痛そうに頭をさすってるが知ったこっちゃない。しばらくすると白い建物のフェリーターミナルが見えて来た、佐渡の玄関口と言ってよい場所である。


「も〜う、こんな朝早くに何事ですの」


藤堂会長が眠い目を擦りながらふぁっと小さくあくびをする、どうやら朝は弱いようだ。昨日はぐったりしてたから心配したけど大丈夫そうだね。


「すみません、藤堂会長。こんな朝早く付き合ってもらっちゃって」


「い、いえ、鉄郎さん。だ、大丈夫です、も〜うバッチリ目が覚めましたわ、で、何があるんですの?」


「そうか、会長は昨日の夜はダウンしてましたから、まだ知らせてなかったですね。貴子ちゃんが来るそうなんですよ」


「は? あのちび…、ケーティーさんが?」


「あっ、来ましたわ」


京香さんの声で皆海の方を見る。遠目でもわかる、貴子ちゃんのグリーンノアだ。





冬の日本海、佐渡の両津港沖に朝霧をかき分けて出現する巨大な船、いや、全長6kmに及ぶそれは船と言うよりはもはや島と言ったほうが的確であろう。

加藤貴子の誇る研究所、グリーンノアがヴォイヴォイと低いタービンの音を響かせ湾内を我が物顔で占拠する、港に停まる他の船がまるで玩具のように錯覚する大きさである。



「ワーッハッハーーーーッ!! 祝え、新たなる女王の誕生を!!」



そのグリーンノアの外周滑走路に貴子の姿はあった、お気に入りのワーグナーを大音量で流し、手には拡声器という朝っぱらから迷惑な登場の仕方をする天災幼女。見上げてるので首が疲れる。


昨晩の戦闘機に次いで、今朝は島のような巨大船だ、この騒ぎで次々と両津港に人が集まってくる、島民の皆さんお騒がせしてすみません。


「なっ、なんですのあれ、船? 島? 一体何者なんですのケーティーさんって」

「あれが貴子さんの研究所……」


貴子ちゃんのグリーンノアを初めて見る藤堂さん親子が驚いている、無理もない僕だって初めて見た時はその巨大さに吃驚したもんな、後、女王って何?





「さぁ、鉄郎君!! お迎えに来たよ。これ以上あのデカ乳関西人の好きにはさせない!! 婚約は私の方が早かったはずだ、正妻の座は渡さんぞ!!」


「げげっ、何で貴子ちゃんが真澄先生との婚約の事知ってるんだ?」


貴子ちゃんがニコリと笑う。


「黒夢からメールが来たよ、思わず大阪を消滅させる所だった」


「怖っ!! でも黒夢、スマホ持ってたっけ?」


「内臓型ダヨ」


コンコンと自分の頭を叩く黒夢……確かに、黒夢は存在自体がスマホみたいなもんか、連絡取り合ってたのか、まったく仲が良いのか悪いのか。

けど黒夢の奴意外と口が軽いな。


それにしても聞き逃せないのは……


「貴子ちゃん、僕貴子ちゃんと婚約してないでしょ、最初にお友達から始めようって言ったよね」


「いやだから、鉄郎君はまずお互いに相手を良く知る所から始めよう、僕貴子ちゃんの事全部知りたい、その上で結婚しようって言ってたぞ」


「なんかニュアンスが改竄されてる! それに色々知った上で結婚は無いなって思ったんだけど」


「ガ〜〜〜〜〜ン、こ、婚約破棄。私がメインヒロインだし最近の流行りだから仕方ないとは言え、し、しかし、この私があんなデカ乳関西人に負けたと言うのか、乳か、やっぱり乳が大きくないと駄目なのか!!」


何か失礼な事を言いながら貴子ちゃんががくりと膝を付く、決して悪い子じゃないんだけど一般人の僕では流石に手に余る存在なんだよな。



「くっ、さてはあの女、人畜無害な振りをして鉄郎君に近づき、生足好きの鉄郎君をミニスカで誘惑し、ことあるごとに無駄にでかい乳を密着させて『当ててんのよ』とか言って、バレンタインには隠れてチョコを渡したあげく、抜け駆けでチューなんかしたんじゃないだろうな、あの淫行教師!! 許せない!! あいつ、絶対許せない!!」


グリーンノアの甲板上で地団駄を踏む貴子ちゃん。


「貴子の奴、意外と勘が鋭いな、自分の時はぐだぐだのくせに」


李姉ちゃんが隣で呟く、えっ何、李姉ちゃんバレンタインの時の事知ってるの。


「て、鉄郎さん、あ、あの婚約ってどう言うことですの……淫行教師ってもしかして住之江先生と……」


あっ、やばっ、藤堂会長も居たんでした、真澄先生との婚約知られ……うわぁーーっ、よく見たら野次馬の皆さんにも聞かれてるじゃんかーーっ!! うきゃー恥ずかしーーーっ!!



ヒソヒソ、ザワザワ


「やっぱり、あの男の子もう婚約者居るんだ」

「あれまぁ、あの幼女ちゃん振られたのかい、可哀想にね」

「きゃーっ、朝から修羅場よ、修羅場。これからどうなるの!!」




「……うぐ、恥ずかしくて、もう二度と佐渡には来れないよ」


頭を抱えてうずくまると、京香さんが一歩前に出て貴子ちゃんに呼びかける。


「ケーティーさん、公衆の面前で痴話喧嘩はみっともないですわ!! 貴女の研究所に場所を移して話し合いをしませんこと」


「ん、貴様は確か病院の……いいだろう上がってこい。児島、船を出して回収しろ!!」


さすが京香さん、僕としてもこれ以上の羞恥プレイは勘弁してもらいたい、うん、早く行きましょう、そうしましょう。


ガシッ


「と・こ・ろ・で・鉄く〜ん、お母さん鉄君が婚約したなんて初耳なんだけど、ちゃあ〜んと説明してくれるかしら」


移動しようと歩きだすとお母さんに肩を掴まれる。あはは、お母様、まだ言ってませんでしたっけ、決してわざと報告してないわけではないですよ。







「お帰りなさいませ、鉄郎様」


「児島さん、またお世話になります。今日はスーツなんですね、格好良いですよ」


「冬の日本海は短いスカートだと寒いものですから」


「そうですね、こっちはまだちょっと肌寒いですもんね」


グリーンノアから揚陸艇で出迎えてくれたのは児島さんだ、この前着ていた学園の制服姿からスーツ姿に戻ってる、相変わらず凛々しい佇まいだ。

今日は船尾のドックから船を乗り入れたので、工場みたいに広い研究所の中を児島さんの案内で進む。


「ふぁ〜凄っ、なんて大きい建物なんですの、それにあの虫みたいなロボットは…」


「確かにこれなら、何でも揃っていそうですわね、とうとうこられましたわ」


京香さんがどこか感心したように、藤堂会長はもの珍しそうにキョロキョロと辺りを見渡しながら歩く、この前の戦闘での修理がまだ終わっていないのかルンバ改が忙しなく動き回っている。

うむ、この光景はちょっとSFっぽくてカッコいいよね。


「まだ、修理中なんですね」


「ええ、この辺は青龍で突っ込みましたから、でもルンバ改も増産してますからそれほど時間はかかりませんよ」


「ああ、ルンバ改、お母さんが一杯壊しちゃいましたからね」


「いや〜ね、鉄君。お母さんそんなに壊してないわよ、せいぜい100匹くらいよ」


「全損が426機でした」


「……、ほら〜、一杯壊してるじゃん、ちゃんと貴子ちゃんに謝んなきゃ駄目だよ」


「だって、あれは黒ちゃんが悪いんじゃない、お母さん悪くないもん、正当防衛だもん」


良い歳こいて“もん“とか言わない、黒夢はといえばヒューヒューと口笛を吹く真似をしている、それで誤摩化したつもりか。





5、6分は歩いただろうか、児島さんが一つの部屋の前で止まる、横にある機械に手をかざすとスーッと扉が開いた。

ん、ここは来たことないな。


「本日は人数も多いので、こちらの部屋をお使いください」


中に足を踏み入れると、会議室のような部屋だった、長い机が左右に配置され正面には大きなホワイトボード?そしてその前の席に貴子ちゃんが居た。

座ったまま口の前で手を組み、どこかのゲン◯ウさんのようなポーズをとっていた。あれ、その後ろに居るのってラクシュミーさんだよな?



「遅いぞ児島」

場所の移動だけで終わっちゃた。すみません、もうちょっと話進める予定だったんですけど、間に合いませんでした。

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