66.世界に何人いるんだマイケル
店を出ると一人の男の人が立っていた、肩にかかるくらいのウェーブした赤毛に白人特有の白い肌、歳の頃は20歳位、身長は僕よりちょっと高いくらいか、ブルーの瞳で僕を見つめてくる。顔立ちは整っているのだが、体型は大きな樽を思わせる、突き出したお腹がちょっと重そうだ。それにしても、その鳥の羽のジャケット、派手だなぁ〜、そんな衣裳似合うの宝塚かフラミンゴぐらいじゃないかな。
「おい、そこの少年!!」
いきなり呼ばれて、つい僕の事?と自分を指差す。
「そう、君だ。大丈夫か、その女共に怪しげな店に連れ込まれたのだろう、卑猥な事はされなかったか」
突然の意味不明な質問にキョトンとする、なんだろうこの男の人、久々に会う同性に距離感が掴めない。
「隣の女、その服装、チャイニーズマフィアか。それにそこの品のない乳をした女、少年の腕を拘束して攫おうと言うのか」
ピキッ
「マフィアじゃないわよ!!」
「こら、だれが品のない乳やねん。張りも艶も申し分ないわ!!」
「ふん、盛りのついた年増女がギャーギャーうるさいぞ。それより少年、その女共の毒牙にかかる前に早くこちらに来たまえ、私がきちんと保護してやる」
う〜ん、いまいち話がみえない。ぐるるるぅと唸りをあげる真澄先生と李姉ちゃんを、どうどうと宥める。
「あの〜、何か誤解が有るようですが、この人達は僕の知り合いなんですけど」
「何!! 人攫いではないのか。ツイッターで幼気な少年が変な女に絡まれていると、大量に書き込まれているから来てみたんだが、ほれ」
そう言って男の人がスマホを見せてくる、近寄って覗き込むと確かに結構な数のツイートが流れている、何々。
『ヘリで美少年、降臨!!あれは神よ!!』
『誰か助けてあげて!!美少年が変なおばさんに絡まれている、絶対誘拐よ!!』
『私も見た、あれは中国マフィアよ、チャイナドレスに虎の刺繍入っているもの、犯罪の臭いがプンプンするわ』
『年増が恥ずかしくもなく少年に甘えてる、許すまじ!!』
『すまん、ソレ家の姉だ、うちも許せん!!』
『はぁ、はぁ、はぁ、やばい濡れる』
『お巡りさん、コッチです〜!』
『私もあの幼女みたいに手つないで街歩きたい〜』
『通報したw』
『チエちゃん集合、嘘ぉ!! 美少年がお好み焼き食べてる!!私も食べられたい!!』
『あの子が使うたコテやったら10万出す!!』
『アホか、こっちは20万や!!』
『あっ、マイケル登場、これで勝つる!!』
「「「「…………」」」」
何だこれ、やけに視線を感じるなぁと思っていたが、見てる間にも次々とツイートが流れてくる。あっ、周りの女の人皆スマホいじってる、指速ぁ。
男の人に振り返ると、なっ、と言った顔でドヤ顔をされた。
「それにしても君のような少年が……付き合う連中はよく選んだ方がいいぞ、誤解の元だ」
「「なんやと!!(なんですって!!)」」
「李姉ちゃんも真澄先生もどうどう、落ち着いて」
「ふん、私は住吉区のジョージ・マイケル、この辺りのパトロールをやっている者だ」
「へぇ、警察の方ですか?」
「いや、暇だから趣味で勝手にやっているだけだ、それより君はどこの区の者だ、初めて見るが」
流石にその格好で警察はないだろうとは思ったが、まさか只の趣味のパトロール?とは。大阪の男の人って暇なの?
「武田鉄郎です、大阪じゃなくて長野から来ました」
「ナガノ? そんな特区日本にあったか? ふむ、面白い、ちょっと話をしようじゃないか、おい、車係!!」
マイケルさんがパチンと指を鳴らして叫ぶと、後ろに居た女の人が一人、ニコニコと嬉しそうに前に出て来た、車係って何。
「こんな場所で立ち話もないだろう。 場所を変える車を回せ」
「ハ〜イッ、喜んで!!」
居酒屋の店員か?
「また、呼んでくださいねぇ〜〜っ」
車係と呼ばれたお姉さんがニコニコと手を振って去って行く、彼女はこれだけの為に呼ばれたのか?
中央環状線沿い、赤い屋根でおなじみのレニーズ堺宿院店。男性2人、しかも一人はとびっきりの美少年とくれば店内がざわつくのも無理がない。
「おい、店員、席を用意しろ、落ち着いて話が出来る場所がいいな」
マイケルさんが声をかけると、店長らしき女の人が慌てて席に案内してくれる、趣味のパトロールなんてやってるから顔が広いのかな、マイケルさんの取り巻きっぽい女性達は外の駐車場で出待ちするらしい、もしかしてこの人結構偉い人なのか?
僕とマイケルさん、それと黒夢が同じBOX席についた、真澄先生と李姉ちゃんは後ろの席に通された。真澄先生のお母さんと妹さんは車がセダンタイプだったので定員オーバーと言う事で泣く泣くあの場所で別れている。まぁ、このお話が終わったらそのまま長野に帰るしね、後でお詫びの電話でもいれておこう。
「何でも頼んでくれ、私の奢りだ」
「うちはキウイサワー、あっ待って、ファミレスのくせに獺祭もあるんか!!」
「角ハイボール」
後ろの席で遠慮なくファミレスでアルコールを頼む2人、さっきビール飲んでなかったっけ。
少し迷ったがホットコーヒーを頼んだら店員さんがドリンクバーなのにダッシュで席まで持って来てくれた、ありゃ、コンビニと同じ味だ。後はデザートだが、白玉あずきかキャラメルハニーパンケーキかどっちにしよう、うん、決めた! ここはパンケーキにしよっと。(結局こいつも遠慮はない)
溶けたアイスを絡めながらパンケーキを頬張っていると、マイケルさんが隣の黒夢ににっこり笑って声をかける。
「可愛いお嬢ちゃん、君は何も頼まんのかね、遠慮はいらないよ」
「電池残量に問題はナイ、黒夢はパパの護衛、気にスルナ」
「? お嬢ちゃんは武田君の娘なのか、妹じゃなく、それにしては歳が」
「愛に歳は関係ナイ」
黒夢の言葉に余計に混乱したのか、マイケルさんが僕に説明を求める視線を向けてきた。
「ああ、この子は黒夢。養子みたいなもんなんです、本当の親子じゃありません」
僕の言葉に黒夢が不満げに肘で脇腹を突いてくる、ちょ、痛い痛い、血は繋がってないんだから本当の事でしょ。
「ほう、では武田君のことはお義父さんと呼んでもいいかな」
「「チョット、ナニイッテルカワカラナイ」」
後ろの席から「こいつ絶対ロ○コンよ」「うちらのおっぱいで欲情せんのが証拠や」とヒソヒソ耳打ちしてくる。ちょっと、聞こえちゃうでしょ、失礼だからやめなさい。
実際男性特区の中では幼い頃から大人の女性の欲情した視線に晒され、それに嫌気がさしてロリ○ン方面に走る男性が多く、大きな社会問題となっている、女性は女性で傲慢に育った男性に絶望してショタに走る者も多い、悪循環のループ完成である。
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久しぶりの同性であるマイケルさん、男同士意外と話が弾む、ちょっと変だけど悪い人ではなさそうだ。
「なんと!! 男性特区に住んでいない! 大丈夫なのか、そんな危険な場所で」
マイケルさんが凄い吃驚している、まぁ、田舎だからあまり犯罪もないけどね。
「政府のテスト学生として長野の高校に通っているんですよ、田舎なので熊や猪は出ますけど、結構平気ですよ」
「なっ、熊にイノシシ!! 君はそんな過酷な場所に住んでいるのか、オーマイガッ、政府は一体何を考えてるんだ、男性虐待ではないのか!」
オーバーなリアクションで叫ぶマイケルさん、えっ、そんなに過酷な場所でもないですよ。
「どうしても耐えられなくなったらいつでも言ってくれ、黒夢ちゃんと君の場所くらいこの僕が大阪に用意してみせる!! なんなら府知事にかけあってあげよう!!」
「はは、大丈夫です、婆ちゃんや李姉ちゃん達もいますし」
う〜ん、悪い人では無いんだがちょっと対応に困る時がある、笑って誤摩化すことにする。
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「ごちそうさまでした」
店を出てマイケルさんにお礼を言う、だけどマイケルさんはレジには行かず、いきなり現れた女の人がお金払ってたけどいいのかな?
「hahaha、久しぶりに鉄郎君のような元気な男と話せて楽しかったよ、行き先は大浜公園だったな、今車を呼ぼう」
「あ、すぐ近くだから歩いて行きますよ」
「何、ここからだと1kmはあるぞ、月一でジムに通って鍛えてる私ですら嫌になる距離だぞ」
「どんだけ歩かないんですか、退化しちゃいますよ」
「鉄郎君はオリンピックでも目指してるのか?」
大阪の男の人の不健康さに呆れつつ店の前でマイケルさんに手を振って別れる、僕のスマホに初めて男の人のアドレスが追加された、黒夢にもちゃっかり名刺を渡していた、見せてもらうと肩書きが自由人となっていた、ニート?
ヘリに戻ると児島さんが出迎えてくれる、中では婆ちゃんがたこ焼きを食べながらワンカップを渋い顔で飲んでいた。
「婆ちゃん、幾ら使ったの?」
「うっ、い、いや、あそこは1-2で堅いと思ったんだよ、なのに6-5なんて大穴……」
「婆ちゃん、夕飯はお酒無しね」
「地酒の呉春を買ってきたんだが……」
「無しね!」
「……はい」
ほな、長野に帰るとしますか、今度は串カツを食べにこよう、イカ焼きも良いな。
食い意地の張った小さな野望を胸に、鉄郎は大阪を後にした。
とうとうブクマが1000を超えることが出来ました、読んでくださっている皆様本当にありがとうございます。完結目指して頑張ります。




