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52.ゆけ、ゆけ川口隊長!

黒夢は考える。このままでは、折角生まれてきたのにパパの役に立てないと。護衛役の麗華に1敗1分けと言うのも、黒夢の最高傑作と言うプライドに影を落としている。我思う、故に我有り。自我を持つに至ったアンドロイドは電気ウナギの夢を見るのか。(意味不明)

自分は愛するパパのために、一体何が出来る、現在、地球上で最も優秀なAIである黒夢は、その莫大な演算能力をフル稼働し始めた。





キィーーッ、キィーーッ、キィーーッ、コッ、コッ、コッ、バサバサバサーーッ


まるで洞窟を思わせる薄暗い研究所の廊下に無数の骸骨が落ちている、備え付けられたスピーカーからは、まるでジャングルのような鳥の声や猿の鳴き声が聞こえてきた。転がっている骸骨は、良く見れば埃すら付いていない真新しいプラスチック製だ、さらに天井からは玩具の蛇まで落ちてくる。上を見上げればお掃除ロボのルンバ改が、毒蜘蛛やサソリの格好をしてカサカサと動き回っていた。何これ?


「キャッ!」


「どうしたの、李姉ちゃん」


「いや、なんかサソリみたいなの踏んだ、ちょっと! 貴子、何なのよこれ!」


「わっはははーっ、今我々は、人類未踏の秘境を目指して探検中なのだよ!」


「川口浩子か!!」


「誰それ?」


「いや、私の師匠が昔ビデオで見てたのよ、そう言う探検番組」


「ちょっと時間足んなくて、底なし沼と現地住民は用意出来なかったんだけどね、雰囲気、雰囲気」



どうやら演出らしい、こんな事のためにどれだけ手間をかけているのか、ルンルンと楽しそうに探検隊の先頭を行く貴子ちゃんが、毒蜘蛛(ルンバ改)を素手で払いのける、毒蜘蛛でかいな。


「大丈夫、戻ってくる時には、綺麗に片付けさせとくから」


「えっ、そう言う番組なの?」



それから僕達は色々な部屋を見て廻った、なぜか大量の黒猫がいる部屋だったり、児島さん自慢の家庭菜園、車や飛行機の格納庫、何作ってるのか不明な巨大工場、コンビニのような売店まで有った。このラボだけで自給自足できそうな施設だ。今はトラックすら運べる大きなエスカレーターで、さらに地下に向かっている。まるで海の上のジオフロントだ、ガンダムとか作っていても不思議ではない、キュベレイとかでもいいな。


「ふあ〜、それにして広いね、こんなに大きな施設に2人きりじゃ、使いきれないんじゃないの」


「元々はナイン・エンタープライズで作ってたんだけど、途中で私のものにしたんだ。ここで作った製品とかは買い取って貰えるし、ほとんど機械まかせだから、そんなに手間はかからないよ」



ガゴンッ



僕達を乗せたエスカレーターが停止した、随分と下まで来たな。貴子ちゃんがひょいと飛び降りると壁のボタンを押す、壁がゆっくりと左右に開くと一枚のピンク色の扉が現れる。


「へへ、次に見せるは、このラボで一番の自慢なんだ」


ドアノブに手をかけ、こちらに振り向いた瞬間、長い白髪がフワリと舞い、えげつないほど美少女の微笑みで見つめられた。一見愛らしいのだが、その残念な中身を知る僕としては、今度はどんな変なものが出てくるんだろうと思っていた。



扉が開かれ、僕たちがその部屋に足を踏み入れると、目に飛び込んでくるのは青、青、青。

視界一面が青に染まる。そこは床も壁もガラス張りの海底の展望台だった。



透明度が高い海だからこその光景。まるで海の中に入ったように錯覚して息を止めるが、深呼吸して肺に空気を送り込めば、少し冷静さを取り戻す。

大きなアオウミガメが目の前を悠々と泳いで行く。尾びれに黄色いラインの入ったチョウチョウウオの番がその後を追っている、ツバメウオが群れをなして横切ると影を落とし一瞬暗くなる、ナメモンガラの黄色が乱舞していた。あっ、遠くの方にいるのってザトウクジラじゃないのか!


「……………………」


言葉が出ない、圧倒的な自然の美に泣きそうになる。こんな光景は初めて見た、異次元を思わせる幻想的な風景に見入っていると、貴子ちゃんがちょこんと隣に来る。


「どう? 感動した?」


「うん、凄過ぎて言葉にならない」


「良かった、ここは鉄郎君に絶対見せてあげたかった場所なんだ、地球って綺麗だよね」


「うん……」


僕は時間も忘れて、只只立ち尽くしていた。









住之江真澄は、学院が春休みに入ったのを利用して、実家の大阪に帰省する事にした。長野市から車で松本市へ、松本空港から約50分ほどエンブラエル170に揺られると大阪国際空港に降り立つ。大阪は日本で4つしかない男性特区に指定されているために、政府によって入場が管理されており、都市部ではかなり面倒な手続きが必要となる、住之江はそれを避けるために一度神戸まで行き、そこから船で実家のある堺に入るルートを選択した。大和川を挟んで向こう側は男性特区となっているので、堺は丁度その外側に位置するのだ。


道を歩いていると特区から遊びに来ている男性をチラホラと見ることが出来る、それだけで大阪に帰って来た実感が沸く、長野ではまず見られない光景だ。小太りのおっさんが数人の女性を引き連れて、かいがいしく世話を焼かれている、あんな冴えないおっさんでも、この時代では貴重な男性だ、とても大事にされている。キャリーバッグを引きながらキョロキョロと懐かしい町並みを進む、と言うかデブが多いな、運動しろ、運動。




「おかん、ただいま〜」


外に自転車が並ぶ小さな店のガラス戸をカラリと引けば、そこには少しぽっちゃりとした女性がつなぎを着て、自転車を組み立てていた。

住之江 真琴まこと47歳、住之江真澄の母である。今ではすっかり大阪のおばちゃんで、ぽっちゃりしているが若い頃は娘に似て大層なべっぴんさんであった、軍手を外しながら人なつこい笑顔で、久しぶりに帰って来た娘を出迎えた。


「あら、真澄。早かったやん、おかえり」


「ああ、飛行機使うてんよ、神戸回って船で来た」


「また贅沢して、飛行機やったら電車の方が安ない?」


「ええやん、そっちの方が楽やねん、それに乗り継ぎ考えたらなんぼか安いくらいや」


「お昼はどないする? おうどんさんでええ」


「ええよ、あぶらかす増し増しで頼むわ〜、長野ではあぶらかすメジャーやないから、なかなか売ってへんのよ」


「あら〜、それはさびしいな〜、あんなに美味しいのにね〜」



親子でかすうどんをすすっていると、実家に残っていた妹もじきに帰ってきた。妹は男性特区のある大阪からは、決して離れようとしない、女だらけの田舎町にわざわざ一人で移住した真澄に「女として終わっとる」とまで言い放ったくらいである。


「おっ、お姉じゃん、おかえり〜」


久しぶりに会った妹は金髪になっていた。派手な蛍光ピンクのジャケットに、生足ホットパンツという露出の多い格好、こんがり焼けた褐色の肌、メイクもかなり派手になっていた。どこのギャルやねんと思わずツッコミそうになる。


「おう、ただいま〜、真波まなみ、あんた、また派手な格好やね〜、二十歳はたち過ぎとるんやからもちっと落ち着き」


「何言うてんの、これくらいやないと、男の目に止まらへんよ。お姉こそ地味すぎるわ、どこの教師やねん」


「いや、うち先生やっとるんやけど」


「まあええわ、そんなことより! おかんもお姉も見てみて、今日ご飯奢った男の人に写真撮らせてもろたんよ! ええやろ〜、まだ28やってん」


妹のスマホに写し出されたのは、不機嫌な顔をしてワインを飲んでる赤毛の白人男性だった。ギョロとした目つきに、不健康そうなガリガリの身体、普段から鉄郎を見慣れている真澄にとっては「なんやこの不細工、けったいなもん見せるなや」と言いたくなった。しかし妹の嬉しそうな顔を見て、これが普通の反応だったことを思い出す。男と言うだけで、世の女性達には貴重な存在なのだ。


「へへ、ご飯代は痛かったけど、写真まで撮らせてもろたし、もうちょいつぎ込んだら最後までいけるんとちゃうかな」


「また、あんたは〜そないな夢ばっか見てないで、さっさと人工授精で子供作りや」


「せやかておかん、折角男性特区の傍なんやから、ワンチャン狙わんと女やないで! 普通に順番待ちしとったら婆さんになってまうわ」


この会話も男性特区大阪ならではのものだろう、この地では集められた男性を巡り、日夜女の激しい闘いが繰り広げられているのだ。真澄はそんな争いが好きになれずに長野に移ったのだが、そのおかげで鉄郎と会えたのは非常に幸運な事だった。


「真波はうちに似て顔はええんやから、うちを見習ってもうちょっと素材を活かす格好の方が、モテるんとちゃう」


「えっ、お姉。なんか余裕の発言やね、ま、まさか、男が出来たんとちゃうやろな」


「何、うちに男おったらあかんの」


「「はぁ?」」


真澄が顔を赤くして照れたように拗ねる、家に居た頃には見せたこともない女の顔に、母と妹が驚愕の表情を作る。一部の女性のみが持つ余裕のオーラを感じて、真波は戦慄を覚える、まさかと思いつつ声を発した。


「お、お、お姉、どゆこと。 嘘やろ、お姉は男に興味無かったんとちゃうの」


「ふっ、それは彼(鉄君)に会う前の事やわ、ホレ!」


真澄は素早く、スマホの写真フォルダから、お気に入りの1枚を映し出して2人に見せつけた。母と妹の視線がスマホに釘付けになる。




「「ななな、なんやてーーーーーーーーーっ!!!!!」」




母真琴はスマホをじと〜っと穴が開くくらい凝視する。それはツーショット写真、照れたようにはにかんだ黒髪の高校生らしき美少年、その少年と仲良く腕を組んで映る、幸せ一杯ににやけ顔の我が娘。一瞬CGかとも思ったが、真澄はそんな小細工をするような性格ではない。と言う事は……。


「ま、真澄、自首するなら、おかあちゃん一緒に警察行ったげる、悪い事は言わん、今からでも遅ないで」


「娘を犯罪者扱いすな!!」


「せ、せやかてお姉、それはありえんやろ……お姉みたいなきっつい年増女が、そないな美少年と……犯罪やろ」


「しばくどワレ!!」




二人に鉄君との運命の出会いを脚色なし(結構盛ってます)に情熱的に話してやる、その結果、母は混乱し自転車の車輪をずっとカラカラ回している、妹はショックで寝込んだ。なんだこの失礼な家族は、結婚式には絶対に呼んでやらんぞ。(ちょっと気が早いです)

この後、ショックから立ち直った妹が「うちも長野に住む!」と言い出すのだが無視する事にした。



折角実家に帰ってきたのに、微妙に居心地が悪くなった真澄は、そのまま手つかずになっていた自分の部屋で過ごすことにした。鉄郎の写真を眺めながらニヤニヤしてると、時間がたつのも忘れる。(妄想では、老後に鉄郎と二人で縁側に座り、お茶を仲良く飲んでる所まで終了しました)


「今頃、鉄君何してるかな、電話してみようかな〜、けど重い女と思われるのもな〜」


西日が窓から差し込む頃になると、母も復活したのか階下から呼びかけられる。


「真澄〜、おかあちゃん今日夜から町の寄り合いやから、ごはん早よ食べちゃって〜」




1階の居間に降りると、ホットプレートを囲んでちょっと早めの夕飯となった。


「ねえねえ、お姉、鉄君ってお姉でもいいんなら、うちやったらもっとええんちゃうかな、ほら歳だってうちの方が若いし近いし」


「ぶちころすぞワレ!」


「しっかし、この真澄があんな美少年とな〜、神様ってホンマにおるんやな。今度、天神さんにお参り行ってこなあかんね」


「神さんの力とちゃう、うちの魅力の勝利やわ、わっはははーーーっ!」


「「調子に乗りくさって、いつか刺したるかんな〜」」



チャッチャラ〜チャラ


『ニュースをお伝えします。深刻な少子化対策のため政府は……えっ、少々お待ち下さい。何、これって本当なの?』



おかんと妹と一緒に、お好み焼きを食べながらテレビを見ていると、とんでもないニュースが流れてきた。思わず手にしていた缶ビールを落としてしまう。床を転がる缶がコツンと足に当たる。まだ残っていたビールがシュワシュワと床に広がった。



「な、なんやて……」


【ブクマ900件感謝記念】



「加藤貴子だ、こんな後書きまで読んでる律儀な読者にお知らせだ」


「この度、男女あべこべ?いいえこれが現実です。のブックマークが900件を超えた、900だぞ、900。このニッチなジャンルで、これがどれだけ大変なことかわかるか、児島」


「大変ありがたいことですね、貴子様」


「うむ、確かに。まぁ、他のあべこべ作品はもっと凄いのいっぱい有るから、比べられても困るがな。コラそこ! 他の作品を調べるな、1万越えの作品ならこれより面白いの当たり前だろう!!アイドルなら人気あるに決まってるじゃないか!!!」


「貴子様、どうどう、これでも飲んで落ち着いてください」


「おう、って青汁じゃねーか!! 私が苦いの駄目って知ってるだろ」


「お子様ですか」


「いいんだよ、人生苦い事ばっかりなんだから、口にするものぐらい甘い方がいいじゃないか」


「……自業自得」


「何か言ったか。まぁいい、そこで私からの提案だ、ほれ下の方に感想の欄があるだろ、そう、そこだ、ご祝儀だと思って一言感想入れてみ、貴子ちゃんをもっと出せでも、貴子綺麗でもいいぞ。小説を続けるには、モチベーションを高める必要があるからな、待ってるぞ」


「結局、ただの感想クレクレですか…」


「………感想によっては児島が脱ぐぞ」


「ちょ、何言ってるんですか貴子様、なろうでエッチなのは駄目ですよ!」


「いや、ノクタって手もあるぞ」


「イヤァーーーーーーーーーーーッ!!」




いつもお読みいただき、大変ありがとうございます。これからも完結目指して頑張ります。

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