表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
104/213

103.G9

ゆっくりと開いた扉の向こう、ドーム状の高い天井からはクリスタルがキラキラと眩しい豪華なシャンデリア、それをグルリと囲むようにマホガニーの落ち着いた色合いの大きな円卓が配置されていた。


「はっ、円卓会議のつもりか、まだ上下関係がわかってないみたいだな」


貴子ちゃんが隣で不穏な事を呟いた。う〜ん貴子ちゃんは他の人を見下す癖があるからな、上座のないことが我慢できないのだろう。



インド、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、日本、イタリア、ロシア、中国、世界政府を取り仕切るG9と呼ばれる主要国、各国の国旗をバックに座る代表者達、そのうちの1人中国国旗の前に座る漢服の老女がインドのカンチャーナに目配せする、お前が切り出せと言う意味だろう。


「ちっ、偉そうに」


カンチャーナは不満げに呟くが、すぐに作り笑いを浮かべて鉄郎達に入室を促した。


「どうぞお入りになって、皆さんお待ちですわ」





僕が1歩前に出ようとすると婆ちゃんに止められる、そして婆ちゃんとお母さんがズイと僕の前に立った、後ろには児島さんが澄ました顔で控えていた。

先に部屋に入った婆ちゃんとお母さんだが、突然目の前のお母さんから物凄い殺気が立ち昇る。後ろにいた僕ですら鳥肌が立つほどの殺気、この部屋だけ重力が何倍にもなったように錯覚する、部屋の中からガタッと椅子が動く音や人が倒れる音が聞こえた。なんかの漫画でこんなようなシーン見たことあったな覇王色の覇気だったか。


「こらバカ娘、もう少し抑えな、話が出来ないじゃないか」


「ふふ、ちょっと威嚇してみただけ〜♪」


「チンピラみたいな真似はおやめ」


今日の2人は刀を持ち込んでいない、まぁ鉄扇や警棒くらいは身につけているが。お母さんは殺気を撒き散らしたが物理的には入室しただけだ、その所為で誰も文句が言えない状態だった。アメリカのメアリー・ブルックリンは眉間に皺を寄せながら武田親子を睨む。


「あれが武田春子。我が軍にも彼女の教えを受けた者は多い、今も尚崇拝を集めるカリスマか、だが所詮は歳には勝てはしないだろう現役の軍人が負けるはずがない、それよりその隣、武田夏子、何なのあれ、まるでモンスター、殺気だけで息苦しいとか勘弁して欲しいわね」





さて一先ずG9のメンバーを紹介せねばなるまい、インドのカンチャーナ (48)、アメリカのメアリー・ブルックリン (42)、日本の尼崎 (50)、イギリスのエリザベス(55)、フランスのクレモンティーヌ(44)、ドイツのラウラ(46)、イタリアのジュリア・ロッシ(39)、ロシアのアナスタシア(32)、中国の楊夫人 (73)の9名の女性達である。


「ふぉふぉ、春子さんとこのお嬢ちゃんは相変わらずやんちゃだね」


「マダムヤン、あんたまだ生きてたのかい?」


「ご挨拶だね、その言葉そっくり春子さんにお返しするよ」


「ふん、ひ孫の顔を見なきゃならないからね」


中国国旗を背にしたお婆ちゃんが婆ちゃんに話かける、どうやら知り合いらしい、深い皺を刻んだ顔を嬉しそうに破顔させた。

その雰囲気を壊すように後ろでじれた貴子ちゃんが不機嫌になる。



「おい、いつまで主役を遮ってるんだ、早くどけよ」


「うっさいわね、安全の確認をしてたのよ」


「喧嘩売ってるようにしか見えないぞ」


渋々お母さん達が左右に割れると貴子ちゃんが部屋の中に入る。



「待たせたなババア共」


「「「「あんたが一番ババアだろ!!」」」」



貴子ちゃんの第一声に部屋中から突っ込みが入る、一瞬「えっ」と思うが考えてみると実年齢は貴子ちゃんが一番上なのか?


「鉄郎くん、私は生まれ変わってのセカンドライフだから一番若いよ」


うん、精神年齢は一番幼いかもね。


「さて、ババア共。私のパートナーにして国王である彼を紹介してやろう、ありがたく思えよ」


貴子ちゃんに、さぁと促されて一歩前に出る、各国のお偉いさんを前にして緊張感がいやがおうにも高まる。だけど僕も国王になった以上情けない態度を取るわけにもいかない、胸を張って目の前の人達を見渡して声を張る。



「武田鉄郎です。よろしくお願いします!!」


流石に気の利いた事は言えず本当に挨拶だけになってしまう、だってしょうがないじゃないか中身は只の高校生なんだから、こんな世界的な会議に出るなんてちょっと荷が重いっての。

すると、パチパチと拍手が聞こえてくる。


「ふぉふぉ、なかなか良い男じゃないか、私があと50は若かったらほっとかないね」


先程、婆ちゃんと話していた中国のお婆ちゃんだ。それに釣られて他の人達からも拍手がおこる、尼崎さんはなぜかちょっと涙ぐんでいた。




ようやく席に座り、集まった人達の紹介を受ける、首相だ総理だ大統領だと凄い肩書きを次々と名乗られる、イタリア首相のジュリアさんにはなぜかいきなり食事に誘われた、やはりラテン民族だけにノリが良いのか。貴子ちゃんがキレてたけど。




鉄郎に対するG9の反応はそれぞれだ、鉄郎を貴子への生贄の形で差し出してしまった日本・インド・アメリカは同情の目で、ヨーロッパ勢は見目麗しい男子の姿に頬を染め感嘆のため息をこぼす、ロシア・中国は謎の微笑みを浮かべていた。



イタリア首相のジュリア・ロッシは鉄郎を熱い視線で見つめる。


「あれが武田鉄郎くんか、写真で見るよりずっといい男だわぁ、あれじゃ加藤貴子が入れ籠むのも無理ないわね、悪魔に見初められた悲劇のヒロインって感じかしら思わず助けてあげたくなっちゃうわ〜」







貴子ちゃんが小さな身体で椅子にふんぞり返る、態度わるいな。


「ま、貴様らに今日集まってもらったのには理由がある、わかっているな、特にカンチャーナ」


「そ、それは、貴女が私達に情報を開示しないから、視察しようと」


「軍艦や潜水艦引き連れて視察もないだろ、なあメアリー大統領」


「私はインドのカンチャーナに頼まれて護衛に軍を出したまでよ、それよりそっちこそアメリカの新鋭艦沈めたでしょう、どうしてくれんのよ!」


「知ってるんだぞ大統領、貴様、うちに向けて弾道ミサイル撃とうとしたろ、まぁスイッチ押しても発射出来ないようにプログラム走らせてるけどな」


「ぐくっ、な、なんのことよ」


何やらきな臭い話から始まったぞ、マイケルさんが来訪した裏ではそんな事があったのか。えっ貴子ちゃん軍艦沈めたの、戦争じゃん。


「ふぉふぉ、貴子さん、儂らとしてもあんたが何してるのかわからんと不安なんじゃよ、少しくらいは情報を流してくれてもいいんじゃないかね」


「そうよ、それでなくても貴女は世界を滅ぼしかけた前科があるのよ、あの巨大な塔は一体何の兵器よ!」


中国の楊さんとインドのカンチャーナさんが貴子ちゃんに問いかける、貴子ちゃんは面倒臭そうに2人を睨み返す。


「バベルの塔は兵器なんかじゃないぞ、立派な発電施設だ。後、貴様らの国になんぞ一欠片も興味はない、だから余計なちょっかい出してくんな」


「だったら、人工衛星のコントロールを戻しなさいよ、でないと安心できないわ!!」


「立場がわかっていないようだなメアリーちゃん、私はお願いしてるんじゃなくて命令してるんだ、鉄郎くんとの新婚生活を邪魔するようならお前の国くらい1日で壊滅させるぞ」


「ちょ、貴子ちゃん、だめでしょそんな喧嘩腰じゃ、本当に戦争になっちゃうよ」


「大丈夫、始まる前に終わらせてやる」


「貴子ちゃん!!」


貴子ちゃんのあんまりな態度にバンと机を叩いて立ち上がる、皆の視線が一斉に僕に集まった。

僕はぐるりと真剣なまなざしを皆に向けた。



「僕から皆さんにお願いがあります」


会議場がシ〜ンと静まりかえる。



お読みいただきありがとうございます。感想絶賛受付中!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ