表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/213

100.考え事

早朝6時、コロンボの港に停泊していたグリーンノアの甲板上に4つの人影、そのうち3人はゆるりと釣り糸を垂らしていた。




朝も早よから李姉ちゃんにいきなりマグロを釣ろうと誘われて屋敷を出る、ガレージからトゥクトゥクを引っ張り出した所で散歩?帰りの亜金と合流した、その傍らにはマイケルさんがぜぇぜぇと息荒く死にそうな顔で芝生に仰向けで倒れていた。亜金曰く散歩をしないと運動不足になるからと、マイケルさんを走らせているらしい。犬か!!


「パパ、亜金も今日はグリーンノアにイク、一緒にイイカ」


「ああ、今日は亜金が海の見廻りなのか、いいよ一緒に行こう」


「感謝、ほらブタ野郎起キロ、海に行くゾ」


「はひぃ、も、もう少し休ま…」


言葉途中で亜金は80キロはあるマイケルさんをひょいと持ち上げトゥクトゥクの後部座席に押し込んだ。それを見た李姉ちゃんが首を傾げる。


「なんか人数増えたわね、釣竿足りるかしら?」


少し冷んやりした朝の風を切って海岸沿いの道をビィイイイイとモーターを鳴らし走る、4人乗車だが貴子ちゃん製作のトゥクトゥクは力強くタイヤを回す、左手に見える海が朝日を浴びてキラキラと輝いていてとても綺麗だ。15分も走れば港に停泊しているグリーンノアにたどり着く、それにしてもいつ見てもでっかいな、隣に留まっているタンカーが小舟に見える。


海に大きく張り出した防波堤の先端にトゥクトゥクを止めると、ヒョイと降りた亜金の瞳が青く光る、するとグリーンノアの昇降用のタラップがゴンゴンと音をたてて降りてくる。


「グリーンノアって大き過ぎて船と言うより島に乗り込む気分になるよね」


「えっ、これ船なのか? この島のどこからどこまでが船なんだ」


「はは、マイケルさんは初めてでしたね、これ全部動くんですよ」


「マジか!!」



マイケルさんがポカ〜ンと口を開けてるのを横目に中に入ると、船底でタービンが唸り足元が小さく震える、えっ動かすの? すると真っ先に走っていった李姉ちゃんが釣り道具を持って駆け寄って来た。


「はい、鉄君。釣竿。早く上に行くわよ、お魚が待ってるわ!」



甲板上に出ると後ろの方に港が見える、少し沖に移動したらしい、グリーンノアは揺れが小さいので動いてる感じが無いんだよな。

それにしても、目の前に広がる水色の海は壮観だ。透明度の高い南国の海、なんで海って南の国の方が綺麗なんだろう、全部繋がってるはずなのにな?


「さぁ! 釣るわよーっ!!」


李姉ちゃんが隣で嬉しそうに竿を振る、いつぞやの投げ釣り用のでっかい竿だ、本当にマグロ釣る気だな。

僕とマイケルさんはそんな大きな竿使えないので、小ぶりな竿に重りと釣り針がついただけの簡単な仕掛けでポチャンと海に投げ入れる。イカの切り身を餌にしてるのだが、初心者のマイケルさんは亜金に餌を付けてもらっていた、意外と面倒見がいいじゃないか亜金は。

男2人で波音を聞きながら釣り糸を垂れる、こういうのんびりとした雰囲気は中々良いな、はしゃいでる李姉ちゃんを除けば静かな時間が流れる。


「鉄郎くん、海エモいな」

「そうだね〜青くて尊いね〜、あっ、釣れた」

「おっサバだな、揚げたやつパンに挟むと美味いぞ」

「アトで調理してアゲルよ、パパ」



亜金によると沖の方ではハシナガイルカの群が泳いでいるらしい、亜金はあんな遠くが見えてるの? そしてイルカに追われて来たのか、キハダマグロが李姉ちゃんの竿にかかった。


「しゃーーーっ、ヒット!!」


近くまで引き寄せると豪快に引っぱり上げる、頭の上をお魚が飛んでいるのが見えた。すげえ、カツオの一本釣りみたい。

体長60cmはあろうキハダマグロを亜金が空中で華麗にキャッチする。小さな亜金がマグロを持っていると凄く大きく見える。


「ドウスル、すぐに食べるカ?」


「生け簀に入れときなさいよ、まだまだ増えるわよー」


李姉ちゃんは再度投げ入れ体制に入った、亜金がピチピチ跳ねるマグロを手に僕の方に問いかける目を向けてくる、金髪幼女とマグロの取り合わせがシュールだ、僕が苦笑いで頷くとコクリと頷き滑走路に空いた穴に投げ入れた。ポチャンと水音がする、あっ、そこが生け簀になってるんだ便利だな僕もさっきのサバ入れとこう。


「何をあんなにはしゃいどるんだ、あのチャイニーズは?」


「はは、李姉ちゃん釣り大好きなんですよ」


「ほ〜ん、おっ、なんか糸引いてる!! うおっ、引っ張られる!!」


「当たりだ、マイケルさん、ゆっくり、ゆっくりリール巻いて」




糸の先にぶら下がってビチビチと動くのはアジ、驚きながらも笑顔でそれを見つめるマイケルさん。やっぱり釣れると嬉しいよね、それが初めてなら尚更だ。


「おおっ! 鉄郎君見てくれ、釣れた、釣れたぞ!! 凄いな私が釣り上げたのだ、凄い!」


「20cmは有りますね、やりましたねマイケルさん」


「おう、凄かったぞ、こう、ビビビっと手に振動が伝わってきて、良しこの魚をゴールデンフィッシュと名付けよう」


「金魚?」





その後は2人とも当たりがこなかった、しばらくすると隣に座るマイケルさんが話しかけてきた。


「なあ、鉄郎君、君はこの国を使って何をするつもりなんだい?」


「えっ、何を?」


「ん、なんだ? 私は鉄郎君があの戦闘民族を使って世界征服でもするつもりなのかと思ったんだが、違うのか?」


どっからその結論に達したんだこの人、黒夢や貴子ちゃんならまだしも僕は人畜無害の高校生だぞ。


「そんな大それた事出来るわけないじゃないですか」


ふむと首を傾げて考え込むマイケルさん。


「……私は今まで幾つかの国を見て来た、そんな中でこの国はかなり異常だよ」


「そうなんですか?」


「君は他の国の男性特区を見た事があるのかい」


「いえ、僕が行った事があるのは検査で行った東京とマイケルさんと会った大阪だけです」


「ふむ、検査で行ったならそれは特区と言うより病院の中だろ、それに君と出会ったのは大阪でも特区の壁の外側だ」


「そう言われればそうですね、僕は外の世界の男性をあまり知りませんね」


「今の時代はね、鉄郎君。特区にいる男性は働かないんだよ」


「へっ? 働かないでどうやって生活してるんですか?」


「そりゃ私のように意識の高い人間は、社会に貢献するため自主的に動いたりもする、それでも決して労働として働いてるわけじゃないボランティアだな。ここ数年政府の男性への援助も待遇もかなり良くなっているしね、衣食住は保障されているよ」


それってこの10年で男性の数が減って来ている事に関係してるのかな、人数が減っているなら男性の待遇が良くなるのも頷ける話だ。しかし、一応働いてない自覚はあったんだなマイケルさん。


「それがどうだいこの国は、男性の君が、ましてや国王の君が率先して社会に出て働いている、周りが女共だらけなのはどこの国も一緒だが、あの戦闘力がありながら襲われる事も無いし、私に媚びることなく自然体で接してくれる」



「まあ、貴子ちゃんが作った国ですからね」


「ちょっと違うな、あの幼女王貴子ちゃんは君の為にこの国を作ったんじゃないのか、あくまでも君を中心にこの国は成り立っていると私は見ているんだ」


「そ、そんなことは……」


「別にそれが良い悪いと言ってるわけではないのだ、この国は幼女も多いし、特区にいた頃とは比べ物にならないくらい充実している、案外ここの生活は気に入ってるんだ、だから君がもし何かやりたいことがあるなら協力は惜しまない、親友だしな」


「マイケルさん…」


なるほど、中にいる僕より外から来たマイケルさんの方がわかることがあるのだろう、思わぬ所で考えさせられた。僕としては産まれて来る子供達のために明るい未来を残したいだけなのだが、そろそろ世界中の人に人口の減少問題を知ってもらう時が来てるんじゃないだろうか。

でもそんなこと発表したら、数少ない男性を巡って暴動が起きるのかな、う〜〜ん判断が難しい、知恵熱出そう。


「でだ、鉄郎君、いやお義父さん、親友のよしみでマイエンジェル亜金ちゃんをお嫁さんにもらえないだろうか」


ゲシッ!!


「OH!」


「わっ! こら、亜金」


バシャーーーン


「稼ぎのナイ居候ペットの分際で調子にノルナ、豚ヤロウ」


「うぷ、ちょ、助け……」


背後の亜金に蹴られたマイケルさんが大きな水しぶきを上げて海に落ちる。バシャバシャと手足をばたつかせているが泳げないのか?


「もう、しょうがないなぁ」


後を追って海に飛び込む、後ろから回り込んでマイケルさんを抱えるとグリーンノアの壁にあった手すりに掴まらせた。まぁこれで大丈夫だろう。


「はぁ、助かった、お義父さんは命の恩人だ、お礼に今度秘蔵のお宝映像を見せてあげよう、とっておきの幼女コレクションだ」


なんだ、意外と余裕あったなマイケルさん。


「お〜い、亜金、マイケルさん引き上げて〜」


「ソノママ、海に流しチャエバイイノニ」


「こらこら、そう言う事言わないの」


「ちょっと鉄君何やってるのよ、大丈夫」


上を見上げれば李姉ちゃんが両手にマグロを持ちながら覗き込んでいた、どうやら大漁のようだ。


「うん、大丈夫。それより海気持ちいいよ、少し泳いでていいかな」


「あまり遠くに行っちゃだめよ、目の届く所にいなさいよ」


「わかったー」バシャ





僕はそのまま目をつむって波間に浮いていた、波の揺れが心地いい。


「ふむ、頭カラッポにするにはいいな、これ」


目を開ければ、澄んだ青空だけが目に飛びこんできた。






グリーンノアから帰ると児島さんが飼ってる黒猫が玄関先で座ってる。クーラーボックスを抱える僕を見て


「ところで貴様、我が所望したアジは釣れたんだろうな」


とでも言ってそうな、なんかでかい態度で出迎えてくる、仕方ないのでマイケルさんが釣ったアジをやることにした。


「で、黒夢は何してるの?」


「パパ、黒夢置いてイッタ……」


アジを咥える黒猫の横で体育座りの黒夢、どうやら拗ねているらしい、これはサバあげても喜ばないだろうな。

幼女の扱いは難しい、マイケルさんに聞けば教えてくれるかな?



ここまでお読みいただきありがとうございます。とりあえず100話達成です、ご祝儀がわりに下の評価ボタンをポチッとしてもいいのよ。チラッ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ