無音の雨が降る森
以前からこんな感じの作品を書いてみたかったので書きました。情景を想像しながら読むと少しは面白く感じて頂けるかもしれません。面白く感じなくても怒らないでください。
丸い空から雨が降る
森の中
僕は仰向けに倒れていて
小さい空を見上げている
鈍色の空から幾つもの雨が
音もなく地面に打ち付ける
音もなく
冷たく
打ち付ける
僕の額にも
ああ・・・
僕の目にも
これは・・・
僕の頬にも
この体は・・・
僕の鼻にも
この感覚は・・・
僕の口にも
この風景は・・・
僕の首にも
だけど・・・
僕の胸にも
どうして・・・
僕の腹にも
ああ・・・
僕の腕にも
もしかしたら・・・
僕の脚にも
あの時に・・・
僕の指にも
僕は・・・
僕の爪にも
僕はもう・・・
それらは音もなく打ち付ける
音もなく
冷たく
打ち付ける
打ち付けている
そう
打ち付けているはずだ
時々視界がぼやけてしまう
雨が僕の目を打ったのだ
痛くて目を開けていられない
痛くて
目を開けていられない
開けていられない
開けていられないはずなのに
僕の瞼は開いたまま
僕の視界は鈍色のまま
やがて僕には黒い雨が
森には変わらず無色の雨が
音もなくただ打ち付ける
音もなく
冷たく
打ち付ける
打ち付けている
そう
そのはずだ
空はいつしか真っ黒に
前よりずいぶん広くなった
この作品は何者かに殺されてしまった「僕」の死体目線で書かれています。
「僕」は森の中に掘った穴に捨てられています。なので空が丸く、小さいのです。
死体にあるのは視覚と思考能力のみで、聴覚、嗅覚、触覚、痛覚等々はありません。故に雨は無音であり、冷たく打ち付けている”はず”なのです。
「僕の〜にも」の間に「これは・・・」等の意味不明の文が挟んでありましたが、これは「僕」が思考しながら、無意識のうちに自分はもう死んでしまったという事に気付いていくという描写です。
少なくとも作者はその”つもり”です。
目に雨が入っても瞼を閉じないのは、痛覚がないから、というのもありますが、そもそも筋肉を動かせないので瞼を閉じられないという事を表現したつもりです。
最後に降った「黒い雨」は「僕」を殺した何者かが穴を埋める為に投げ入れた土で、それによって「僕」の視界全体が真っ暗になり、文中ではそれを「空が真っ黒に」なったと表現しました。
空が広くなったというのは言わずもがな
視界が土に覆われた「僕」がその色を空の色と認識した事によります。
最後まで読んで頂き有難うございます。
自分なりに趣向を凝らし、なかなか自分好みの出来になりました。飽くまでも自分好みなので一般受けは望めませんが書いていて楽しい作品になったので満足しています。