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「始まりはいつも突然に」

 今日もいつも通りの平凡な1日を過ごし、そして明日を迎える。そう思っていた。

 しかし、僕の平凡で何気ない日常は突如終わりを告げた。

 始まりはいつだって突然だ。

 そこにはただの理不尽しかない。





 約1カ月前に中学校を卒業したというのに、それが昨日のことだったかのように感じる。

 こんな状態であるのに明日から高校生になるというのもおかしな話だなぁと僕、銘雪 陸は家の外から見える桜を眺めがらぼんやりと考えていた。

 そんな事を考えていると携帯電話からメールの着信音が鳴った。

 宛名を見ると親友の冬木(ふゆき) 晴矢(はるや)からで、[暇だから今から合わねぇ?]と来ている。

 かなり急だなぁと思いながらも[どこに行けばいい?]と返信をする。

 絶対に僕の家でない事は分かっているため、とりあえず外に出る準備をしておく。

 また着信音が鳴ったので、確認して見ると近くの公園となっている。


 近年の危険な遊具の撤去により、ブランコと滑り台とベンチしかなくなり、やけに敷地だけが広くなってしまったなんとも寂しい公園だ。

 公園自体が少し小高い丘の上にあり遊具も少ないため、あまり人が来ないので中学3年生の受験シーズン本番までは晴矢と散歩がてらによく来た公園。

 遊具で遊ぶことはせず、ベンチに座りそこから見える街の景色を眺めながら日が暮れるまで他わいない話をしていた。

 しかし、受験生になってからは晴矢と遊ぶことはあっても公園には行くことがなくなっていたのだが……今頃になって懐かしくなったから行こうと思ったのだろう。


 外に出る準備が終わったので玄関に行き、靴を履いていると再び着信音が鳴った。

 [もう着いてるから]と晴矢からの通知が携帯の画面に表示されている。

 公園は僕の家から歩きで約20分で、晴矢の家からは約30分のはずだが……自転車で行ったにしても20分以上前から着いてるということになる。

 もしかしたら最初のメールの時点で公園にいたのかもしれない。

 かなり暇だったんだなと思いつつ、これ以上待たせないために僕は家を出る。

 久々の外は天気がいいためかとても暖かく感じた。





 自転車を急いで漕いで来たものの登り坂のせいと、運動不足のせいもあり結局15分もかかってしまった。

 いつものように街の景色が見えるベンチがある方に行くと、晴矢が1人でぽつんと座っている。


「ごめん。結構遅くなった」


 そう言うと晴矢はこっちを向き、驚いた表情を見せた。


「凄い偶然だな。俺もついさっき来たばかりだ」


「は? 晴矢は30分以上前からここに来てただろ? それに偶然って何言ってんだよ。お前が僕を呼んだんだろ?」


「そっちこそ何を言ってんだ? 俺は本当についさっき来たばかりだし、陸を呼んだ覚えもない」


 どういうことだ? 全然話が噛み合わない。

 晴矢がふざけているとしか思えない。


「そうだ。晴矢から送られてきたメールが残ってるはずだ」


 早い話メールを見せつければよかったんだ。

 消してないはずだし、これを見せればもう冗談も言わないだろう。


「メール? お前になんかメールを送ってないぞ」


 僕の言葉に晴矢は訝しげな表情をしている。


「はいはい、もうしらを切るのはやめろよ。こっちには証拠が……」


 ……ない。

 嘘だろ……。

 晴矢から送られてきたメールが無くなってる?

 消してないはずだぞ?


「俺は本当に送ってないし、今日ここに来たのも散歩がてらに久々にここに来ようかなという単なる思いつきだ。少し休憩したら帰るつもりだったからお前なんて呼ばねぇよ」


「でも、確かにお前からメールが来たはずなんだ……」


「分かった分かった。幻覚見るくらい俺のこと愛してるんだな。気持ち悪りい……」


 晴矢は体を震わせながら僕を引いた目で見てくる。

 しかし、そんな晴矢にツッコミを入れる余裕もないくらいに僕は混乱していた。


「違う……」


 幻覚であるはずがない。

 確実にメールは来てたはずなんだ。

 晴矢が本当に僕へメールを送ってないとしたら、あれは一体なんだったんだ?


「……まぁ、なんにせよだ。偶然ここで会ったんだからいつものように何か他わいもない話でもしようぜ」


 僕の表情を見て晴矢も僕がふざけている訳ではないと分かったのか、晴矢は少し心配そうな表情をしながら、ベンチを数回叩いた。

 僕は何も納得ができないままとりあえず晴矢の隣に座る。


「明日から高校生だな」


「そうだな……」


「同じクラスになれたらいいな」


「うん……」


「翔とも一緒だったらいいな」


「あぁ……」


「…………なんだよ。まださっきの事を考えているのか?」


「……うん。でも、もういいや。なんだか考えるのが馬鹿らしくなってきたから」


 ここまできてしまったら信じ難いが、あれは僕の幻覚ということにするしかないだろう。

 まだ納得はしきれてはいないが、これ以上は考えないようにする。


「で、なんの話をしてたっけ?」


 晴矢は僕の言葉に呆れた表情を見せた。


「はぁ……全部適当に相槌をうっていたのか……別に大した話はしてないからいいけどよ……」


「ごめんごめん。で、何の話をしてたっけ?」


「……一人暮らしの方はうまくいけてるのか?」


「あぁ、順調順調。大体の家事は出来るようになったし、料理のレパートリーもだいぶ増えてきてるよ」


 なんだかさっき聞かれたことと違うことを聞かれた気がするが、とりあえず僕は応えていく。


「ふーん。そういえばなんで両親について行かなかったんだ?」


「あー、周りの環境が変わるの面倒だし、1人暮らしってものをしてみたかったから。あ、あとはお前と離れたくなかったからかな」


 いつもの調子で本当のことも言いつつ冗談も交えてみた。


「……」


 しかし、さっき僕が見た幻覚の話もあって冗談だと伝わっていないのか晴矢は引いた目をしながら僕と距離をとる。


「冗談だよ! 誰がお前と離れたくないがために残るかよ!」


「それはそれで傷つくな。まぁ、俺はてっきり水仙さんと一緒の高校に通いたいがために残ったと思ったんだが」


「なっ⁈」


「……マジかよ。とことん気持ち悪いな」


 水仙(すいせん) 瑞稀(みずき)

 僕が片想いをしている女性だ。

 小学校までは同じ学校だったのだが、中学校から離れ離れになった。

 しかし、水仙さんが推薦入試で僕が行こうとしていた高校に合格したことを風の噂で聞き、僕は同じ高校に行くことを決めたのだ。

 そう、これが両親に付いて行かずにこの街に残った一番の理由。

 僕はまだ水仙さんのことが好きなんだ。


「気持ち悪いとか言うなよ。別にいいだろ」


「あぁ、すまんすまん。っていうかお前まだ水仙さんの事が好きだったのか?」


「う、うん……」


 小学生の時から僕が水仙さんのことを好きなのは晴矢も知っているが、改めて言うのはすごく恥ずい。

 今、僕の顔は耳まで真っ赤であるに違いない。


「そうか。すげぇな……中学で全く関わりがなかったっていうのに小学生から今までの間ずっと片想いし続けてたとか……マジで引く」


「なんだよ! お前は最後にディスらないと喋れない病気か何かか⁈」


「いや、悪い悪い。冗談だよ冗談。本当に凄いと思う」


 晴矢は笑いながら言う。


「いきなり真面目に返すのやめろよ。恥ずかしいだろうが」


「ははっ、気持ちわりい……。ところで、お前は水仙さんと同じ高校に通ってどうなりたいんだ?」


 どうなりたい?

 そういえば深くは考えてなかった。

 今はただ、昔のように同じ学校に通いたいと思っていただけだから。

 ……いや、1つだけやりたいことがある。


「告白したい。付き合えなかったとしてもいいから自分の気持ちを伝えたい」


 ずっと後悔していた。

 小学生の間に告白しようと思っていたが、僕には勇気がなく結局は告白できずじまいだった。

 中学校で水仙さんと離れ離れになり、会えなくなってから僕は彼女のことがどれだけ好きだったかを再認識した。

 そして、小学生の頃に告白をしなかったことを更に後悔した。

 もう、僕はあの時のように後悔をしたくない。


「うん。いいんじゃねぇの」


 晴矢は真面目な表情をしながらそう言うとベンチから腰をあげた。


「もう帰るのか?」


 僕がそう聞くと晴矢は空を指差した。


「あぁ、日もだいぶ落ちてきたしな」


 確かに空は少し薄暗くなってきている。


「なら、僕も帰るとするかな」


 僕もベンチから腰をあげる。

 ちょうどその時メールの着信音がなった。


「お、誰からだ? 親御さんか?」


「いや、知らないアドレスからだ。多分迷惑メール」


 晴矢が僕の携帯電話を覗き込む。


「どうせエロいサイトでも見た時に、変なリンクでも踏んだんじゃないのか?」


「エロいサイトなんて見た事ねぇよ」


 僕はそう言いながらとりあえずメールを開いてみる。


「「はぁ?」」


 メールを開いた瞬間に2人揃って変な声が出てしまった。

 なぜなら、そのメールは水仙 瑞稀から届いたものだったからだ。

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