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1.プロローグ

「――――」

 意識が朦朧としている。

 瞼を開こうとするが、何故かやたらと重い。

 おまけに体の節々がやたらと痛む。 


 なんだこれは……?


「死――がったか。クソッ」

「お前が傷めつけ――売り物にも――」

 

 男達の声が聞こえる。

 おかしい。俺はさっきまで自分の部屋でゲームをやっていたはずだ。

 仮に寝落ちをしたのだとしたら、自動的にVRギアがそれを感知し、ログアウトをしているはずだ。 

 なのに周囲からは声が聞こえる上に、体まで痛い。

 


「ちっ、奴隷共死体を片付けて――」

「奴隷ら――共食いでも――」


――バタンッ

 

 扉が閉まる音が聞こえる。

 

――それからどれだけの時間が経過したのだろう。

 感覚ではそう長い時間は経っていない気がするが……。


 とりあえず徐々にではあるが、聴覚や嗅覚が復活したらしく周囲から泣き声のような物が聞こえるようになった。

 次いで何処からか血の匂いが漂ってきている事に気づく。


「――う、うーん……」

 体は相変わらず痛むが、何とか目を開く事は出来そうだったので開いてみる。


「え……ツバキっ……!?」

「うぅ……ごめんなさいなのです。わたし達を庇ったせいでこんな……こんな傷を……」

「良かった……生きていたっ……!」




――目を開くと俺を取り囲むように三人のケモミミ幼女が居た。

 顔立ちは皆十代前半といったところだろう。皆これまでの人生で見たことがないくらいに非常に可愛らしく、それぞれが犬、狐、猫など別な獣耳と尻尾を生やしている。

 


「え……なに……ここは天国か……?」

 俺は思わずこんな事を口走ってしまったが無理も無いだろう。何故なら俺はケモミミが好きだからだ。

 アニメや漫画でもケモミミのキャラが基本的に一番好きだし、いつもプレイしているVRMMOの『EDEN』というゲームでもケモミミ幼女な種族、『モケノー』でやっている程だ。

 

 だから体中がめちゃくちゃ痛い上に、この状況の訳がわからないとはいえども、まさにこの光景は天国と言えた。

 だって目の前には、それこそゲームの中のモケノーと瓜二つなケモミミ幼女達が居るのだから。


「ここは天国じゃないのですっ!」

「ぐすっ、ツバキはまだ死んでいないよっ!」

「だめ、意識と自分をしっかり持ちなさいっ」


――よく見ると何故かケモミミ幼女達の目には涙が浮かんでいた。

 さらに必死に俺の体を揺すっている。

 一体何が起きているんだ……?


「じゃあこれは夢か……? だとしたらこんな夢を見てる俺グッジョブだぜ……!」

 ゲームをやっていたはずなのに、こんな状況下に何故居るのかはさっぱりわからないが、とりあえず夢の可能性が高い気がする。

 とりあえず内心でこの夢が覚めない事を祈りつつ、痛む体を動かしてガッツポーズをする。

 

――あれ、なんか俺の声おかしくね?

 そこで俺は自分が発した声に違和感を覚える。

 今のは誰が聞いても成人した男の声ではなく、透き通った少女の声だったのだ。

 これも夢のせいだろうか?


「夢だったらどんなに……どんなに良かったか……」

「あ、あの、今ツバキさんは自分の事を俺って言いませんでしたか……?」

「言ってたよね……。ま、まさか殴られたりしたショックで言語と記憶が……うっ」

「うわぁぁぁん! ツバキぃ……ごめんなさいなのです。私達を庇ったせいでこんな……ごめんなさいっ……」

 声の事に少しだけ疑問を感じていると、幼女達が何故か余計に泣き出してしまう。


「な、泣き止んでくれ。俺は大丈夫だから――」

 声がおかしいのはとりあえず置いておいて、俺にとっては国宝とも言える彼女達を安心させよう。


 気づけば体の痛みも幾分か引いており、冷静な思考が出来るようになった俺はそんな事を考えた。



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