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第9話 シノレと私

「あれ?結構早かったね」

戻るとシノレは奥の机で書き物をしていた。


冒険者ギルドでの出来事を話すとくすくすと笑い出した。

「やっぱりあの店は高かったんだね」

いや笑いごとじゃないから!


「引き篭もってるから吹っ掛けられちゃうんだよ!」

シノレは肩をすくめてそうだね、と苦笑いを浮かべた。

「でもこれからはもう大丈夫だね」

ちょっと何言ってるの?

吹っ掛けられてるんだから大丈夫な訳無いでしょうに。

「今後も買い物よろしくね」

…そういう事か。


「自分で行け!」

「やだよ」

「お日様を浴びて光合成しないと体からキノコ生えちゃうぞ!」

「無茶苦茶な理屈だね。でも光合成とか知ってるんだ。すごいね」

そのくらいわかるよ。

バカにするな!

「ナァズの世界では一体どんな教育がなされているのか、すごく興味深いよ」

あ、そうか。

こっちの世界では光合成とかほとんど知られて無いのかもしれない。

そもそも義務教育とか無さそうだし。


「シノレはどうやって勉強してるの?」

「学者とかに師事するのが一般だね。僕は最初は独学だったよ。7歳の時にここに入ってからはいろんな人に師事したけどね」

小さい時から才能があったんだ。

さすがはシノレだ。

でも独学ってどんな事をしたんだろう。

「ここに入ってからはほとんど読書ばっかりだけどね」

本の虫って事か。


そもそもここは一体何なんだろう?

魔術師ギルドって言ってたけど何をする場所なのかよくわからない。

「魔術師ギルドとは、簡単に言えば魔術師を育てるギルドだよ。お金を払って授業を受けるんだ」

塾のような施設か。

それにしてはシノレが勉強してるように見えないけど?

「ちなみに僕は導師号をもっているので生徒ではなくて教師の立場にあるよ」

飛び級で生徒を卒業したんだ。


「でも教師なんてやってるようには見えないんだけど?」

「もちろんやってないよ。僕は研究員だからね」

…塾っていうよりは大学って言った方がいいのかもしれない。

そしてシノレは大学院生や助教授のような存在なんだろう。


「それにしてもナァズが冒険者ギルドに入れるなんてね。驚きだよ」

私のギルドカードを見てフムフムとうなずいている。

ギルドカードに関してひとつ気になっている事があるんだった。


「その右側の写真はいつの間に撮られたのかな?」

「写真?」


おっとまずい、写真はこの世界には存在していないのか。

「ごめん、自画像。なんでそこに写ってるのかわからないんだけど」

「ギルドカードはマジックアイテムなのは知ってるよね?」

「うん」

「裏に名前を書いたときに所有者の情報を読み取るんだ。能力とか体の表面とかね」


体の表面を読み取ってくるんだ…。

とても便利だけど…なんだか怖い。


「それにしてもナァズは能力が高いね。筋力と頑丈さと賢さがS評価だよ」

「何でそんなに高いのかがわから無いんだけど。特に賢さとか」

「それはナァズが住んでいた世界の知識がこの世界では未知なる知識だからじゃないかな?テレビとか写真とか。それに光合成も知ってるようだし」

よくテレビとか覚えてたね。

召喚された時に口が滑って一回だけ出た言葉なのに。


「ナァズはもう立派な冒険者なんだね」

登録はしたけど立派かどうかは知らないよ?

「大迷宮の攻略に行っても誰にも文句は言われないね」

「え?シノレは迷宮攻略に行ってるの?」

引き篭もりだと思ってたのに意外な事実だ。

「行く訳ないでしょ、めんどくさいし」

デスヨネー。

「でもナァズは明日からひとりで迷宮に行くんだよ?」


え?


「ちょっとなに言ってるの?」

「大丈夫。こんなに能力高いんだし、上層階層で死ぬことはまず無いよ」

「いやいやいや、なんで私が行かなきゃいけないのさ?」

「だってナァズは冒険者でしょ」

確かに登録しちゃったけど、買い物専門だよ?


「明日から頑張ってね」

こらちょっと待て!

「土産話を楽しみにしてるよ」

ふざけるな!


しかし結局シノレの言う通り、明日の迷宮行きが決定したのであった。

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